夜深 | |
唐・韓偓 |
惻惻輕寒翦翦風,
小梅飄雪杏花紅。
夜深斜搭鞦韆索,
樓閣朦朧煙雨中。
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夜深
惻惻たる輕寒 翦翦の風,
小梅 雪を飄はせて 杏花 紅なり。
夜深 斜搭 鞦韆の索,
樓閣 朦朧として 煙雨の中。
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◎ 私感註釈
※韓偓:〔かんあく;han2wo4〕晩唐〜の詩人。842年〜923年。字は致堯で、致光ともする。小名は冬郎。号して玉山樵人。京兆万年(現・陜西省西安)の人。龍紀元年の進士で、翰林学士、中書舎人となった。後に、権臣・朱全忠に忌憚されて濮州司馬に左遷され、やがて官を辞した。
※夜深:夜が深まった(時)。深夜。『寒食夜』ともする。
※惻惻軽寒翦翦風:さっさっと吹いてくる薄ら寒い風(に)。 *後世、北宋・王安石は『夜直』で「金爐香盡漏聲殘,翦翦輕風陣陣寒。春色惱人眠不得,月移花影上欄干。」とした。 ・惻惻:〔そくそく;ce4ce4●●〕悲しみいたむさま。ねんごろ。懇切。 ・軽寒:うすら寒さ。 ・翦翦:〔せんせん;jian3jian3●●〕風がさっさと吹くさま。風が薄ら寒いさま。≒剪剪。また、よくしゃべる。ここは、前者の意。
※小梅飄雪杏花紅:コウメは、雪が舞っているかのような花びらを著(つ)けて、アンズの花は紅くなっている。 ・小梅:(植物名の)コウメ。 ・飄雪:雪が舞っている(ような)。梅が花びらを著(つ)けているさまの形容。 ・杏花:〔きゃうくゎ;xing4hua1●○〕アンズの花。 ・紅:あかい。ピンク色(の)。
※夜深斜搭鞦韆索:夜も更けた斜塔のブランコのつな(は)。 ・鞦韆:〔しうせん;qiu1qian1○○〕ぶらんこ。ぶらんこ。子供の遊具ではなく、年若い女性が乗って遊ぶ華やいだ物。昼夜の対比の妙を詠っている。後世、北宋・蘇軾は、『春夜』で「春宵一刻値千金,花有C香月有陰。歌管樓臺聲細細,鞦韆院落夜沈沈。」と使う。 ・索:〔さく;suo3●〕なわ。つな。太いつな。
※楼閣朦朧煙雨中:高殿(たかどの)は、おぼろげに霧雨(きりさめ)の中に(見える)。 ・楼閣:高層のりっぱな建物。たかどの。 ・朦朧:〔もうろう;meng2long2○○〕おぼろげに見えるさま。ぼんやりと。はっきりしない。月の没しようとしておぼろげなさま。後世、南唐後主・李Uの『采桑子』に「庭前春逐紅英盡,舞態徘徊。細雨霏微,不放雙眉時暫開。坂x冷靜芳音斷,香印成灰。可奈情懷,欲睡朦朧入夢來。」と使う。 ・煙雨:霧雨(きりさめ)。南宋・陸游は『鵲橋仙』で「一竿風月,一蓑煙雨,家在釣臺西住。賣魚生怕近城門,況肯到、紅塵深處。 潮生理櫂,潮平繋纜,潮落浩歌歸去。時人錯把比嚴光,我自是、無名漁父。」と使う。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「風紅中」で、平水韻上平一東。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
●○○●●○○。(韻)
●○○●○○●,
○●○○○●○。(韻)
2011.2.17 2.18 (2.18夜-2.20)回筑波 2.21 |
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