雨 | |
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唐・杜牧 |
連雲接塞添迢遞,
灑幕侵燈送寂寥。
一夜不眠孤客耳,
主人窗外有芭蕉。
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雨
雲を連 ね塞 に接して迢遞 を添 へ,
幕に灑 ぎ 燈を侵 して寂寥 を送る。
一夜 眠れず孤客 の耳 ,
主人の窗外 芭蕉 有り。
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◎ 私感註釈
※杜牧:晩唐の詩人。803年(貞元十九年)〜852年(大中六年)。字は牧之。京兆萬年(現・陝西省西安)の人。進士になった後、中書舍人となる。杜甫を「老杜」と呼び、杜牧を「小杜」ともいう。李商隠と共に味わい深い詩風で、歴史や風雅を詠ったことで有名である。
※雨:あめ。 *杜牧作ではないともいう。
※連雲接塞添迢遞:雲は国境地帯(の嶺)に連なって、遠近感を増幅させて。 ・連:つらねる。 ・接:まじわる。近づく。 ・塞:〔さい;sai4●〕国境附近の地。険要の地。辺境の地。 ・迢遞:〔てうてい(ちょうてい);tiao2di4○●〕遠いさま。遥かなさま。また、高いさま。南朝斉・謝の『入朝曲』に「江南佳麗地,金陵帝王州。逶帶水,迢遞起朱樓。飛甍夾馳道,垂楊蔭御溝。凝笳翼高蓋,疊鼓送華。獻納雲臺表,功名良可收。」とある。
※灑幕侵燈送寂寥:(雨は)とばりに降りかかり、灯火にかかってきて(焔を揺れ動かし)、ものさびしさを送りつけてくる。 ・灑:そそぐ。 ・幕:とばり。たれまく。まく。また、将軍が政務を執る所。 ・侵燈:灯火に吹きつける。 ・送:送り込んでくる意。 ・寂寥:ものさびしいこと。ひっそりしていること。
※一夜不眠孤客耳:一晩、一人旅の者(=作者)の耳について、眠れないでいる(のは)。 ・不眠:眠れない。バショウの葉に雨が当たり、雨音を立てていること。 ・孤客:一人旅の人。作者自身のこと。盛唐・劉長卿の『送舍弟之陽居』に「陽寄家處,自別掩柴扉。故里人何在,滄波孤客稀。湖山春草遍,雲木夕陽微。南去逢迴雁,應憐相背飛。」とあり、中唐・劉禹錫の『秋風引』に「何處秋風至,蕭蕭送雁群。朝來入庭樹,孤客最先聞。」とある。 ・耳:聴覚の意。
※主人窗外有芭蕉:宿舎の主人側の(建物の)軒先にあるバショウ(の葉に当たる雨音が原因だった)。 ・主人:宿舎の主人側。 ・芭蕉:〔ばせう;ba1jiao1○○〕バショウ。バショウ科の大型の多年生草本。高さ約五メートルの偽茎の先に葉をつける。後世、北宋・歐陽脩/張先の『生査子』に「含羞整翠鬟,得意頻相顧。雁柱十三弦,一一春鶯語。 嬌雲容易飛,夢斷知何處。深院鎖黄昏,陣陣芭蕉雨。」があり、両宋・李清照の『添字采桑子』では「窗前誰種芭蕉樹,陰滿中庭。陰滿中庭。葉葉心心、舒卷有餘情。傷心枕上三更雨,點滴霖霪,點滴霖霪,愁損北人、不慣起來聽!」と、芭蕉の葉に落ちる雨音をうたう。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「萋堤啼」で、平水韻上平八齊。この作品の平仄は、次の通り。
●○●●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
○●●○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2012.6.20 6.21 |
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