和張僕射塞下曲 | |
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唐・盧綸 |
林暗草驚風,
將軍夜引弓。
平明尋白羽,
沒在石稜中。
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張僕射 に和す 塞下の曲
林 暗くして 草風 に驚き,
將軍 夜 弓を引く。
平明白羽 を尋 ぬれば,
石稜 中に没 して在 り。
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◎ 私感註釈
※盧綸:中唐の詩人。748年(天寶七年)〜800年?(貞元十六年?)。字は允言。河中蒲(現・山西省)の人。大暦十才子の一。大暦の初め、屡々進士の試験を受けるが及第しなかった。長らく不遇であったが、後に検校戸部郎中となる。
※和張僕射塞下曲:僕射(ぼくや)の官職にあった張氏の作った『塞下曲』に唱和する。『塞下曲』ともする。連作六首のうちの第二首。第一首は「鷲翎金僕姑,燕尾繍蝥弧。獨立揚新令,千營共一呼。」。 ・和:詩を韻を合わせて唱和する。(時代によって、必ずしも和韻とは限らない)。 ・張:姓。不詳。 ・僕射:〔ぼくや;pu2ye4(pu2she4)●●〕官名。尚書省の次官。尚書僕射が宰相の地位にあった。 ・塞下曲:新楽府題で、辺塞の戦場の情景を詠う歌。辺疆の地での戦役の歌。万里の長城の外での戦役の歌。塞下曲は同・李白の『塞下曲』「五月天山雪,無花祗有寒。笛中聞折柳,春色未曾看。曉戰隨金鼓,宵眠抱玉鞍。願將腰下劍,直爲斬樓蘭。」、王昌齢の『塞下曲』「飮馬渡秋水,水寒風似刀。平沙日未沒,黯黯見臨。昔日長城戰,咸言意氣高。黄塵足今古,白骨亂蓬蒿。」 や、常建の『塞下曲』「北海陰風動地來,明君祠上望龍堆。髑髏皆是長城卒,日暮沙場飛作灰。」、皎然の『塞下曲』「寒塞無因見落梅,胡人吹入笛聲來。勞勞亭上春應度,夜夜城南戰未迴。」などとよく詠われる。
※林暗草驚風:林は暗く(なっ)て、草は風に騒ぎ。
※将軍夜引弓:将軍が夜に弓を引い(て、矢を射っ)た。 ・将軍:〔しゃうぐん;jiang1jun1○○〕一軍を統率し指揮する人。一軍の長。大将。ここでは暗に李廣将軍をも謂う。 ・引弓:弓をひく。弓をひきしぼる。
※平明尋白羽:夜明けになって、白い矢羽根の矢を探してみれば。 ・平明:夜明け。=平旦。また、公平で明らか。ここは、前者の意。 ・尋:たずねる。 ・白羽:矢羽根が白い矢を謂う。ここでは、矢を指す。
※没在石稜中:石の角(かど)に突き刺さっていた。 *『漢書』(卷五十四)李廣(蘇建)傳(第二十四 二四四四頁)(中華書局版624ページ)に「(李)廣出猟,見草中石,以爲虎而射之,中石沒矢,視之,石也。他日射之,終不能入矣。廣所居郡聞有虎,常射之。及居右北平射虎,虎騰傷廣,廣亦射殺之。」とある。 ・没:〔ぼつ;mo4●〕うずまる。沈む。没する。 ・在…中:…のなか(に)。蛇足になるが、前出・『漢書』李廣傳の「(李)廣出猟,見草中石,以爲虎而射之,中石沒矢,視之,石也。」とあるその中の「中」は、「草中」では〔ちゅう;zhong1○〕名詞等。「中石」では〔ちゅう;zhong4●〕動詞「あたる」意。 ・石稜:〔せきりょう;shi2leng2●○〕いしのかど。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「風弓中」で、平水韻上平一東。この作品の平仄は、次の通り。
○●●○○,(韻)
○○●●○。(韻)
○○○●●,
●●●○○。(韻)
2013.6.22 6.23 |
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