白居易暮立　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩 Bai Juyi

暮立
	唐・白居易

黃昏獨立佛堂前，
滿地槐花滿樹蟬。
大抵四時心總苦，
就中腸斷是秋天。

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暮(くれ)に立(た)つ

黄昏(くゎうこん)　獨(ひと)り立つ　　佛堂(ぶつだう)の前(まへ)，
地(ち)に滿(み)つる　槐花(くゎいくゎ)　　樹(き)に滿つる蝉(せみ)。
大抵(たいてい)　四時(しいじ )　　心(こころ) 總(すべ)て苦(くる)しめども，
就中(なかんづく)　腸(はらわた)斷(た)つは　　是(こ)れ秋天(しうてん)。

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◎　私感註釈

※白居易：中唐の詩人。７７２年（大暦七年）～８４６年（會昌六年）。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。晩年仏教に帰依する。

※暮立：たそがれ時に仏殿の前にたたずんで。 *元和六年（８１１年）母の陳氏が亡くなった頃の作。

※黄昏独立仏堂前：たそがれ時に、仏殿の前にひとりでたたずめば。　・黄昏：たそがれ。　・独立：ひとりでたたずむ。後世、清末/中華民国・梁啓超の『黄河』に「黄河黄河出自崑崙山，遠從蒙古地，流入長城關。古來聖賢，生此河幹，獨立堤上，心思曠然。長城外，河套邊，黄沙白草無人煙。思得十萬兵，長驅西北邊，飮酒烏梁海，策馬烏拉山。誓不戰勝終不還，君作鐃吹，觀我凱旋。」とあり、現代・毛沢東の『沁園春・長沙』一九二五年に「獨立寒秋，湘江北去，橘子洲頭。看　萬山紅遍，層林盡染；漫江碧透，百舸爭流。鷹撃長空，魚翔淺底，萬類霜天競自由。悵寥廓，問　蒼茫大地，誰主沈浮？　　　携來百侶曾游。憶往昔、崢嶸歳月稠。恰　同學少年，風華正茂；書生意氣，揮斥方遒。指點江山，激揚文字，糞土當年萬戸侯。曾記否，到　中流撃水，浪遏飛舟？」とある。　・仏堂：仏像を安置した堂。仏殿。

※満地槐花満樹蝉：地面にいっぱいに（散り敷いた）エンジュの花に、木いっぱいに（鳴いている）セミ（＝後、暫くすると死んでしまう）。　・満地：地面にいっぱい。　・槐：〔くゎい；huai2○〕エンジュ。　・蝉：セミ。短命の象徴ともなる虫。

※大抵四時心総苦：だいたい、季節（の移ろいの時）は、心がいつも苦しいものだが。　・大抵：〔たいてい；da4di3●●〕ほぼ。だいたい。たいてい。　・四時：四季。春・夏・秋・冬の四つの季節の総称。　・総：すべて。みな。いつも。総じて。

※就中腸断是秋天：とりわけ、非常な悲しみ（を覚えるの）は、秋だ。　・就中：〔jiu4zhong1●○〕なかでも。とりわけ。その中で。なかんずく。清・呉景果の『鶯湖竹枝詞』に「澤國烟波似畫圖，汀洲處處長菰蒲。就中最是難忘處，細雨斜風鶯脰湖。」とある。　・腸断：（腸が断たれるような）非常な悲しみ。盛唐・李白の『春思』に「燕草如碧絲，秦桑低綠枝。當君懷歸日，是妾斷腸時。春風不相識，何事入羅幃。」とあり、盛唐・王昌齡の『春怨』に「音書杜絶白狼西，桃李無顏黄鳥啼。寒雁春深歸去盡，出門腸斷草萋萋。」とある。　・是：…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B：AはBである〕。　・秋天：秋の季節。秋の空。ここは、前者の意。蛇足になるが、現代語（の口頭語）では、「秋（あき）」は“秋天”〔qiu1tian1（/0）〕と言う。

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◎　構成について

韻式は、「AAA」。韻脚は「前蝉天」で、平水韻下平一先。この作品の平仄は、次の通り。

○○●●●○○，（韻）
●●○○●●○。（韻）
●●●○○●●，
●○○●●○○。（韻）