即事 | |
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唐・杜牧 |
小院無人雨長苔,
滿庭修竹間疏槐。
春愁兀兀成幽夢,
又被流鶯喚醒來。
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即事
小院人 無く 雨苔 を長じ,
滿庭の修竹疏槐 に間 る。
春愁兀兀 として幽夢 を成 し,
又た流鶯 に喚 び醒 まし來 らる。
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◎ 私感註釈
※杜牧:晩唐の詩人。八○三年(貞元十九年)〜八五二年(大中六年)。字は牧之。京兆萬年(現・陝西省西安)の人。進士になった後、中書舍人となる。杜甫を「老杜」と呼び、杜牧を「小杜」ともいう。李商隠と共に味わい深い詩風で、歴史や風雅を詠ったことで有名である。
※即事:その場の事柄や様子、風景をよんだ詩歌。
※小院無人雨長苔:小さな奥庭には人気(ひとけ)がないため、雨で苔(こけ)が成長し。 ・小院:小さな奥庭。 ・長:〔ちゃう;zhang3●〕成長する。育つ。動詞。呉景果の『鶯湖竹枝詞』に「澤國烟波似畫圖,汀洲處處長菰蒲。就中最是難忘處,細雨斜風鶯脰湖。」とある。
※満庭修竹間疏槐:庭中(じゅう)で、長く伸びた竹が疏(まば)らなエンジュにまじわっている。 ・満庭:庭中(にわじゅう)。 ・修竹:〔しうちく;xiu1zhu2○●〕長い竹。長く伸びた竹。=脩竹。 ・間:〔かん;jian4●〕まじわる。かわるがわる。間を置く。隔てる。動詞。 ・疏:まばらな。 ・槐:〔くゎい;huai2○〕エンジュ。
※春愁兀兀成幽夢:春の愁いが固まって、ぼんやりとした夢になって。 ・春愁:春になって、気持ちがふさぐこと。春の愁い。晩唐〜・韋莊の『C平樂』に「春愁南陌。故國音書隔。細雨霏霏梨花白。燕拂畫簾金額。 盡日相望王孫,塵滿衣上涙痕。誰向橋邊吹笛,駐馬西望消魂。」とある。 ・兀兀:〔ごつごつ;wu4wu4●●〕動かないさま。また、一心不乱に努力するさま。こつこつと。 ・幽夢:ぼんやりしたゆめ。はっきりしないゆめ。
※又被流鴬喚醒来:(それが)またしても木から木へと飛び移って鳴くウグイスのために、呼び覚まされてしまった。 ・又:またしても。また。 ・被:(…のために)…れる/られる。受身表現。 ・流鴬:〔りうあう;liu2ying1○○〕木から木へと飛び移って鳴くウグイス。また、鳴き声が流麗である。盛唐・李白の『春日醉起言志』に「處世若大夢,胡爲勞其生。所以終日醉,頽然臥前楹。覺來盼庭前,一鳥花間鳴。借問此何時,春風語流鶯。感之欲歎息,對酒還自傾。浩歌待明月,曲盡已忘情。」とあり、北宋・寇準の『春日登樓懷歸』に「高樓聊引望,杳杳一川平。野水無人渡,孤舟盡日。荒村生斷靄,深樹語流鶯。舊業遙C渭,沈思忽自驚。」とあり、北宋・蘇舜欽の『夏意』に「別院深深夏簟C,石榴開遍透簾明。樹陰滿地日當午, 夢覺流鶯時一聲。」とある。「流」:〔りう;liu2○〕あちこちと移る。劉言史『尋花』「遊春未足春將度,訪紫尋紅少在家。借問流鶯與飛蝶,更知何處有幽花。」で、「飛蝶」とともに使い、「飛び移る…」の意で使われる。北宋・寇準の『夏日』に「離心杳杳思遲遲,深院無人柳自埀。日暮長廊聞燕語(語:名詞),輕寒微雨麥秋時。」とある。 ・喚醒:呼び覚ます。 ・来:…てくる。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「苔槐來」で、平水韻上平十灰。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
●○○●●○○。(韻)
○○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2016.5. 9 5.10完 7.11補 |
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