辛夷塢 | |
盛唐・王維 |
木末芙蓉花,
山中發紅萼。
澗戸寂無人,
紛紛開且落。
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辛夷 塢
木末 の芙蓉 花 ,
山中 紅萼 を發す。
澗戸 寂 として 人 無く,
紛紛 として開 き且 つ落 つ。
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◎ 私感註釈
※王維:盛唐の詩人。701年(長安元年)?〜761年(上元二年)。字は摩詰。太原祁県(現・山西省祁県東南)の人。進士となり、右拾遺…尚書右丞等を歴任。晩年は仏教に傾倒した。
※辛夷塢:コブシの土手。 ・辛夷:〔しんい;xin1yi2○○〕コブシ。モクレン。春に木の枝先に直径6〜10センチメートルの純白の花を咲かせる。 ・塢:〔を;wu4●〕堤。土手。とりで。村の中の小さな牆壁。周りが高く中がくぼんだ所。=隖。
※木末芙蓉花:(木の上の方の)梢(こずえ)のハスの花は。 (コブシの樹の梢(こずえ)に、(池の水面で見られる)ハスの花が咲いている。コブシの花とハスの花の似通ったさまと咲く位置の相違に対しての驚きを詠う)。 ・木末:こずえ。 ・芙蓉花:ハスの花。水生植物。
※山中発紅萼:山の中で、赤い花を著けた。 ・発:咲く。 ・萼:〔がく;e4●〕がく。うてな。はなぶさ。草木の花。
※澗戸寂無人:谷川近くの家は、しんとして人がいないようで。 ・澗戸:谷川近くの家。 ・澗:〔かん;jian4●〕谷川。 ・戸:家。 ・寂無-:静かで、…が無い、意。しんとして、…が無い、意。
※紛紛開且落:(そこで)しきりに咲いては散っている。 ・紛紛:〔ふんぷん;fen1fen1○○〕乱れ散るさま。多く盛んなさま。入り混じって乱れるさま。しきりに。どしどしと。(花や雪などが)散り乱れるさま。盛唐・高適の『別董大』に「十里黄雲白日曛,北風吹雁雪紛紛。莫愁前路無知己,天下誰人不識君。」とあり、盛唐・杜甫の『貧交行』に「翻手作雲覆手雨,紛紛輕薄何須數。君不見管鮑貧時交,此道今人棄如土。」とあり、中唐・白居易の『送春』に「三月三十日,春歸日復暮。惆悵問春風,明朝應不住。送春曲江上,拳拳東西顧。但見撲水花,紛紛不知數。人生似行客,兩足無停歩。日日進前程,前程幾多路。兵刃與水火,盡可違之去。唯有老到來,人間無避處。感時良爲已,獨倚池南樹。今日送春心,心如別親故。」や、晩唐・杜牧の『C明』に「C明時節雨紛紛,路上行人欲斷魂。借問酒家何處有,牧童遙指杏花村。」とある。 ・且:〔しゃ;qie3●〕…したり…したり。かつ。「A且B」(AしたりBしたり)。
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◎ 構成について
韻式は、「aa」。韻脚は「萼落」で、平水韻入声十藥(萼)・入聲三覺(樂)。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○○,
○○●○●。(韻)
●●●○○,
○○○●●。(韻)
2019.10.23 10.24 |
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