題長安壁主人 |
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中唐・張謂 |
世人結交須黄金,
黄金不多交不深。
縱令然諾暫相許,
終是悠悠行路心。
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長安壁主人に題す
世人 交 はりを結ぶに黄金 を須 う,
黄金 多からざれば交 深からず。
縱令 ひ然諾 暫 く相 ひ許 すとも,
終 に是 れ悠悠 行路 の心。
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◎ 私感註釈
※張謂:中唐の詩人。721年(開元九年)?〜780年(建中元年?)。字は正言。河内(現・河南省沁陽県)の人。初めは嵩山にこもって勉学に努めた。天宝二年(743年)の進士。河内(河南省沁陽市)の出身。字は正言。節度使の幕下に加わって西域に従軍した。大暦初年(770年頃)には潭州(現・湖南省長沙市)刺史となり、やがて、礼部侍郎に至って、科挙の試験を司った。酒を嗜み詩に巧みであった。朱の叛乱に関聯して斬罪にされた。
※題長安壁主人:長安の街の拝金主義のがりがり亡者を詩題にして詩を作る。 ・題-:(以下のことを)詩題にして詩を作る。 ・長安壁主人:長安の街の拝金主義者。
※世人結交須黄金:世間の人は、交(まじ)わりを結ぶには、金銭を用いる。 ・世人:世の中の人。世間の人。 ・結交:まじわりをむすぶ。 ・須:もちいる。また、すべからく。ここは語法上、前者の意での単語使用。 ・黄金:こがね。きん。金銭。
※黄金不多交不深:金銭が多くなければ、交(まじ)わりは、深くない。
※縦令然諾暫相許:(そうでない場合は、)たとえ承諾(しょうだく)して、暫(しばら)く(交流を)続けていたとしても。 ・縦令:仮に…としても。といえども。たとい(たとひ)。たとえ(たとへ)。 ・然諾:請け合う。承諾する。=然信。 ・然:しかり。そのとおり。承認を示す語。 ・暫:しばらく。 ・相許:…をゆるす。あいゆるす。
※終是悠悠行路心:結局は、遠く遥かなあかの他人の心である。 ・終是:結局。ついに。とうとう。 ・悠悠:〔いういう;you1you1○○〕遠くはるかなさま。限りないさま。長く久しいさま。うれえるさま。また、行くさま。ひまのあるさま。ここは、前者の意。『詩經・王風』の『黍離』に「彼黍離離,彼稷之苗。行邁靡靡,中心搖搖。知我者,謂我心憂,不知我者,謂我何求。悠悠蒼天,此何人哉。」とあり、『詩經』・周南』の『關雎』に「關關雎鳩,在河之洲。窈窕淑女,君子好逑。 參差荇菜,左右流之。窈窕淑女,寤寐求之。求之不得,寤寐思服。悠哉悠哉,輾轉反側。 參差荇菜,左右采之。窈窕淑女,琴瑟友之。參差荇菜,左右芼之。窈窕淑女,鐘鼓樂之。」とあり、『古詩十九首之十一』に「廻車駕言邁,悠悠渉長道。四顧何茫茫,東風搖百草。所遇無故物,焉得不速老。盛衰各有時,立身苦不早。人生非金石,豈能長壽考。奄忽隨物化,榮名以爲寶。」とあり、盛唐・高適の『宋中』に「梁王昔全盛,賓客復多才。悠悠一千年,陳迹惟高臺。寂寞向秋草,悲風千里來。」とあり、崔(さいかう:Cui1Hao4)の七律『黄鶴樓』に「昔人已乘白雲去,此地空餘黄鶴樓。黄鶴一去不復返,白雲千載空悠悠。晴川歴歴漢陽樹,芳草萋萋鸚鵡州。日暮ク關何處是,煙波江上使人愁。」とある。 ・行路心:あかの他人のような心。無関心な心。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「金深心」で、平水韻下平十二侵。この作品の平仄は、次の通り。
●○●○○○○,(韻)
○○●○○●○。(韻)
●●○●●○●,
○●○○○●○。(韻)
2020.11.16 11.17 11.18 11.19 |
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