成り立ち

スープカレーは、1970年代前半に【薬膳カリィ本舗アジャンタ】で供されていた、スープ状の薬膳カリィが原型と言われています。その後、1990年代に「スープカレー」という呼称を考案した、下村泰山氏の【マジックスパイス】が開店。また、現在でもカリスマ的な人気を誇る【VOYAGE】や【Yellow】が登場した頃から、急激に店舗数が増加していきました。2000年代前半には、遂に北海道外へ進出する店が出始め、有名店となった【マジックスパイス】がその旗頭として、東京の下北沢へ出店。今でも札幌本店の他に、主要都市(東京、大阪、名古屋)に店舗を展開しています。

一時期「スープカレーブーム」とも言える現象が起こり、スタイルを模倣しただけの粗悪店が増えましたが(ルーカレーをただ薄めた様なものを提供する店など)ブームが去って粗悪店が消えゆく中、着実に北海道の味として定着していきました。今や専門店の数は、札幌市だけでも200店舗を超えるとも言われています。

食文化としてのスープカレー

スープカレーには、地元の食材が使われる傾向がありますが、その土地の食材を使って、新たな味が創り出されることは、食文化と言う観点では非常に重要なこと。郷土料理の魅力の一つです。輸送技術の進歩で、世界が狭くなった現代においても(だからこそ)食文化における地理的要因は軽視できません。

伝統的な郷土料理と地理的要因の関係として、香川の讃岐うどんを例に挙げると、雨の少ない讃岐平野が、元々乾燥地帯の作物である小麦の栽培に適していたこと。四国山地から流れ出す土器川や綾川などの清流があり、それらの伏流により良質な地下水が得られたこと。伊吹島を中心に、瀬戸内海からうどんの出汁に欠かせないイリコ(煮干し)が獲れたこと。古くから全国有数の塩、醤油の産地であったこと。等々、これらの食材が容易に入手できる環境が、讃岐うどんの誕生する母体となっています。

スープカレーは肉や野菜がたっぷり使われ、身体の温まる料理。まさに「食材王国」である「北国」北海道に打って付けの料理と言えるでしょう。

地産地消

地元の食材が使われることには、大きなメリットがあります。先ず、一定の地域内で需要と供給の関係が確立されることにより、流通の安定化が図れること。次に、産地と消費地が近いことにより、輸送にかかる時間効率・エネルギー効率が良いこと。更に、これらからコストの圧縮が見込め、低価格での提供による地域への定着、というサイクルを生む可能性があるためです。今、全国各地で「地産地消」の取り組みが成されていますが、経済の活性化や地域振興の面からも、意義のある活動ではないでしょうか。

コラム『飲んだ後にスープカレー?』

ショーリン画像

【SHO-RIN】のスープカレー。深夜にもかかわらず行列ができることもある人気店。

札幌では、お酒を飲んだ後の締めとして、ラーメンではなくスープカレーを食べる文化が浸透しつつあります。元々バー形態で営業している店も多く、札幌の繁華街「すすきの」周辺では【SHO-RIN】や【龍祈】など、深夜でもクオリティの高いスープカレーを提供するお店が増えてきました。スープに使用されるスパイスの多くは漢方薬としても知られており、特にターメリック(ウコン)には、整腸、肝機能の増進の効果があると言われています。お酒を飲んだ後には、スープカレーは打って付けの食べ物かも知れませんね。とは言っても、食べ過ぎ・飲み過ぎには気を付けましょう。