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No.78 「歴史的楽器の保存学」から学んだこと
No.79 8th ACOUSTIC FANFAIR
No.80 8億円のストラディバリウスと5万円の入門用ヴァイオリン
No.81 ’83sソモギDメイプル
No.82 ブロムバーグのオリジナルD45を弾いたこと
No.83 TOKYOハンドクラフトギターフェス2005
No.84 HIKAWA ACOUSTICGUITAR MiniConcert vol.4
No.85 鉄弦は伸びない?
No.86 iONクリスマスコンサート
No.87 クラシックのブリッジがハカランダなのは・・・。
No.88 鉄弦は伸びない?2
No.89 予定外のソモギ・モディファイドD
No.90 「人間にとって気持ちのいい環境がギターにとってもいい環境」ってほんと?
No.91 鉄弦は伸びない?3
No.92 新星堂大宮支店の閉店
No.93 ギターソロと手拍子
No.94 乾燥みかんから考えたこと
No.95 ソモギギターについて考えたこと
No.96 二十数年ぶりの作詞〜「教室は地雷原」
No.97 ギターは育つもの?(「D28徹底研究」への投稿から)
No.98 '97sソモギSJとMK99


No.78 「歴史的楽器の保存学」から学んだこと
 
「歴史的楽器の保存学」という本に出会って、楽器の特性について、とても多くのことを知ることができました。その中から抜粋して、私が興味を惹かれた内容について記したいと思います。
@木材は、セルロース、ポリオース、リグニンからなるが、セルロースとポリオースは吸湿性を持つ。セルロースの組成と細胞壁の構造は、大量の水分を水蒸気の形で吸着しやすいようにできている。細胞内の水分吸着箇所が飽和状態になると細胞内の水分は液体の形で存在するようになる。つまり、湿気の多い場所に木材が置かれると吸湿してしまう。
Aセルロースは、長軸方向に伸び、部分的に結晶構造を備えた繊維束を形成する。これは樹木の幹の長軸方向を頑強にし、細胞壁表面に吸着された水蒸気の量に応じて寸法変化に違いが生まれる。長軸方向に1の変化が起こると、放射方向は10、接線方向は20の変化が起こる。つまり、製作後のギターに水分の変化が起こると、木目の直交する方向に、より大きく変化が生じ、割れが起こる可能性が高くなる。
B木材に含まれる水分は、温度によっても微妙に変化するが、人間の住める範囲の温度変化ではそれほどの違いはなく、主に外気の湿度が水分含有量に影響する。
C最近の研究では、強制的に振動を与え続けると木材の硬さが増し、振動減衰率が低下することが明らかになったが、データにはばらつきも多く、結果の解釈は難しい。
D「弾き込みのプロセス」と言われる、できあがったばかりの木製楽器とそれが演奏状態に置かれた場合との間に生じる変化は説明のつけようがない。メカニズムは解明されていないが、オルガンパイプの空気中の振動によりオルガンがよい音に変化していくプロセスにヒントがあるかもしれない。
E演奏していないと楽器は「声を失う」ことについては、単なる神話に過ぎないと考える。
まだまだ、私にとって面白い内容はつきませんが、このあたりで一区切り・・。あまりに「おたく的な話」でごめんなさい。


No.79 8th ACOUSTIC FANFAIR

家庭の事情で遠出がなかなかできずにいましたが、うちのかみさんから、ようやっとOKをもらって、アコースティックギターファンフェア、行ってきました。 大宮から新幹線を乗り継いで名古屋まで直通で行くという贅沢なことをやってのけました。朝の6時に家を出て、9時半頃には会場にいました。
会場に着くと、まだホールの中では、いろいろと準備をしていて、途中、夜の宴会の案内の放送など入っていたりもしました。でも、少し早めにチケットを売ってくれて、その時にもらったアンケートに答えたら、おみやげをもらえました。「どれでもいいですよ」とのことで、メキシコのココナットカリンバという楽器(?)をもらいました。
中に入ると、あちこちに製作家の方達がいらっしゃって、「どこから行こうか」と、とまどいました。とりあえず、知り合いの大屋建さんのところに行ったら、既にお客さんがいたので、奥のほうのバードランドのブースで、店長のO氏と杉田さんにお会いして、作って頂いたMKレプリカについてお礼も含めていろいろ話しました。イサトさんに売約済みのギターも 弾かせてもらいました。最近の杉田さんは、以前通りの繊細さに音の張りが加わって さらにいい感じになっています。私のレプリカなど、エクストラを張って ほとんどライトのような張りがでています。音の輪郭がとてもはっきりしています。
大屋建さんのブースでは、数年前からオーダー中の12弦ギターのベースになるジャンボタイプギターの 試奏をさせてもらいました。前に弾いたときより、ご自分のギターの音が確立されてきたのを 感じました。張りがあり綺麗な音色のほどよいサスティーンの音で、あれで12弦を作れば ハーモニーはとびきりのものになるように感じました。
シーガルギターは、説明の必要が無いほど完成度が高いと思います。特に肘をかける部分の仕上げは見事でした。音も マーチン系からフィンガー用に一皮むけたように感じました。それでも やはり、マーチン的に、やや低音の響きに重きを持たれているような感じはします。 志茂さんのギターは明るく元気になるようなギターですね。 ヤイリの350万円のアーティスティックギターも楽器フェアでは無理だったのですが 今回は試奏ができました。象牙の指板は、気持ち良かったです。ただ、音色は普通のKヤイリのほうが私にとって好みだったですが・・。
クレーンの鶴田さんにも初めてお会いして、「19世紀ギター」も弾かせて頂きました。乾いた音で味があります。装飾も、一つ一つが貼り合わされており、鶴田さんのこだわりを感じます。羊腸ガットの音は、なかなか他で味わえませんね。一人一枚限定のセーム皮を頂きました。
トウルズギターさんでは、こうもりさんがスタッフでいらっしゃって、 前を通るたびに「もしや」と思いつつ、「スタッフの方だから他人の空似?」と 目の前でアルハンブラを弾き始めたら、声をかけて頂きました。 トウルズギターもとても綺麗な響きのギターですね。 マンゾーさんにもお会いしました。ちょっと期待していたものの、予想通り(?)5thの前田さんにお会いできなかったのは 残念でした。
他にもユニークなクレオバンブーさんの竹ギターや志賀さんのホールをずらしたモデルとか、いろいろ弾かせて 頂いているうちにあっと言う間に時間が過ぎました。クレオさんは、独特の理論で本当に面白い音作りをしていますね。 白井さんのギターは、たまたま今回、ガットだけだったのですが、バックブレースなど、構造が面白かったです。 鉄弦製作が間に合わなくて、代わりにベンチを作ったとおっしゃっていました。(笑)
プレーヤー誌のT氏も取材にいらしていて、 「ずっと弾きつづけていて、時間を忘れてるんじゃない?」と、早帰りをする時間を心配して くれたりしました。
帰りも名古屋から新幹線のぞみに飛び乗り、大慌てで帰りつきました。遅お昼を車内弁当で済ませてしまいました。
ただ、今回、内田ギターのブースがなかったのは、ちょっと寂しかったです。それにしても、日本のギター製作家の方たちの中には、本当に面白い発想でギターを作られる方もいらっしゃるのだな、と思いました。
とても有意義なファンフェアでした。


No.80 8億円のストラディバリウスと5万円の入門用ヴァイオリン
 ’05年、正月番組で、8億円のストラディバリと、5万円の入門用ヴァイオリンの目隠しテストをしていました。古い弦楽器の音を聴きなれている私と、吹奏楽部でトランペットを吹いている下の娘は、すぐに乾いた倍音の強いほうがストラディバリとわかりましたが、かみさんと上の娘はよくわからなかったようです。番組でも、歌手や元ドラマーのコメディアン等、多くの人が間違えていました。面白かったのは、人数的に入門用のヴァイオリンのほうを「ストラディバリ」と答えた人のほうが多かったことです。本来、楽器というものは、万人に訴えかけるものがあってこそ銘器と言えるように思うのですが、現実はそうでもなかったということです。確かに、5万円の入門用ヴァイオリンは、新しい木を使っているので艶やかで瑞々しい音がしていました。
二つの事を考えました。一つは腕のいいプロが弾いてくれれば、壊れた楽器でなければ、それなりに綺麗に聞こえる事。もう一つは、やはり音の好みはそれぞれで、その道のプロが「いい」と思う音を、必ずしも一般の人達が同じように「いい」と思うとは限らないこと。
かみさんが言うことには、「あれが8億円のストラディバリなら、私はあの音はいらないな。」
ただ、きっと演奏した方は、5万円の入門用ヴァイオリンは、弾きにくかったと思いますが・・・。


No.81 ’83sソモギDメイプル
 多分、もう6年前から、「いつか気に入ったソモギが欲しい」と思っていたような気がします。アーヴィン・ソモジ(ソモギ)氏のギターは、確かに「フィンガーピッカーの夢」というように、惹き付けられるものを持っていると思います。
 MK53をリペアに行った時にリングさんに掛けてあったソモギやブルージーさんに初めて入ったソモギ(以後何本か弾かせてもらいました)、新○堂で弾いた「ヘッドのとんがりを切り取ったような」ソモギ、ギターショーで弾いた物やレトロさんのメイプルもの等、かれこれ十本以上は弾いていると思います。
 ですが、どれをとっても一本として同じ物がないのと、「いい音」ですが、倍音が不自然に感じられたり、やたら暗い音に感じられたりと、私の弾くクラシックに合うソモギには、なかなか巡り会えませんでした。
 特に最近は、とても価格が上がってしまって、それなのに売れるのが早くて、もう手にすることもないかもしれないと思っていました。それが、たまたま「売れ残っていた」メイプルソモギを試奏したら「はまってしまった」という感じです。
 とにかく音が大きいのと、ダイナミックレンジが大きく表現力がある、メイプルらしくカラッと明るい倍音で、クラシックギターやMK99の音を連想する。こんなソモギは初めてでした。
 購入したブルージーさんには、一緒に最新作のラティスブレイシングを使ったショーもののハカランダ・カッタウェイMDソモギがたまたま入っていました。これもかなり綺麗な音色で、同時に2本、「いいな」と思えるものに出会い、実は30分ほど悩みつづけました。結局、自分にカッタウェイはいらないと思ったことと、特にハカランダにもこだわりがなかったこと、何より、より自分がいい音だと感じた物を選んだ次第です。ただ、問題は・・・どう考えてもリセールはきかないだろうなぁ・・。私がいなくなったら、うちにあるギターの多くは始末に困る物ばかり・・・。


No.82 ブロムバーグのオリジナルD45を弾いたこと
 北軽井沢のJさんが、ウッドマンさんにオリジナルD45を委託しました。以前、ひょんなことからお会いした時に、「自分のギターの最後の始末のつけ方」について、互いに難しさを感じているという話をした憶えがあります。
 ウッドマンさんは、基本的にどんな高価なギターでも気軽に試奏させてくれますが、このD45だけは、「事前に連絡を」という但し書きがありました。Jさんとの個人的な信頼関係で置いているギターであることを考えると、ある意味で当然とも思います。
 ウッドマンさんの新しい3階のコーナーに通されると、ガラスケースの中に綺麗に並べられていました。慎重に取り出してもらい、こちらも少しどきどきしながら、気をつけて抱えました。トップやバックの割れや変形はありますが、風格があり、その音は素晴らしいものでした。やはり「床の間ギター」と違い、プロに弾かれてきたギターの持つ鳴りのよさは言葉で表現するのが難しいです。基本の音色は、私の持つ’69D45よりも最近のスキャロップD45のほうが近いと思います。見るからにトップの板が軽く硬そうで、「煌びやかなD45サウンド」が「乾いた爆音」のように響くと言ったら印象が近いかもしれません。
 正直な所、家一軒分の額を支払うことになるようですが、後先考えずにホールドも考えました。(大馬鹿です。)でも、その後で、「じゃあ、自分がいなくなった後は、誰がどう始末をつけるの?」或いは「割れや変形も大きいけれど、いつまで使えるの?」という大きな問題に答えが見つからず、結局宙ぶらりんの意識のまま、ウッドマンさんを後にしました。それだけ魔力のあるギターではありました。


No.83 TOKYOハンドクラフトギターフェス2005
 ’05年2月19日の朝から、府中のグリーンプラザでTOKYOハンドクラフトギターフェスに行ってきました。
 思ったより狭い会場で、一つのヴースに2〜3人の製作家のギターが並べられていました。
 まずは、一番奥の小部屋の塩崎さんとウォーターロード、サカタギターズ、田井さんのギターを弾かせてもらいました。
 塩崎さんのギターは、すっかりマーチンを脱皮したバランスのいいフィンガー系の音の広がりの綺麗なギターでした。ラティスブレイシングを採用されているそうですね。
 噂のウォーターロードは、以前から一度は弾いてみたいギターの一つでした。やはりバランスがよく、音が重厚で粒立ちよくしっかりと鳴ってくれるギターでした。
 サカタギターズは、ご本人によると「弾き語りの為に作った」そうですが、艶やかな響きのギターで、今回の出品ギターの中でも個人的に気に入ったギターの一つでした。
 3人のギターがハカランダなのに対して、田井さんのギターは、コアのサイドバックで、異色でした。とても乾いた音で、こぶりなボディは自宅で気軽に弾くのにいいな、と思いました。
 Sumiギターは音の伸びがよく、アーモンドさんやホボズさんで試奏したもの同様、鷲見さんらしいギターでした。ただ、ウォルナットボディとのことで、音色はローズ系とは少し異なっていました。
 沖田さんのギターもよかったですし、トダさんのオールマホも味がありました。白井さんのギターも今回は鉄弦を作ってこられたのですが、音の素直さに好感が持てました。
 今回、個人的にとても気に入ったのが、東京のYosidaギターさんでした。7ピースバックで異材を組み合わせてあり(材は忘れました。ごめんなさい。)、音色もコアやメイプルを思わせるような明るい音でありながら音の伸びもよく、よい意味での個性を感じました。
 日本でギターを製作される方は、人数的にはとても多くなりましたね。でも独り善がりでないよい意味での個性を持ち、作りもしっかりとしたギターを製作される製作家の方は、まだまだ多くはないのではないかと思います。東京で製作家のギターフェスが開かれたことも、とてもうれしいことだと思いました。また、二年後に開催されるとのことで今から楽しみにしています。


No.84 HIKAWA ACOUSTICGUITAR MiniConcert vol.4
 アコースティックの音を楽しもうというヒカワミニコンサートも、4回目を迎えました。私達の「一連托生」、アーモンドさん、ナベさん&ボンゴマンさん、さかたさんに加え、今回は、さだまさしデュオの「ツインズ」のお二人も参加されて、最も軌道に乗ったコンサートとなりました。例によって’70sフォークに、ブルース、インストもの、クラシック等々とバラエティに富んだコンサートになりました。これまでは、学区内に住む教え子達が多く来ていたのですが、今年私が転勤したことから、卒業生数名に留まり、どちらかというとギター好きの人達の割合が増えたことは、ある意味で本来の主旨にかなう演奏会となったように思います。
 私自身は、例によって「プレリュード」を始めとしたクラシックと「となりのトトロ」や「放課後の音楽室」などのインストものを演奏しました。自己反省として、いつも通り緊張はしたものの、演奏そのものは、なんとかぎりぎり聴かせられるものになってきたかな、と思えるようになりました。(それではこれまでは・・と聞かれるとつらい所ですが。)
 ボンゴあり、デュオあり、他の参加された方々の演奏についてはいつも通り素晴らしかったです。
 私が今回使用したギターは、クラインギターとソモギDメイプルでした。ソモギはドロップDで、「プレリュード」にしか使いませんでしたから、実質、クラインでのコンサート参加と言えます。プロも含めて、世界中で何人がクラインギターをコンサートで使っているか、などという思いが当日、ちょっとよぎりました。(笑)
 今回、特に難しかったのはPAです。私自身は「なるべく生音で、多少、音量は控えめでいい」と思っていたのですが、参加される方が多くなると、それぞれの方の好みのバランスもあり、エレアコの使用も含めて、考えさせられる面もありました。私自身は、マイク取りだと、そのギターの大まかな特徴を感じることができるのが、ラインになると、とたんにわからなくなることもあり、マイク取りに対するこだわりは強いのだと思います。このコンサートは「本物のギターの生音を聴かせたい」ということから出発したものの、本来、それぞれの方の好みのPAでできればいいと思ってもいます。次回に向けて、また、考えて行きたいです。


No.85 鉄弦は伸びない?
 昔、オヴェーションの弦をずっと換えずにいたら、6弦ハイフレットで奇妙なシャープをしました。その理由がなかなか納得できずにいたのですが、あるページで「鉄弦も使い続けると『伸びきって』しまうために弾性が失われて、結果として有効弦長(実質的に弦が振動できる長さ)が短くなり、フレット音痴になる・・」といった説明をしてくださった方がいて、とても納得していました。それが、昨年のプレイヤー誌のT氏とのギター談義の中で、「鉄でできた弦は、伸びないのではないか?」という疑問が出されて、私の意識のどこかに引っかかっていました。それで、今年になって、杉田さんのギターの弦を換えたときに、ちょっとしたいたずらをしました。ナット部分に弦をどのくらい巻き取ったかわかるように、マジックでマーキングしたのです。
 弦を換えて1日目はしっかり調弦すると0.5mmくらい巻き取られました。2日目もやはり0.5mmくらいでした。この調子なら、随分伸びるだろうな、と思っていたら3日目以降、多少の調弦はしても「巻き取る必要」は一切なくなってしまいました。その後いくら時間が経ってもトータル1mmしかマーキングは移動しませんでした。これは何を意味するか・・。「動いた1mmは、トップなりブリッジプレートなりが弦の張力で引っ張られた為に動いただけだったのではないか。トップ面と弦の張力とのバランスがとれてしまえば、後は巻き取る必要がないのではないか」と、私の中で結論づけられてしまいました。
 どうも、鉄弦の長さが伸びるというのは、錯覚だった様に思えます。考えてみれば、もし鉄弦が伸びたり縮んだりするのであればエリクサーのような「弦全体を覆うタイプのコーティング」は、ナイロン弦の巻き弦のように、すぐにボロボロになってあたりまえですし、以前、双眼実体顕微鏡で観察した緑青だらけの古い巻き弦は、綺麗に芯に巻きついてはいなかったはずと気づきました。
 でも、何らかの理由で弦が古くなると「硬性」には変化が起こるのだと今も思っています。銅の合金が酸化して動きがわるくなることや、プレーン弦が強い力で引かれ続けることで本来の弾性が失われて行く可能性はあるような気がしています。実際はどうなのでしょうね。何かしら、さらに調べる方法がないかと思案するこの頃です。(笑)⇒No.88へ続く


No.86 iONクリスマスコンサート
古い知人のお嬢さんが音大を出て、友達とCDデビューをするということで、そのCD発売記念コンサートに行きました。
喫茶店を借りた会場はしゃれた雰囲気で、感じが良かったです。大きなマリンバが既に置かれていて、また、周りにはCDのジャケットを担当したというイラストレーターさんの作品が綺麗に飾られていました。
「iON」のお嬢さん達が、慣れないながらも一生懸命トークをしながら、サックスとマリンバの演奏が始まりました。クリスマスソングやCDに収めてある曲など、前半5曲、途中30分のティータイムを挟んで、後半5曲とアンコール、計11曲を聴かせてもらいました。
サックスもマリンバも、比較的、音量の大きな楽器で、小さな喫茶店で音が大きすぎないかなとも思っていましたが、さすがプロ。会場に合わせた音量でとても心地よかったです。サックスの子は、曲に応じてソプラノサックスとテナーサックスを使い分けて、毎回、曲の始まる前に後ろを向いて小さく音出しをしていたのが印象的でした。マリンバの子は、曲に合わせてバチ(正式名称忘れました)の種類を持ち替えていました。途中のトークで紹介してくれたことによると、バケツ3杯ぶんに立てられたバチを使い分けているそうです。素人耳に聴いていても、柔らかくふわっとした音と、張りのあるコーンという印象の音はしっかりと聞き分けられました。
比べてはいけないと思いつつ、うちの下の娘が小学校・中学校とトランペットを吹いて部長までしているのですが、やはり子供の演奏とは音の抜け、音色や抑揚のコントロールなど、全てが違うものだと感心しました。
普段は、それぞれサックスの先生とマリンバの先生をしながら、合奏団にも参加しているそうです。
11曲というのは、聴く側にとってちょうどいいですね。「もうちょっと聴きたい」という所で終わったので、「じゃあ、CDも買おうか」という気にさせてもらいました。
聴き手のことを考えた選曲と曲数、会場作りは、私のコンサート運営にも参考になりました。また、機会があれば聴きたい音楽でした。


No.87 クラシックのブリッジがハカランダなのは・・・。
こやまさんのページに「ローズとエボニーのブリッジの違いはどんなもの」という主旨の質問がありました。そして、その質問に絡めて、「クラシックのブリッジがハカランダなのはどうしてか」という質問もありました。Re.を書いたら、あまりに長くなり、私の作文力から、これ以上は縮められないと、急遽「雑感掲載」してご紹介しました。でも、わかりにくいだろうなぁ・・・と思います。ごめんなさい。

 『ロイ・コートナルの「メイキング・マスター・ギター」(トーレス、ラミレス、ハウザー等名工のギターの作り方の詳説本)によると、クラシックギターの指板がエボニーである理由について、
「入手可能な木材の中で最も緻密で硬い表面は押しつける指の圧力に耐える」
と書かれています。確かにエボニーはローズ系のものより緻密で硬い性質を持ち磨耗にも強いですね。
また、クラシックのブリッジにローズ系のものが使われることに対して、同じ資料の記述は
「本書中で掲載されている大部分のギターのブリッジはハカランダ(他も全てがローズ系)で、非常に耐久性があり、極めて美しい外観を有する」
とあります。
 ここで言う「耐久性」の意味は、次の二つの意味で「鉄弦の場合とクラシックでは形状と弦の留め方から異なる」のだと考えられます。

@クラッキングの視点での耐久性(工作性も含め)の違い
厚さ8mmの板の、下から3.5mmの位置に水平に、1.1cm間隔で小さな1.5mm径の6個の穴をあける必要があるクラシックのブリッジでは、張力に対する耐久性も大切ですが、クラッキングの起こりにくさ等も求められます。弦を止める為の穴を工作し、それが長い間使用しても割れないことと、部分により厚さ3.5mmまで削り込む薄く細長いブリッジが物理的に割れにくいという条件を満たすにはローズ系のほうが優れているのだと解釈しています。
サドル角をつける為の深さ6mmの切れこみなども、かなりの工作精度が求められると思います。よく作られたクラシックギターのブリッジは、それだけで工芸品のようです。
A「押さえつける力に対する耐久性」と「曲げる力に対する耐久性」という力のかかり具合の違い
 ピンを使ったブリッジと、クラシックの縛るタイプのブリッジでは、力のかかる向きにも違いがあります。ピンを使ったものは、弦をピン穴を通してブリッジプレートにひっかけて固定しており、ブリッジそのものには「押さえつける力」しか働いていません。クラシックのブリッジでは、サドル部分にブリッジを「押さえつける力」が働いていると同時に、「タイ・ブロック」と呼ばれる弦を縛り付けている部分には、ブリッジを「持ち上げる力」が働いています。その為、ブリッジ全体には「曲げる力」が働くことになります。エボニーは緻密で硬いので、曲げられるとやや割れが入りやすいです。サイドバックにエボニーが使われない理由のひとつは、薄い板の状態でもしならず、曲げの力等に決して強くないことです。(参考としてカムピアノとネイトルソンのギター製作教本「ギターメイキング」では「タイ・ブロック」に象牙や牛骨等で装飾する重要性についても述べていますが、張力に対する補強と、弦による磨耗からカヴァーする意味があるようです。エボニーよりは柔らかいローズ系のブリッジだからこそ、補強はより重要であるのかもしれません。)

同じガット弦ギターでも、トーレス以前の19世紀ギター(パノルモ・ラコート・シュタウファーの御三家他フレンチ、ベニス等のギター)や、その流れを汲む鉄弦化以前のマーチンでは、エボニーやアイボリー等のブリッジが多くありました。それらのブリッジの多くはピンで留めるものでした。それが、ブリッジに弦を縛り付けるトーレスを基本とする現代のクラシックギターになるとエボニーのブリッジは消えてしまいます。「メイキング・マスター・ギター」には「クラシックギターのブリッジのデザインは、かなり初期のギターやリュートの未熟なタイプのブリッジからはずいぶん発展してきた」とあります。また、「ギターメイキング」には、その「発展」の歴史が具体的に書かれています。そして、どの製作本を見ても、ブリッジの素材として鉄弦の場合は「エボニーかローズ」となっているのに現代クラシックは「ローズ」を勧めています。
これらの事実からも、クラシックギターのブリッジにエボニーがあまり使われないのは、単なる伝統やデザイン上のことではなく、構造上の理由であると考えるのが自然だと思います。

 鉄弦ギターについて、マーチン社の考案したベリーブリッジは張力に強いのは勿論ですが、重くて、低音を響かせる伴奏楽器を作るのにとても都合はよかったのだと思います。その点ではエボニーの比重の重さもメリットなのかもしれません。また、鉄弦を交換するたびにこすれて磨耗しにくいことも有利であったのだと考えられます。
しかし、耐「押さえつける力」について、エボニーとローズ系の違いはもともと決して大きなものではなく、どちらかが特に劣るというよりは、製作者や使う側の好みの問題のほうが大きいと感じています。

>柔らかいトップを振動させるのにエボニーは硬すぎるという意見<
ちなみにこれはカーシャスタイルの製作家達の意見です。私のシュナイダー・クラシックギターのブリッジは、その為、特殊な樹脂でできています。「スピーカーのコーン紙を振動させるのに、そんなに極端に硬いものは使わないだろう」という考え方です。
また、アーヴィン・ソモジ氏がハカランダのブリッジを好むことにも、何かしらの考え方があるのだとは思います。ソモジ氏は、ブリッジの製作にかなり手間をかけるというコメントを何度か読んだことがあります。彼はブリッジ作り、特にブリッジの質量のコントロールを重視しています。アーヴィン=ソモジ氏の説から言うと、少なくとも彼のシステムにおいてブリッジが35gを中心にあるレンジをもって音質がかわるとのことです。』
本当に急遽の掲載で、やや荒削りな解釈もあるかもしれませんが、ご容赦下さい。



No.88 鉄弦は伸びない?2
 ピアノ線の特性を調べるのに、ピアノ線の会社やらバネの会社やら、ネットサーフをして、「私の勘違い」について確認することができました。(笑)
下記は鈴木金属工業さんのページからの「引用」です。

『金属の変形は弾性変形と塑性変形に大別される。弾性変形は力を加えるとその力に応じてたわみ、加えた力を除くと元の寸法まで戻るような変形で、もう一方の塑性変形は力を加えたとき、その力がある力以上になると、急に変形が進み、力を除いても完全には元の形状まで戻らなくなる不可逆的変形のことを言うんだ。
この塑性変形にはすべり変形と双晶変形があり、普通の材料ではすべり変形による変形が一般的に発生するんだ。すべり変形は転位と呼ばれる金属結晶内の線状の欠陥が移動することにより発生し、あたかも平面が順番に滑って全体として変形するもので、ちょうどトランプのカードを斜め方向に少し押して、一枚ずつ滑らせたような変形だね。
トランプカード全体が一つの結晶と考えると、結晶全体がある方向に変形していることになるね。
双晶変形はトランプカードで表すと、カードを束ねた状態でくの字に何ヶ所か折り曲げた状態の感じだね。
カードはそれぞれ順番に並んでいるのだが、一つ目の折れ曲がりから次の折れ曲がりまでが一つのブロック、そしてまた次の折れ曲がりまでが二つ目のブロックというように、ブロックごとに折れ曲がっているんだ。
すべり変形はそれぞれのすべり面でのすべり量が一定ではないので、すべる前の状態に正確に戻ることはできないんだが、双晶変形は、各ブロック内の原子の並び方が同じなので、変形する前の状態に正確に戻ることができるのが特徴で、制振合金はこの特徴を利用しているんだ。
でも、どうして双晶変形だと振動を吸収できるの。

それはね、今、説明したように双晶変形が可逆的変形であることがポイントなんだよ。
振動により加わる力は元々それほど大きくないよね。制振合金はそのような小さな力でも双晶変形が発生し、変形することにより振動を吸収するのさ。もちろん力が除かれると双晶変形は元に戻って消失してしまい、再び力が加わると変形するんだ。形状記憶合金もマルテンサイト変態という双晶変形を利用しているので、形状が元に戻せるのさ。
でも、大きな力が加わったらどうなるの。
ある程度までは双晶変形が増加して対応出来るが、大きな力の場合は双晶変形だけでは追いつかずすべり変形が生じてしまうよ。それにそうでないと塑性加工が出来なくなってしまうからね。
そうか、やはり限界はあるのね。』


 ギターの芯線に使われるピアノ線は、バネの材料にもなる鋼線ですから、伸び縮みは確かにします。でも、それは「限界を超えない範囲」でのことで、一定の張力では一定の伸び方をするものです。張力が働かなくなれば元にもどるものでもあります。だからこそ鉄弦でも「弦振動が起こる」わけです。
 でも、一定以上の力が加わったり、酸化等で劣化したり、長い間の振動により金属疲労したりすると、「伸び縮みの限界」に変化が起こってくる様です。「不可逆変形」という「元に戻らない変形」が起こってしまい、硬性(弾性)にも変化が起こり、伸び縮みしにくくなる。そうなると振動は当然しにくくなるし、有効振動領域も狭くなることが容易に予想できます。言わば「伸びきったバネ」の状態になるわけです。いつか専門の方に意見を伺ってみたいと思いますが、とりあえず、自分の中での結論がでてすっきりしました。(笑)
 芯線の伸び縮みの為に銅の巻き弦がずれないように芯線の断面が6角形をしている事なども始めて知りました。大きな鉄橋などを支えるのにもピアノ線の束が使われているそうですから、「どんどん伸びてしまう」ということが有り得ないのも間違いないようですね。


No.89 予定外のソモギ・モディファイドD
 12月の某日、友人のギターをウッドマンさんに取りに行った途中で、ブルージーさんに寄りました。すると、数人の人達が既にお店にいて、その真ん中に、あの「中川イサト」さんがいました。少し驚いたものの、ラッキーとも思いました。店員さんも含めて、ギターに関連したことその他、いろいろ話をされていました。新しくソモジ氏のギターが入っていたので、弾いてみたかったものの、人が多い上に、まさかイサト氏の前での試奏というわけにもいかないだろうとあきらめかけていました。
 そこで、たまたま店に戻ってきた店長さんが、イサトさんに挨拶した後で私にも気づいて「何か弾かれますか」と声をかけてくれました。つい、「せっかく声をかけてくれたのだから」と思い、「あそこにあるOMのソモギを弾かせてください」とお願いしました。’05ヒールズバーグにソモジ氏が出品したものだそうで、不思議なセンスのインレイが入っていました。ソモジ氏らしいと思いつつ、普通のインレイのほうが・・と、ばちあたりなことも考えていました。
 でも弾いてみて、ちょっとびっくりしました。最近の「ソモギ」は、エッジのきいた倍音の強いジャリーンという印象のギターが多かったのに、とても暖かな音色で、「今までのソモギと音が違いませんか?」と近くにいた店員さんに言ってしまったほどでした。すると「やっぱり。じゃ、間違いないんだ。」とのお返事でした。中川イサトさんの前であるにも関わらず、「無伴奏チェロ・プレリュード」やら「アルハンブラの思い出」やら、次々と弾いてしまいました。
 ちょっとしたら店長さんが「実は、奥にもう一本あるんですよ。」と言いました。で、せっかくだからと節操無くそちらも試奏させてもらいました。出してもらったのが「モディファイドD」で、弾き始めたとたんに、その低音の響き方に驚きました。アタック感はあまりないのですが、トップ全体で太鼓を鳴らすような6弦の鳴りは、トリプルXブレイシングならではのものだと改めて感じました。(トリプルXブレイシングを採用したギターは本当は以前にも弾いたのですが、より完成度が高くなっているのだと思います。)
 その小さなショックが覚めやらぬ間に、イサト氏の「綺麗な音のギターだ」という感想が聞こえてきました。さらに畳み掛ける様に、店長のS氏が「ソモギは最近値上げをしたので、今から作ってもらうと、この価格ではできないんですよね。」とか「去年手術をしたし、あと何本作れるか。」とか「間違いなく、フラットトップのルシアーで初めて、アーチトップにおけるディ・アンジェリコのような後世に残る存在になると思いますよ。」etc.etc・・・。以前よりS氏のセールストークが、とてもうまくなったのを感じました。本来、私にとってはそれらは「どうでもいいこと」であるものの、気づいたらホールドしていました。全くの自爆です。虎の子がまた、消えて行きました。・・・・ばかはOOなきゃ治らな・・・。

おまけ:そのモディファイドDを先日、アーモンドさんにお見せした時に、バードランドさんもいらして「ソモギのブリッジは、ウイング(羽根)の形に削ってあって、振動をよく伝える様にできているそうですね。」とおっしゃいました。そこで、彼がハカランダをブリッジに好む理由の予想が一つできました。「スピーカーのコーン紙を振動させるのに、硬すぎるものを使わない」という考え方に近いのでは・・と感じています。
 

No.90 「人間にとって気持ちのいい環境がギターにとってもいい環境」ってほんと?
 冬になると、部屋の乾燥対策について、あちこちのギター関連BBSで話題になったり質問されたりしますね。そんな中で、よくある答えに「人間にとって気持ちのいい環境がギターにとってもいい環境です。だから、自分が過ごしにくいと感じない場所に保管するのであれば大丈夫です。」という答えをよく読みます。でも、それって本当でしょうか?
と言うのは、人間は意外と鈍感で、少しくらいの過ごしにくさは感じない所があったり、そうでなくとも個人差が大きく、ある人に不快でも別の人には不快でない場合も多いからです。
 そのいい例として「不快指数」という言葉があります。不快指数=0.72(気温+湿球温度)+40.6で表される、「気温と湿度によって、どのくらいの割合の人が不快に感じるか」を表す「不快さの目安」で、不快指数70以下は、ほとんどの人が心地よいとされています。これによれば、気温が20℃以下だと、湿度は100%でも不快指数70以下で、不快な人はほとんどいないということになります。実際に、蒸し暑くない温度では、(かびが生えなければ)湿度が高めのほうがかえって気持ちがいい人は多いのだと思います。
 一方、気温の低い時に暖房し、湿度が極端に低い場合では、人により皮膚にかゆみを感じたり、喉が乾いたりしますが、特に加湿をしなくても、クリームを塗ったり、うがいをしたりすることで適応してしまうことが多いと思います。以前、職場の教室に加湿器を持ち込んだことがありましたが、それをつけるかどうかは、いつも湿度計を見てからでないと私には判断できませんでした。「不快指数」にも、「乾燥しすぎ」についての計算式はありませんね。
 保管に神経質になるのもよくないと思いますが、「人間と同じ」は「気にせずほっといてもいい」に近いような気もします。もし、人間と同じと思うなら、せめて冬場は自分が寝る時に、「布団に入れる」代わりにケースに入れておいてあげるといいかもしれません。
 余談ですが、うちのロッカータンスの中は、建物の真ん中に位置して、結露等はでないはずなのに、何故か冬場でも湿度70%あります。ケースはもともと保湿効果があるので、確認しないと冬場でも「ケースの中は過湿状態」ということも有り得るとは思います。(笑)
 それと、やっぱり、たくさん弾いてあげることで、ギターの異常を早い時期に感じ取ってあげたいですね。


No.91 鉄弦は伸びない?3
 またまた、つまらない実験をしました。
 ギターに普通に弦を張って、数日置いて落ち着いた所で、ナット部分の弦にマーキングしてから2弦だけテンションをほぼゼロになるように緩めました。すると2弦は3mm程マーキングが動きました。弦を張ったことでトップ面が動くことも考慮して一旦、全ての弦を張ってから、一本だけ緩めたわけですが、このことからライトゲージの2弦については、調弦することで3mm程度「伸びて」いるのだということが判りました。
 再び張りなおすと、マーキングの位置は元に戻ります。つまり、この「伸び」は基本的には確かに「可逆変形」であって、どんどん伸びてしまうものではなさそうです。
 とは言え、「ばねばかりに重りをつけっぱなしにすると狂ってしまう」といいます。「重りをつけっぱなし」にするのと「弦の張りっぱなし」は「バネに力を加え続ける」という点で条件が似ていると言えます。それを考えると、常に完全に「可逆変形」していると見るよりも、微妙に劣化(金属疲労)して少しずつ「不可逆変形」も起こっていると予測できます。(この不可逆変形はミリ単位以下のものでしょう。最長に不可逆変形しても3mmのはずですから。)この劣化は、力の加わっている「芯線」に対して起こり、弦の柔らかさ・硬性に変化(伸びっぱなし状態になること)が起こってくるのだと思います。その結果として、古い弦では、特にフレット音痴になり易い低音弦のハイフレットが異様にシャープしてしまう現象が起きるのだと思えてきました。
とりあえず、以前、弦を張りっぱなしたオヴェーションの6弦がハイフレットで半音以上もシャープしてしまう原因が根拠を持って予想できました。(笑)


No.92 新星堂大宮支店の閉店
 長年、いろいろと付き合いのあった楽器店・新星堂の大宮支店が閉店しました。とても寂しい思いがしています。私が大学生の頃にできて、随分PA機材も購入しましたし、オヴェーションのエリートの購入も新星堂でした。以前は知り合いの店員さんも沢山いて、「小さなサービス」もいろいろしてもらったりしました。D45ツリーオブライフを初めて弾かせてもらったのも新星堂でした。「おやじバンド」や「ヒカワ・ミニコン」にも協力的で、ポスター掲示等も「遠慮なく声をかけて下さい」と言われていました。
 と言いつつも、最近は、私自身、ギターの購入は中古店のほうが多くなり、PA関係も以前ほどマニアック(?)でなくなってしまい、小物を購入するくらいしかなくなりました。雑誌等すら「ネットで買う」ようになりました。
 しかし、実際にお店がなくなってしまうと、とても寂しいものがあります。数年前にCD売り場を撤去してギター販売を重点におきながら、少し前の「ギターブーム」も落ち着いてしまい、主力に置いたギターの売れ行きが不振になってしまったのかもしれません。
 時代の流れと言えばそれまでかもしれませんが、とても残念でなりません。アコースティックギターを弾く人が、また、もっと増えるようになるといいな、と思います。


No.93 ギターソロと手拍子
 2月に教員の集まりがあって、そこでギター演奏を余興にやってほしいと頼まれました。たまたま一緒に演奏するはずだった友人は、産休の先生の代わりに林間学校にでかけてしまい、「ソロ」での参加となりました。行ってみると、私以外にもギターの余興を頼まれた人がおり、予定していた曲が幾つか重なっていたので、さらに急遽、変更をしました。
 「愛のロマンス」や「スカボロフェア」等、簡単な曲を選んだこともあり、急でしたが始めはまあまあのできでほっとしました。
 ですが、最近憶えたジブリの「君をのせて」を弾き始めたとたん、「手拍子」が入りました。さらには歌い始めた先生方も多くおりました。伴奏譜を用意して「みんなで歌おう」という演奏ならよかったのですが、ギターソロですから、いつも家で弾く時には、「間」をとったりスピードを変化させたりしつつ弾いてきました。突然の手拍子は、気持ちとしてはうれしかったものの、結局、ギターがついていけず、ペースを乱されてボロボロになり、とうとう途中で曲が止まってしまいました。その後の曲も「また歌われるのではないか」という動揺のため(?)失敗続き・・・。
 考えてみれば、「君をのせて」は、小学校では合唱曲の定番の一つで、先生方にとっては、とても親しみやすい曲でしたから「歌って当然」の曲でした。今でも「しまった」という思いは強いです。教員の集団の前で「君をのせて」のソロは二度とするまいと心に誓って帰りました。


No.94 乾燥みかんから考えたこと



10ヶ月程度をかけて乾燥みかんを作りました。
普通の状態で置いておけば、みかんは当然、腐ります。でも、冷蔵庫の上に置いておくと、湿度が低いためにカビも生えずに乾燥していきます。「いつも食べているので中身の状態がよくわかっている」みかんを乾燥させることで、植物が乾くしくみを理解できるのではないかと考えました。
みかんの重さは、乾く前の1/10以下になっています。表面の硬さもとても硬いです。包丁で切るのも、けっこう大変でした。
内部について、茶色く見える所が果肉です。果肉は完全に乾ききったわけではなくて、べたべたとして、臭いはきつくなっていました。真ん中の白く見える所は空洞です。果肉が乾いて小さくなったために、みかんの房の皮が引っ張れるだけ引っ張られてがらんどう状態になってしまったようです。房の皮自体も硬くなっていました。房の皮が引っ張りきれなくなると房の内部もがらんどうになっていったようです。果肉は内部の繊維にこびりつくように固まっています。
こうした変化がギターのトップ板の細胞の内部でも起こるのかもしれません。自然に少しずつ乾燥したトップ板は、内部の水分(結合水)が少しずつ奪われ、細胞の中身が小さくなって空洞化していくのでしょう。
ただ、もし、「自然に乾燥する」のでなく、一気に機械で乾燥させたとしたら、例えばこの「みかん」で言えば、「房の皮が引っ張られる」ことなしに、もとのみかんの房の形のままで乾燥するような気がします。その場合、このような空洞にはならないかもしれませんし、房の皮が「硬く」もならないかもしれません。
木材の経年変化のメカニズムについてのはっきりとした検証はできませんが、こんな実験も面白いと思っています。(笑)

No.95 ソモギギターについて考えたこと
 ソモジ氏がフルタイムの製作家となり鉄弦ギターを作り始めた初年度’77sのDタイプギターを手に入れました。ローズらしい艶やかで深みのある優しい音色で、ショーモデルのMDの音色をグランドピアノにたとえるなら、これは上質のアップライトピアノといった印象です。ロゼッタからもわかるように、内部構造も含めて、あちこちクラシックギターの手法が取り入れられています。まだシリアルもありません。エリー・ルイスというアマチュア女性プレーヤーに作られたものとラベルに記されています。ご健在なら「おばあさん」かもと思いますが、どのような人なのか、とても気になっています。
 (’77sは、ソモジ氏がフルタイムで製作を始められた年であると同時に、あるクラシックギター作品展に出品し、製作家をやめようかと悩まれた年でもあるそうですね。)
 手持ちでこのギターに最も近い音に感じるギターが’83ソモギDメイプルです。ローズのサイドバックのほうが艶やかさがありますが、メイプルのドカンといった大きな鳴りも気持ちがいいです。時期的にこれらの音に近いものが「ウィンダムヒルに選ばれた音」であり、ソモギギターを有名にしたものであると感じています。
 ’83sDメイプルの基本的な構造は、既に’90sのものに近いように感じています。ただ、’90s以降のギターの中にはエッジがきいてジャリジャリとした倍音を持つものも多く、大きな印象の違いを感じるものも多いと思います。’77sDと’83sDは、内部構造はあちこち異なるのですが、基本の音色に近いものを感じるから不思議です。
 また、ソモジ氏の製作開始が’72年、’83sDのシリアルが70番台、某ショップで確認した’96sのシリアルは170番台、’05MDのシリアルが370番台です。フルタイムで制作活動を始めたのが’77年からとすると単純に計算はできませんが、’96年までは年平均10本以内、’97年以降’05までは年平均20本以上のギターを製作されていることになります。余計な想像ですが、最近の、ソモギギターの価格の高騰には、ひところの内田ギターと同様に、なるべく「製作本数削減」をしたいソモジ氏の製作家としての願いがあるのかもしれません。
 ’05年MDは、トリプルXブレイスであり、出音の仕方が他の二本と根本的に異なります。特に低音の鳴り方が、’05MDはトップ面全体でとても深く鳴っている感じです。ブルースの名手でもあるアーモンドグリーンさんに弾いてもらったときに、Dメイプルの低音の「ドカン」という音には感心していたのに、’05MDの「ドーン」という6弦は「私の弾き方では鳴りすぎてだめだ」とおっしゃっていたのも印象に残っています。
カリフォルニアギタートリオは、じゃりじゃり音のソモギギターを見事に使いこなしていますね。でも「ミニミニコンサートTAKE1」の’83sDメイプルとは随分印象が違います。小松原俊氏は、’90s前半のソモギが好みだそうですね。(彼のソモギは、ちょうど中間くらいでしょうか?)
気に入ったギターの歴史や背景なども楽しみつつ弾けるのも、とても幸せなことではないかと感じています。
マークシリーズはソモギに比べて、とても不遇なギターと思いますが、共通点を多く見出せるのも楽しいことです。

※2003年もので300番あたりのものを発見しました。とすると’04’05あたりは、ソモジ氏が一時入院されたにも関わらず、2年で70本前後の計算になります。’97で180番台でしたから、それ以降暫くは年間20本程度の計算でしょうか。


No.96 二十数年ぶりの作詞〜「教室は地雷原」
 本当に久しぶりに歌を作りました。中学から大学卒業まで、随分と曲を作ったり編曲もしてきましたが、ここ暫くは作ることができなかったですし、その気持ちにもなりませんでした。
 私の作詞の中には大学の頃からピートシガーがいます。ギターテクニック云々ではない「メッセージ」としての歌です。フォークというジャンルの中では、スリーコードの伴奏で十分で、イントロや間奏等も無く、ハンマリングやプリングすらも使わなくともよいもの、という意識があります。極端な話が昔の黒人奴隷達の作った「タバコ箱ギター」でも十分ではないかという感覚があります。
 兄や父の他界等、大変なことは多くあったものの、ここ暫くの現実に対する充実感を持って過ごしてきた時間は歌を作る必要性を作らなかったとも言えます。
 でも、二年ほど前の佐世保の女子小学生による同級生殺害事件は、大きな衝撃でした。当時、同じ6年生の学年主任で、自分のクラスの中にも難しい家庭環境にある児童を(実は自分から積極的に)受け持っていたこともあり、子ども達の抱える環境の「重さ」を感じていました。明日はわがクラスかもしれないと、当時、切迫感を持って新聞投稿などもさせてもらいました。
 今、新聞等で子ども達のいじめによる自殺が報じられていますが、その内容があまりに子ども達を理解していないと感じられるものが多く、それに対する違和感が歌を作らせました。敢えて全く飾らずに、曲も伴奏もシンプルにして「歌詞」を聞かせる歌です。
 説明不足で御幣も生むかもしれませんし、異論も勿論あるでしょう。また、「歌は楽しいものがいい」という人には敬遠したい歌かもしれません。友人には「やっちゃったね」と言われたりもしましたが、物議や疑問を与えることができれば、それだけでも存在意義があるかとも思っています。「いじめている子」と「いじめられている子」に分けているのは大人たちであり、子ども達の「本当の友達が欲しい」と願ってもがいている、不安定で悲しい姿の一つが「いじめの連鎖」であるという思いは強く私の中にあります。
http://players.music-eclub.com/?action=user_song_detail&song_id=137973


No.97 ギターは育つもの?(「D28徹底研究」への投稿から)
千葉大名誉教授の小原二郎氏の研究は、以前から興味深く読ませてもらっており、染村さんの「D28徹底研究」に投稿する機会がありましたので転載しておきたいと思います。スレッドを立てられた方への返事の形をとっています。

>OOさん
ホームページ、見てくださって有難うございます。
気恥ずかしいような文面や演奏も載っており、少しばかり申し訳ないようです。 実は、あまりに長くなってしまうので一度に書くのを控えたのですが、 紹介頂いた小原二郎氏の著書にも、かなり興味深い内容があります。 もしも彼がギターに興味を持って研究してくれたら、もっといろいろなことがはっきりと していたに違いないと思うほどです。後で検索される方のためにも「おまけ」に紹介させてください。
手元にあるのは「法隆寺を支えた木」「木の文化」「木の文化を探る」の三冊です。 その中に、70℃で熱すれば200日間、100℃なら10日間熱処理を加えることで 1000年分の木材の老化が起こると書かれている文があります。 これも仮説ですが(笑)、夏のトランクの中がちょうど70℃を超えることから 「木の老化現象」が急激に起こった「可能性」はあると思います。 (接着剤等、剥がれず、よくバラバラにならずに無事だったとも思いますが。) ヒノキの人工古木を使ってヴァイオリンを著名な製作家峯沢峯三氏が製作するのに 材の提供をしたそうですが、50年・100年・200年の老化処理をした所、 200年のものが一番「さえた音」がしたそうです。 その原因を小原氏は「結晶化」に求めていました。
最も新しい本の「木の文化をさぐる」の中には、奈良女子大の疋田洋子氏による 築後30〜247年の9棟の建物の7種類の材の強度試験についても触れています。 小原氏の古材のデータと新材のデータを結ぶもの、 或いは他の材にも広がりを持たせるデータとして意味があるとしていますが、 結果はどの材も見事に新材よりも高い値がついたそうです。
小原氏のヒノキの古材のデータグラフから見ても、始めの50年間くらいが弾性係数等、 最も伸びていく時期であるように読み取れます。 文面から小原氏はヒノキを針葉樹の代表として、ケヤキを広葉樹の代表として扱っており (寺の解体等で集めた試験体なので他のものは集められなかったと思いますが) 他の樹種もほぼ同様の老化過程をたどるものという「仮説」を立てられているようです。 細胞組織のリグニンの量で老化の速さが決まると書かれており、 それは針葉樹のほうが広葉樹よりずっと多いのだとの事です。
ただ、先述の通り、木材は個体差と樹種によるばらつきが大きく、 小原氏の研究をもって「ギターの経年変化のしくみが解明された」と見るのは 早すぎると思われます。私自身にも逆に幾つかの疑問点も存在しています。 「弾きこみのプロセス」は一般にプレーヤーサイドで金管楽器ですら半ば「常識」になっていても そのメカニズムの研究は私の知るところ、ほとんど進んでいないようです。
もしかしたら、余計なことまで書いたかもしれません。
また、今後とも宜しくお願いします。 <

「弾きこみのプロセス」について、ヤマハEクラブのページのどこかに、「演奏し続けると木の細胞の向きが揃うから音がよくなる」といった趣旨の説明を見たことがあったと思うのですが、出展や根拠が明らかでなかったので以前、質問をしておいたのですが、そのページがわからなくなってしまい、その後、どうなったか確認できていません。どこかの大学教授が研究しているという噂も聞いてはいるのですが・・。わかったらまた、ご報告したいです。


No.98 '97sソモギSJとMK99
 とうとう'70sDローズ・'80sDメイプル・'90sSJ・'00sMDと、年代ごとのソモギギターを手に入れてしまいました。自分自身「懲りないものだ」と呆れている状態です。言い訳にしかならないのですが、'90sSJは他の手持ちのソモギと全く違う音色であったのです。倍音の強いジャリジャリ音に近いギターでありながら、とても温かみのある音色でした。ネックも細くてカッタウェイがついていないのが、かえってカスタムらしくて作りこみの美しさも感じています。
 家に持ち帰って他のギターと弾き比べて驚いたのは、このギターは他のソモギギターよりもMK99のほうが音色的にずっと近いと感じたことでした。MK99のほうが胴が深い事もあり、落ち着いた音色に感じ、SJのほうが粒立ちのはっきりした高音の煌びやかな印象を受けるものの、弾き方によっては、目隠しテストで間違えるかもしれません。
ご本人達には叱られるかもしれないですが、「ギターを科学の視点で捉えて製作する」リチャードシュナイダーの後継者は広い意味ではソモギであるように、私の中で感じている面もあります。
 もう一つ、面白いと思うのが、最近、'05MDフライングバードの音が一年以上経って'77Dローズに近づいてきたように感じることです。透明感がある澄んだピアノのような音色で、独特の「こし」のある音です。メイプルの'83Dにも共通して感じられる「年代を超えたソモギの音」があるような気がします。そう言えば、以前試奏した'77sクラシックの透明感のある音にも通じるような気もします。特に'05MDはラティスブレイシングなので出音の仕方は他と異なるはずなのに、不思議なものです。杉田さんに作ってもらったMKレプリカが杉田さんのファンブレイシングのギターの音に似ているのを思い出したりしました。デビッドラッセルヤングが「同じ構造でギターをそっくりに作っても、それぞれの製作家の音になる」と書いていたのも思い出したりしました。
 まだまだソモギにのめり込んでいきそうな自分を感じています。いやはや・・・。


五線譜1