heathenを聴きながら

このアルバムの音を聴いていると互いに逆転しつつ夜を疾駆する一対の車輪(ホイール)を連想する。
音の中から私に歩み寄ってくるように感じられる声さえ同時に奇妙なよそよそしさを感じる。
非常に身近に坐す見知らぬ人のように、不可思議なしかし強烈な印象だ。

相当の密度でheathenの音とともに過ごしたはずだけれど未だ耳慣れないのかも知れない。

ところで今作についてDAVID BOWIE自身がN.Y.911と関連づけた作品ではないと再三語っていることがしばしば俎上に上がっている。

私自身、今作をN.Y.911以後の現在の世界状況とかけ離れた物として捉えることは難しい。
だが、やはりこの作品は「N.Y.911」の為に描かれたものだとコメントされる作品ではないだろうと思う。
DAVID BOWIEにとって、N.Y.911だけが「悲惨な事実」では無いのだ。
それは、事件直後に発表されたステートメントからも伺い知ることが出来るし、又直後のチャットでの発言ではもっと明確にこの事実の根本的な原因が何処にあるかの疑問が発せられている。
世界にとって、人類にとって、N.Y.911は至る所で既に起きたことのように、或いは、至る所でたった今起きていることのように、人類が起源から親しんできた長い殺戮の歴史にレコードされた一項目の悲惨に過ぎない。
あの夜に自分が触れているニュースに、その後の世界の流れに、同調できない自分が存在したことを思い出す。

私達は死から来て死に至る
それが生きると言うことなのだ
もし生きることと別れを告げる時が来たら
私自身はやはり怖れ悲しむかも知れない

たとえ全ての物質的現象が空であると説かれても
自分自身がそれを実感できたとしても

私は今生きているこの世界のために歓び 愛し 怒り 悲しむだろう。

heathenを聴きながら夜になると
そんなことをとりとめもなく考えている。

trash June15,2002




heathen by belne-2002

鉛筆,水彩,水彩紙

back to index

 
I Would be your Slave
sunday
slowburn
heathen関連Hp
公式heahtenPAGE BOWIENET SONYMUSICJAPAN