1. 基本事項 |
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1.1. まえがき |
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オポーネントがオープンした場合,最低レベルのスーツをビッドして,オークションに参加するのを,シンプル・オーバーコールといいます.ここでは,オポーネントが1のスーツでオープンした場合を扱います. オーバーコールをビッドする位置で分類すると,次の3つのパタンになります.
ここでは,A型を中心に説明し,B型は補足的に説明します. C型は,いわゆる「バランシング・ビッド」で,詳細は こちらをご覧下さい. |
1.2. オーバーコールの目的 |
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オーバーコールの目的を要約すると次の3つになります.
例1:オポーネントのビッデングを妨害する
例2:自分達でコントラクトを買う
例3:パートナーのオープニングリードのために
オポーネントがオープニングした場合,オーバーコールを適切に使うと,上記のような効果があります. しかし,オーバーコールでオークションに介入した時点で,オポーネントは自分達のハンド情報を知っているので,ペナルテイ・ダブルをかけてくる恐れがあります.また,HCP,スーツの所在をオポーネントに知られる欠点もあります. |
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1.3. ビッデング・システム |
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シンプル・オーバーコールは「このスーツでプレイしよう」という提案です.このため,強い切り札とある程度以上のハンドの強さが必要です.
パートナー間でフィットがあれば,パートナーの仕事はコントラクトのレベル決定になります. フィットがなければ,このビッドを手がかりにして,新しいコントラクトの種類を探し,そのレベルを決めることが仕事になります.
このため,オーバーコールのビッデング・システムはオープニング・ビッデングと違うしくみが必要です. オーバーコールのビッデングに関しては,これまでも多くの本が出版されています.そして,エキスパートがそれぞれ自説を説明・解説しています. これらは,ポイント割付けやビッドのメッセージをオープニング.ビッデングと同じような考えで構成したものと,ビッド割付けとビッド・メッセージを別体系にしたもの,及びその中間的なものに大別されます.
このテキストでは,オーバーコールのビッデングを別体系にした,"More
Commonly Used Conventions "
(Grant) とEASYBRIDGE
! 2 (McMullin) を参考にして,SAYCをベースにした,ビッデング・システムを構築し,Klinger
や Lawrence
のチップスで補強しました. このシステムの特徴は次のとおりです.
それでは,オーバーコールに必要な条件や基準の説明からはじめましょう.その根拠などは「参考事項」で補足します. |
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1.4. 十分条件と補助基準 |
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シンプル・オーバーコールは「このスーツでプレイしないか」という提案です.このため,切り札が強いことと,彼我の力関係を知るため,ある程度のHCPを持っていることが必要です. この他,実質的なハンドの強さをチェックするのに,LTCとODRが役に立ちます. 以下,各項目について説明します. |
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(1)スーツ |
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オーバーコールでは,フィットがなく,自分ひとりで戦うこともありますから,切り札が,
が原則です.「良いスーツ」の基準は,いろいろありますが,ここでは, KLINGERの "Suit Quality Test" (SQT) を使います.
(詳細は こちらをご覧下さい)
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(2) HCP |
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彼我の力関係を判断するため,トータルポイントではなく,生のHCPでハンドの強さを表します.
8-16HCPだと漠然としているので,レベルとバルネラブルで,便宜上,下表のように区分します.
SQTが7以上で,HCPが8あれば,1レベルで, |
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(3) LTC |
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スーツコントラクトでは,獲得できるトリック数は HCP と切り札枚数で決まります.しかし,オークションがある程度進まないと,自分達のHCPと切り札枚数はわかりません.
オーバーコールでは,いつも,ペナルテイ・ダブルをかけられる恐れがあります.オポーネントにパートスコアしかないのに,バルでダブられて,1ダウンすれば,スコアは-200となり,致命的です.
このため,ハンドの実質的な強さの事前チェックが必要です.このツールとして,「プレイイング・トリック」やLTCがありますが,ここでは,使い方が簡単なLTCを使います.
LTCの詳細は こちらを参照していただくとして,バルのときは,次表の基準に適合していることをチェックしておくと安心です.
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(4) ODR |
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ODRは"Offence to Defence Ratio"の略語です.味方がプレイした時とオポーネントがプレイした時のハンドの強さを示す係数です. バランスした分布で,HCPが各スーツに分散しているハンドを「ODRが低い」,アンバランスな分布で,HCPが特定スーツに集中しているハンドを「ODRが高い」といいます.(下図参照) オーバーコールに向いているのは,ODRの高いハンドです.例えば,下図の(C)は,ダイヤモンドでプレイすると,このハンドで7トリックとれますが,デフェンスにまわると,2トリック取れるかどうかです.
オーバーコールする時,また,せり合う時に攻守の判断に役立ちます. |
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