中級室 シンプル・オーバーコール 4 2004/08/15
'04/10/07/2e
  1. 基本事項
2.ダイレクトシートのオーバーコール
3. RHOがビッドした時のレスポンス
  4 B型オーバーコール
5. 参考事項
 

 

3. RHOがビッドした時のレスポンス


オーバーコールのあと,アドバアンサーのRHO(右隣のオポーネント)がパスした時は,こちらに25HCPある可能性があります.しかし,RHO がビッドした場合は,こちらのHCPは17から20くらいに限定されます.ゲームコントラクトを買える可能性はなくなります.

従って,第2章で説明した,レスポンダーがパスした時のアドバンサーのレスポンスの要領は一部手直しが必要になります. 


3.1. RHOの介入パタン


オーバーコールの後,レスポンダーは有効な情報があれば,新スーツ,NT,ダブルをコールします.その介入パタンは次の5種類に分類されます.


(A) レイズ
N E S W
1 1 2 ?
(B) 1NT
N E S W
1 1 1NT ?
(C) ネガテブ・ダブル
N E S W
1 1 X ?
(D) 1-O-1
N E S W
1 1 1 ?
(E) 2-O-1
N E S W
1 1 2 ?

(A),(B)では,Sのハンドは6〜9ポイントです.(C),(D) では,Sのハンドは6ポイント以上あり,上限は不明です.そして,(E) Sは10ポイン以上のハンドを持っています.

このレスポンスによって,アドバンサーは,彼我の力関係(オポーネントが強いのか,それとも,力が均衡しているのか)を知ることができます.

 

レスポンダーがレスポンスした時,こちらのHCPの上限は,(A)〜(D)の場合は,22 [=40-(12+6)] です.(E)の場合,18[=40-(12+10)] です.
したがって,(E)の場合,ゲームコントラクトを買える可能性は,極端なアンバランスハンドでない限り,ありません.
下限は,オーバーコールのレベルと自分のHCPからわかります.(例えば,1レベルのオーバーコールに10HCP持っていれば,最低 18HCPあります.)したがって,レスポンダーがビッドしたら,彼我の力関係は均衡か均衡以下の状態にあり,パートスコアでの競り合いが主となります.

ゲームコントラクトは,極端なアンバランス・ハンドでない限り,ないでしょう.

LTTによれば,HCP=20のときの,切札枚数ととれるトリックとの関係は下表のようになります.


HCP=20
切り札枚数 トリック数 許容レベル ダウン1
7 7 1 2
8 8 2 3
9 9 3 4
10 10 4 5
11 11 5 6

8枚フィットなら,2レベルまでコントラクトを買える算段です.ダウンを覚悟なら,3レベルまで競り合います.力が均衡しているときは,この表を参考にして競り合うとよいでしょう.表欄の「ダウン1」は1ダウン覚悟のレベルです. 

 

この場合のアドバンサーのレスポンスの要領を,ローレンスの考え方でまとめてみると,下表のようになります.

危険度はペナルテイ・ダブルをかけられる可能性を示すものです.


危険度 パタン レスポンスの要領
2-O-1 レイズは控え目:
ジャンプシフト,NT,キュービッドはなし.
1NT レイズは控え目:
ジャンプシフトはプリエンプト.
1-O-1 同上.
安全 レイズ 3NT.ジャンプシフトは使わない.
レスポンシブ・ダブルが使える.
N.D 3NT.ジャンプシフトは使わない.

3.2. レイズの場合


アドバンサーは,自分のHCPから,彼我の力関係を判断できます.

こちらもフィットしていれば,切札枚数とHCPを根拠にして,競り合います.

フィットがない場合は,NT,新スーツ,およびレスポンシブ・ダブルを使い,競り合います.


E S W N
1 1 2 ?
2 =3枚サポート.
2/3 =強いスーツ.
2NT =ダブルストッパー.
3 =4枚サポート.
X =レスポンシブ・ダブル.

3.2.1. 競り合いのルール

 

このケースで,フィットがあれば,バルネラブルと切り札枚数を目処に,パートスコアを競り合います.

競り合いに関する,KLINGERのルールを紹介しておきます.

  • 8枚フィットなら:
    • 2のレベルまでビッドし,オポーネントが2でとまったら,状況により3レベルまでレイズする.
    • オポーネントが3レベルまで行ったら,パスする.

  • 9枚フィットなら:
    • 3のレベルまでビッドする.
    • オポーネントがランクが上のスーツで3をビッドしても,4レベルにはレイズしない.

  (WEST) (EAST)  

例題

(1) QJ3
AQ853
943
104
K542
K104
876
K97
S W N E
1 1 2 2
/ / //  
(2) J3
KQ1053
943
AJ4
KQ54
984
KJ52
98
S W N E
1 1 2 2
3 / / //
(3) KQ1053
J83
A43
104
7642
4
K9
AQ74
S W N E
1 1 2 2
3 / / 3
/ / //
(4) AJ3
KQ1065
4
J1042
K54
84
AJ93
K974
S W N E
1 1 2 2NT
/ / //  
(5) J73
KQ1064
432
A4
AKQ952
85
93
1097
S W N E
1 1 2 2
/ 3 / /
//      

3.2.2. レスポンシブ・ダブル

 

レスポンシブル・ダブルは,サイドスーツのフィットを探すツールです.

例えば,下図のオークションで,Wにオポーネントのスーツとパートナーのスーツ以外に,良いスーツがあります.このフィットを探すため,ダブルをコールします.


N E S W
1 1 2 X
KQ1063
3
43
AJ982
ハートをサポートできません.スペードとクラブに良いスーツがあることを,ダブルをコールして,パートナーに教えます.

(1) 使用条件


オポーネントがフィットしていて,パートナーのサポートがない時に使います.5枚スーツが理想ですが,よい4枚でも使います.

 

レスポンシブダブルの使用条件は,次のとおりです.

  • パートナーがオーバーコールして,レスポンダーがレイズした時に使うこと.
  • アンビッドのスーツが5+5で,競り合える強さをもっていること.
  • 強いスートまたは強いハンドなら,5+4でもよい.
  • レスポンスのレベルが2なら8HCP以上,レベルが3なら,10HCP 以上あること.
  • パートナーをサポートできないこと.
  • 使用範囲の上限はは3を目処とすること.
N E S W
1 1 2 X

例題:レスポンシブル・ダブルの例です.
(Wのハンド)

(A) (B)   (C)   (D)   (E)
KQ1053
10
54
KQ982
AK975
105
4
K10982
  KJ954
-
954
AQ982
  KQJ5
5
1054
A10852
  AJ95
10
9543
AK98

(2) オーバーコーラーのレスポンス


指定されたスーツに3枚あれば,そのスーツをビッドします.2枚の時は,自分のスーツの強さを考慮して,最初のスーツをリビッドするか,サポートするかを決めます.


N E S W
1 1 2 X
/ ?    

例題:レスポンシブル・ダブルにレスポンスする例です.

(A) (B)   (C)   (D)  
KQ10
KJ1053
43
A82
K10
KJ1053
743
J82
  K10
KJ1053
Q743
J8
  J5
AKQ1053
1054
107
 

3.3. ネガテブ・ダブルの場合

 

ダブラーのHCPは6以上で,上限は不明です.また,特定の4枚スーツを持っています.
自分のHCPから,彼我の力関係を推定できます.
ネガテブ・ダブルはデフェンダーのオークションの妨害になりませんので,.「RHOがパスした時のビッド」で使えるものは使います.

ただし,2レベル以上の新スーツは状況判断で使うようにします.


E S W N
1 1 X ?
2 =オーバーコールできるスーツ.
2 =3枚サポート.10HCP以上.
2 =3枚サポート.6-9HCP
3 =4枚サポート
1NT/2NT =ノートランプ.ダイヤモンド,スペードのストッパー保証.

N E S W
1 1 X ?

例題1:Wは次のハンドでどうレスポンスしますか.

(A) (B)   (C)   (D)  
K43
653
K743
982
43
KQ53
AJ3
J1082
  K543
53
J7432
85
  KJ5
Q3
AQ105
9874
 


N E S W
1 1 X ?

例題2:Wは次のハンドでどうレスポンスしますか.

(A) (B)   (C)   (D)  
J43
Q1053
K743
102
K843
1053
Q3
KJ82
  108543
AJ1053
-
Q85
  A5
QJ53
KQ83
752
 
(E) Q9643
J43
KQ3
K2
(F) QJ5
K10764
Q9
QJ3
(G) 9
QJ764
AKQ32
104
(H) 2
AQ5
K9764
J953

3.4. 1-O-1の場合


この場合,彼我の力関係は均衡か,又は,こちらが不利です.ただし,オポーネントのコントラクトの種類は未定です.

したがって,レスポンスは,ネガテブ・ダブルの時と同じ要領で行います.

「迷ったら,ビッドしなさい」(When in doubt,bid.[L])だそうです.


N E S W
1 1 1 ?

例題Wは次のハンドでどうレスポンスしますか.

(A) (B)   (C)   (D)  
843
KQ10653
K7
102
A43
Q10753
KQ3
Q2
  Q63
108653
K62
A5
  QJ107
Q105
75
KQ104
 

3.5. 1NTの場合

 

この場合も,レスポンダーは6HCPを持ち,フィットは見つけていません.
力関係は均衡か,又は均衡以下です.しかし,オーバーコールしたスーツにストッパーと枚数を持っているので,競り合いには注意が必要です

このため,レスポンスは次のように大幅に変更します.

  • レイズは1ランク下げて行う.
  • キュービッドは使わない
  • ジャンプシフトはプリエンプトとして使う.

N E S W
1 1 1NT ?

例題1Wは次のハンドでどうレスポンスしますか.

(A) (B)   (C)   (D)  
843
K8653
KJ7
102
Q974
KQ3
A73
102
  QJ763
AJ3
2
9853
  1074
AK1075
7542
4
 

N E S W
1 1 1NT ?

例題2Wは次のハンドでどうレスポンスしますか.

(A) (B)   (C)   (D)  
84
653
7
KQJ10972
KJ74
3
8732
10652
  Q3
A3
QJ107643
53
  1074
K1075
Q2
KJ85
 

N E S W
1 1 1NT ?

例題3Wは次のハンドでどうレスポンスしますか.

(A) (B)   (C)   (D)  
73
10865
A74
Q732
J74
Q1063
K763
102
  K763
1063
Q2
KJ53
  AJ4
Q10853
7542
4
 

3.6. 2-O-1の場合


この場合,オポーネント恐らく23HCP持っているので,力関係はオポーネントが優位です.こちらで,コントラクトを買うことはないでしょう.

競り合った時,レベルは2以上になるので,無理なコントラクトはペナルテイ・ダブルを覚悟しなければなりません.

フィットしている時は,バルネラブルを考慮して限界まで競り合います.
フィットのない時は,ODRが高ければ,やはりバルネラブルを考慮して,許容レベルまで新スーツで妨害します.

妨害できなければパスして,デフェンスに徹し,オーバートリックを防止しましょう.


■ 競り合いの限界


自分達のHCP17の時,切り札枚数とトリックの関係はJAGOによれば,次表のようになります.


参考文献: JAGO :"The Trick Ratio Principle"

切り札枚数 トリック数 許容レベル NVでDOWN-1のレベル
8 7 1 2
9 8 2 3
10 9 3 4
11 10 4 5


この表は,「味方のHCP17でも,9枚フィットがあれば,2レベルでビッドできる」という事を示しています.
パートスコアの競り合いでは,ペナルテイ・ダブルをかけられた時,ノンバルでは1ダウン,バルなら0ダウンが許容限界です.したがって,9枚フィットの場合を例にとると,

バルなら,2レベルまで,ノンバルなら3レベルが限界になります. 


N E S W
1 1 2 ?

例題:ノンバルです.Wのコールは?

(1) K63
543
J3
AJ982
(2) 54
Q10764
A53
A43
(3) 108754
AK
KQ3
1043
(4) 4
105
AKQ10942
J43
(5) AKQ8
105
943
10432

 
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