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The River King

Nick Willing

2005 Kanada/UK 99 Min. 劇映画

出演者

Liam Cyr
(地元の少年)

Colin Rogers
(地元の少年)

Edward Burns
(Abel Grey - 警察官)
David Gibson Mclean
(アベル、若い頃)

Sean McCann
(Ernest Grey - アベルの父親)

Joseph Wynne
(Frank - アベルの兄、自殺で死亡)

Robert Bockstael
(Kenny - 警察官)

John Kapelos
(Joey Tosh)

Bruce Murphy
(ジョーイの息子)

Thomas Gibson
(August Pierce - 死体で発見された学生)

Rachelle Lefevre
(Carlin Leander - 死んだ学生年のガールフレンド)

Jennifer Ehle
(Betsy Chase - 教師)

Julian Rhind-Tutt
(Eric Herman)

Ross Petty

David Christoffel
(Matt Farris)

Richard Fitzpatrick
(警察官)

Karl Pruner
(Walter Pierce)

Jamie King
(Harry McKenna)

David McVicar
(ハリーの父親)

Jonathan Malen
(Nathaniel Gibb)

Jeff A. Wright
(Robbie)

Nikki Barnett
(Amy)

Peter West
(教師)

Sandy Lund
(秘書)

Graham Farmer
(学生)

見た時期:2006年8月

2006年 ファンタ参加作品

ストーリーの説明あり、ネタばれ無し

2006年のファンタで私個人のナンバー・ワンです。何度か書きましたが、この年は地味路線。20周年なのでさぞかし派手な催しをやるだろうと思っていたら、全く逆の地味路線に大突入。ブロック・バスター抜きでした。どれも甲乙つけ難い佳作で、見て「感心しない」という作品の非常に少ない年でした。

甲乙つけ難い中でそれでも頭1つはっきり前に飛び出していたのがこの The River King。雰囲気的には地方色を強く出していますが、それは前の年の DeepwaterThe Zodiac あたりでも傾向が見られます。2006年は格段にその傾向が強くなって来ています。ですから、地味だ、地方色だと言うだけではこの年は勝ち抜けないことになっていました。とは言うものの、地方色はどの映画を見ていても好感が持て、こんな町に住んでみたいと思うようなシーンが時々出て来ます。今後もこの傾向が強まって行くと、現在世界中から嫌われているアメリカが政治サイドでなく、庶民サイドから好かれるようになるかも知れません。

The River King に甲がついてしまったのは、地味、つまり不自然に派手なスタント、アクションが出て来ない、地方色を出している、つまり一般の人の生活の範囲で物語を進めているということの他に、登場人物の人柄や、色々な行動に出る動機も自然に描かれていたからでしょう。そこに監督の優しい目が感じられます。それでいてスリラーとか犯罪映画と言えるような構造になっているのです。

私はエンターテイメントで現実からパッと外れてしまう映画も大好きです。そういう時は「どうせやるのなら気合入れてふざけてくれ」と願ってしまいます。また一応の現実路線を模索しながらも夢のような世界が展開する2001年宇宙の旅のような作品も好きです。自分が置かれている立場とは全然違うけれど、本当の宇宙ステーションだったらきっとこんな感じだろうと、それなりのレアリスムスを入れて描いていました。また、カンフーハッスルのような冗談以外の何物でも無いような、安っぽいのに滅茶苦茶おもしろい作品も大好きです。

しかし、今年のファンタのような《普通路線》も大歓迎。ソウ系の映画をしたたか見せられた後、ちょうどげんなりしているところだったので、今年の《ほっとする路線》は私にはぴったりでした。その中でも The River King は群を抜いていました。

功績が大きいと思うのは、全体を上手にまとめた監督、すばらしい景色を撮ったカメラ、すばらしくあたたかい雰囲気を出した主演の2人。しかしその他の人たちも監督の目指すところに一緒に照準を合わせ、良い雰囲気を醸し出していました。

この監督は作品数もまだ少なく、テレビの仕事も入っているので、それほどの大ベテランとは言えません。落ちついたトーン、景色、人物、ストーリーのバランスの取り方は《冴えた》とか《鋭い》というのとはまた違う才能ですが、それが溢れており、しかもまだ《完成》という形で止まっていません。

一体どれぐらいの予算で作ったのでしょう。低予算だったとしても安っぽい作りではありません。安っぽさを売りにしている作品もありますが、The River King はそのタイプの作品ではありません。予算でできるぎりぎりの事をしたという限界見え見えの仕上がりではなく、非常に上品に仕上がっています。

それが地味さになっていて、そのため目立たないかも知れません。ジェームズ・ボンド雀船長などの横に並ぶと、注目は浴びないでしょう。

ストーリーは原作があるようで、ちょっとインターネットを見てみると話が違うようです。原作の方には大きく登場するエピソードが映画ではカットされているような印象でした。原作は読んでいないので、詳しく解説はできませんが、ストーリーの一部分にスポットを当てた様子が伺えます。

映画の方は小さな田舎町。そこには寄宿舎になっている私立のエリート学校があり、ドラッグや非行とは縁の無い生活をしている若者が住んでいます。物語の発端はドイツやスカンジナビアを思わせる厳しい寒さの森。地元の少年が凍った川に死体があるのを発見したため警察が動き始めます。死んだのは寄宿舎で勉強をしていた学生で、聞き込みをしていると、関係者が皆自殺で片付けたがっているのが見えて来ます。学校は金持ちの子弟をあずかっていることもあり、スキャンダルはご法度、教師たちは職を失いたくない、学生は秘密結社風のグループの活動を探られたくないなど、みなそれぞれの理由があります。

警察の方でも上司から「(学校の存在は町に大金を落としているので)できれば自殺と言う線で・・・」という態度を取られ行き詰まる主人公アベルですが、学校に勤めるベツィーという先生と親しくなります。ベツィーから聞いた不思議な話、死んだ学生のガールフレンドが自殺は信じられないと思っていること、学生の間では妙な儀式をする結社が作られているらしいこと、教師が何か知っているらしいことが漏れ聞こえて来ます。

家庭の事情から、自殺となるとこだわってしまう警察官。正義感に満ち溢れ世の中を救うなどという派手なタイプではありませんが、不正は好きでない、事件があれば解明したいという気持ちの田舎の警察官。彼が事件を追う姿を中心にストーリーが進みます。親子の関係、事件を通じて知り合った恋人、そしてある決心を。

そして結末はほろ苦く終わります。

劇的な部分をできる限り節約し、地味路線で行きますが、主人公の警察官の心理状態は丁寧に描かれていて、事件の解明と同じぐらい重要な位置を占めています。それを演じている大人の俳優に好感が持てます。もしこの作品がコンピューターの雑誌のおまけについて来たら絶対に買う所存です。

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