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ウルトラヴァイオレット /
Ultraviolet

Kurt Wimmer

2006 USA 88 Min. 劇映画

出演者

Мила Йовович/Milla Jovovich
(Violet - 夫と子供を失ったため抵抗組織に加わった戦士)
Ida Martin
(Violet、若い頃)

Ricardo Mamood
(バイオレットの夫)

Cameron Bright
(Six - 新兵器、9歳の子供)

Nick Chinlund (Daxus)
Steven Calcote
(Daxus、若い頃)

Sebastien Andrieu (Nerva)

William Fichtner (Garth)

David Collier (BF-1)

Kurt Wimmer (感染者)

見た時期:2007年1月

ここ暫くSFとミラ・ヨボビッチを取り上げようかと思います。物の順序から言うと古い作品を先に取り上げ、新しい作品を後からというのが普通ですが、ここではできの悪い方から始めます。

彼女は最近ドイツ語で言う Schlampe (自堕落女)のイメージを強めていますが、以前はこの世のものとも思えない可憐なイメージだった人です。今年32歳。ですから可憐な乙女を止めてこの世のあばずれイメージでもいいのかも知れません。

旧ソ連時代に現在のウクライナに当たる場所の首都キエフで生まれた人。東側の人としては変わっていますが、子供の時にモデルのキャリアをスタートし、ベルリンの壁崩壊の少し後に映画界に入っています。ソ連はこの時期に共産主義政府が崩壊に向かっています。

未成年で1度結婚したのですが、どうやらお母さんに睨まれたらしく取り消し。その後22歳でリュック・ベソンと結婚。2年持ちませんでした。監督の方で彼女の美しさに惚れ込むのか、幾人もの有名な監督が彼女に関わっています。有名どころではリチャード・アッテンボロー、リュック・ベソン、スパイク・リー、ヴィム・ヴェンダース、マイケル・ウィンターボトム、ベン・スティラー、リチャード・リンクレーター、ポール・アンダーソン、クルト・ヴィマー。全部がロマンスと関連しているわけではないでしょうが、錚々たる顔ぶれです。また音楽と語学に強い人のようです。

映画界に入ってもあまりこれと言った目標がなかったと見え、演技を磨くでもなく、何となくエージェントかマネージャーが薦める作品に出ていたという感じでしたが、最近宗旨変えをし、アクションに乗り出しています。私は3作連続して見たのですが、アクション自体はまだ様になっていません。彼女よりもっと上手にこなす女優がいます。ただ彼女に取ってはアクションへ行くのも1つの道かも知れないなあと思います。他の女優はオスカーを取ったり、他のタイプの作品でも行けますが、ヨボビッチにはあまり大きな選択肢はありません。それでも映画界で行き抜いて行くには何かを始め、それを磨いて行くしかありません。彼女はどうやらここ暫くアクションを試してみる気になった様子。何か自分のスタイルを発見すれば花開くかも知れません。

私はヨボビッチのファンとしてはちょっと変わったタイプかも知れません。彼女がきれいに映っていればそれでいいのです。カメラ映りが良ければ演技はどうでもいいです。その点SFとかアクションだと、うまく行くかと期待しています。

私がこれまでに見たのは5本。うち4本がSF。これは偶然です。うち3本を今回連続でご紹介します。SFでなかったのは Zoolander。コメディーで彼女は重要な役ではありません。他は主演か準主演。彼女がいないと物語が成立しません。

ウルトラヴァイオレットのストーリーは最近流行りの新型ウィルスのために世界の収拾がつかなくなるという話です。

まずは用語の説明から。ヘモファージというのがバンパイア系の新人種。新型ウィルスに感染した人たちで、一般の人より強いです。強いけれど寿命は12年。何事でも良い話には落とし穴があります。

当然のように新人種と旧人種に対立が起こり、戦いが始まります。ウルトラヴァイオレットを作った人がリベリオンの監督だったので、描き方が型にはまり過ぎ、SFとしてのダイナミズムに欠けます。同じヨボビッチの作品でもバイオハザードでは成功していますから、責任はヨボビッチではなく、監督か脚本家にあると思います。ロケのためにわざわざ外国まで出向いた様子ですが、その甲斐は無かったと私は感じます。

X−メンの頃から人類には進歩がなかったと見え、強い新人種と弱い旧人種が対立すると新しい人たちが狙われます。そりゃそうでしょう。これまで弱い人種だけだったので強いとか弱いという差が無かったのに、急に超強い人種が現われてしまうと、弱い方は危機感を持ちます。

X−メンと似て、なぜか強い方に抵抗組織が作られ、多数派の弱い人種との戦いが起きています。このあたり華々しく宣伝される映画を見ていると、強い方が気の毒な犠牲者になっていて、弱い方が圧政をする悪者となっていますが、両者の間にじっくり話し合われた痕跡が見当たらないままの筋運びが多いようです。なぜ多数派が少数派撲滅に乗り出すのか、少数派の何を多数派が恐れているのかなどはもう少し説明した方がいいように思います。

ヨボビッチ扮する抵抗組織の有能ヒット・ウーマン、ヴァイオレットが出て来る頃には抵抗組織が、多数派が持っている新型兵器を潰そうと画策しているところです。ちなみにヨボビッチの元の名前がヴァイオレットで、彼女が感染して平均的な人より強くなってしまったのでウルトラヴァイオレット。紫外線が見える女性とか、紫外線に強い女性とかいう意味ではありません。話を戻して、普通は兵器と聞くと品物と考えますが、ウルトラヴァイオレットの新兵器は生きている子供。爆弾か火器か何かの物体と思っていたヴァイオレット自身、「開けるな」と言われていたトランクを開けて、中に子供を発見した時はびっくり。潰す相手が子供だと知ってヴァイオレットはころっと寝返ってしまいます。母性本能とは程遠いアウトフィットで出て来るので、「こんなのあり?」と私は口をあんぐり。

ま、それは横に置いて、これまで攻めだったヴァイオレットが子供を護るお姉さんになってしまいます。彼女は両方から追いかけられることになります。あとはアクション三昧。

ヨボビッチのアクションSFが今一なのは、決め手になるスタイルができあがっていないからでしょう。本人はできる限りのシーンを自分で撮っていますし、アクション・コーディネーターがついて色々指導しているのだろうというのは垣間見ることができます。あとはブルース・リーや摩邪コングのような決めの型を作るだけ。「ヨボビッチやで〜」という特徴を出せば人に覚えられ、それを楽しみに見に来る人が出るでしょう。ストーリーは新味が無く、これを見なければ行けないというほどの説得力はありません。

SFというのは彼女に合いそうなジャンルなので、ここは1つ決まりのスタイル確立を目指して、もう1つ、2つ試してもいいかと思います。1番説得力があるのはの記憶が欠落していて自分が誰か、何をしてきたのかが分からないという表情をするシーン。フィフス・エレメントでもブルース・ウィリスの話す言葉が分からず戸惑った時の彼女がきれいでした。その場に合わない、その場に溶け込めないというシーンのある映画に出るといいかも知れません。

この後ご紹介するバイオハザードでではウルトラヴァイオレットよりは決まっているので、長い目で見ると彼女の選んだ路線は正しかったのかも知れません。このところややレベル・ダウンの様子が見えるヨボビッチですが、彼女のために脚本を考え撮影する監督がまた現われることを祈ります。

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