聖域の悪魔+再録
A5 P132 1100円 R18
スクアーロは目を閉じ、意識を集中させた。
無になれば、風と同化し、一粒の砂といえども見切ることができる。
スクアーロは風に意識を集中し、無心になりかけた瞬間に頭の中を違う考えがよぎった。
「ゔぉおおおおおおい!!」
スクアーロは剣を振り回した。頭の中に浮かんだXANXUSは、すぐに消えてしまった。
スクアーロは荒野で剣を振り回し続けた。
ボスのことを考えていたくなくて、ここでこうしているのに、気を抜くとボスのことばかり考えてしまう。
ボスは「出て行け」と言った。
「帰って来るな」とも言われた。
「てめえなんざ用なしだ」とも。
スクアーロも「出て行ってやる」と言った。
「もう帰らない」とも言った。
その時は本気だった。
けれど、1週間もたった今は気持が揺らいでいる。
任務で1週間以上ボスと会えないことなどよくあることだ。
別にめずらしいことではない。
スクアーロは一人きりで終業をして、疲れるとねぐらに戻って寝た。
野宿で良かったし、食べ物もそのへんにあるものを勝手にとって食べると言ったのに、ねぐらも食べ物も準備されていた。
ディーノに頼んだ「ボスですら絶対に見つけられない場所」がここらしい。
サン・サン・マルッツァ修道院。
ディーノがどういう理由を話したのか分からないが、スクアーロは荒野の中の小さな礼拝堂をねぐらとしてあてがわれ
食べ物もそこに届けられていた。
スクアーロとの連絡役のような男は、一日に何度かあらわれ、様子を聞いた。
他にも修業中のやつらがやってきて、スクアーロに頼みごとをしたりしてきた。
スクアーロもすることがないので、木を斬ってくれと言われたので、修業がてら山一つ全部斬ったりした。
自然相手に己を鍛えることができるが、ここには剣士はいないようだ。
最初は誰かと話をするのも嫌だったが、だんだん退屈になってきていた。
「昼食をお持ちしました」
食事係の修道士はまだ若そうなのに、フードをすっぼりかぶり、布の塊のようになっていた。
スクアーロも人に知られてはならないので、人の気配を感じるとフードをかぶり、いつもその姿を隠していた。
声も出さず、いつも礼だけ返して受け取った。これが潜入任務だと思えば簡単なものだ。
殺しのプロは存在や気配を消す事ができなければならない。
「東のサン・アンジェロの礼拝堂に面会の方がお見えです。まるで天使のような方です」
若い修道士は声を震わせた。
面会? 天使のような?
ディーノしか居場所を知らねえからディーノのことかあ。
こいつには天使みたいに見えるのかあ。
スクアーロは黙って礼をして、その礼拝堂に向かった。
質素で十字架があるだけのシンプルな礼拝堂だ。
礼拝堂にいたのは予想通りディーノだった。
光が金の髪にあたりきらきらして確かに天使に見えそうな容貌だった。
「スクアーロ!! 元気だったか?」
「跳ね馬あ!! 何の用だあ?」
「つれないなあ。どうしてるか様子を見に来ただけじゃないか」
ディーノがきらきらした笑顔を浮かべた。
礼拝堂の中なので、スクアーロもフードを外した。
「ここは俗世界から隔離されているから、さすがのヴァリアーもここにいるとは分からないようだ。いたいだけいればいい」
スクアーロの表情が動いたが、ディーノは何食わぬ顔で続けた。
「オレもここに越してこようかな」
突然スクアーロから誰にも見つけられないところに行きたいという連絡があった時はおどろいた。
どんな時でもXANXUSの側を離れようとしなかったのに、どういう心境の変化なのか。
三十路を越えてからスクアーロの美貌は磨きがかかり、色香も増し、くやしいけれどXANXUSとうまくいっているのは明らかだった。
もう入り込む隙などないとあきらめかけていたが、まだまだチャンスはありそうだ。
1週間たってもスクアーロは帰ると言わないのだ。
スクアーロはそっぽを向いたが、何も言わなかった。
ディーノは一刻も早く山積みになっている仕事を片づけてここに来ようと心の中で誓った。
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十年後ボス34とスク32。スク家出。
この話だけだと本文P23。
コピー本再録
ボスはそれを我慢できない(十年後) 本文P12
ヴァリアー慰安旅行(ボンゴレ式修学旅行ヴァリアー編)本文P12
XX (ボス誕生日・BLUEジャケット話・十年後)本文P12
未来から来た記憶 (継承式編)本文P12
九代目の息子とその部下と愛人 (十年後)本文P12
荊の檻(注・スクアーロ総受)(十年後ヴァリアー囚人話)本文P36
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うっかり極限に厚い本になってしまいました。
ページも値段も誤植じゃありません。汗。