第一章 ―出会い―

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「ここがムンカラマの町ね…ずいぶん陰気くさいところじゃない」

 故郷の村を出て数日。私とシャロルは目的地ムンカラマに到着した。
宿、教会など基本的な施設の他には小さな砦があるだけの、小さな田舎町だ。
 しかし、この町の外れの墓地には、魔道…魔界への穴が開いているという。
噂によると、帝国の王位継承に必要な「ジェルマの杖」を奪い去った悪魔が、最下層に潜んでいるとも。

「そんなこと言っちゃダメだよお姉。元々はきっと綺麗なところだったに違いないの。
 ただ、この町に開いてしまった魔道が、こんなに鬱蒼とさせちゃってるんだよ」

 シャロルが私をたしなめる。彼女は自分の使える僧侶の魔法で私を助けたいという理由で、旅に引っ付いてきてしまった。
私としては、妹には故郷の両親の傍にいてもらいたかった。
心優しい彼女が、冒険者だなんて野蛮な生活に耐えられるとは思わなかったからだ。
それに、たった二人だけの姉妹なのだ。その両方が魔道というまさに死に満ち溢れた領域に挑もうとするなんて、
残された両親にとっては身を裂かれるような苦痛に違いなかった。
 しかし、シャロルはこう言った。「ジェルマの杖」を取り戻した者は勇者の称号と貴族の地位を与えられる…
つまり、見事「ジェルマの杖」を取り返すことが出来れば、両親に貧しい暮らしをさせずにすむ。
私たちは全ての人間を等しく幸せにすることが出来る。そのためなら辛い冒険にも耐えられる…と。
 我ながら、立派過ぎる妹を持ってしまったものだ。

「ねね、お姉。私お腹減っちゃった。どこかでご飯食べようよ」

 釣られるように私のお腹がぐぐぅと鳴った。
そういえば、今朝方前の町を出てから何も食べていない。

「ほら、お姉もお腹減ってるんでしょ。早く行こう!」

「…ふぅ、しょうがないわね…わかったわ。行きましょ」

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