町に入った私たちの目に飛び込んできたものは、揃って鎧やら剣やらを身につけ、数人で町を歩いている冒険者たちだった。
安っぽい革鎧に明らかに量産品と見られる剣を提げている者もいれば、かなり高級そうな鎧を纏った者もいる。
「かなりの人が御触れを聞いて冒険にやってきたみたいね」
「ところでお姉、私はここに来る前から僧侶の勉強をしてて少しの魔法は使えるからいいけど、
お姉や、初めて冒険に出ようって人はどうするの? みんながなりたい職業になれるってわけじゃないでしょ?」
「まずはね、魔道に挑む前に、訓練場ってところに行って名前を登録しなきゃダメなんだって。
でないと例え杖を取り返したとしても、功績を認められないんだってさ。
職業の適性なんかは、登録時にテストを受けさせられて、その結果決められるらしいわね」
言って私は、ちょっとした人の列が続いている建物を指差した。
「きっとあれがそうよ。シャロル、ご飯より先に登録を済ませちゃっていい?」
「えぇ〜? …もう、お姉もしっかりと司祭様の話を聞いてれば、魔法のひとつくらい覚えたかもしれないのに」
「悪かったわね!」
私たちは、訓練場へと続く人の列の最後尾に並んだ。
建物から出てくる人々は皆安物の鎧やローブ、剣で武装していた。
どうやら登録時に必要最低限の装備は支給されるらしかった。
もっとも、どの職業にも適性の認められない者もいるらしく、
入っていったときと同じ姿で、がっくりと落ち込んで出てくる者も多かった。
私は、果たして適性を認められるのだろうか。
シャロルについては、僧侶の適性があると故郷ですでに認められているから何も心配はない。
しかし、私は妹とは違い、どちらかというと体を動かして何かをする方が得意だし、好きだった。
もしここでシャロルだけ冒険者として認められ、私だけが落ちたなんていったら、笑い話どころではないだろう。
そんなことを考え、やや不安になっていたときだった。
「冗談じゃないわ!!」
訓練場の方から、女性の甲高い怒鳴り声が響いた。
「この私が、よりにもよって盗賊にしか適性がないだなんて!!
仮にも私は帝国の貴族だったのよ!! そんな私にコソコソと魔物の身包みを剥ぐようなマネをしろって言うの!?」
「レ…エル、落ち着けよ。まだ適性が認められただけいいじゃないか。
しばらく成長したら好きな職業にクラスチェンジすればいいだけの話だろ?」
「じゃあ何!? それまで盗賊として私に生きろって言うの!?」
「盗賊って言っても、別に人様から物を盗んで生計を立てていくわけじゃないからいいじゃないか。
宝箱に仕掛けられたワナを外すことが出来るのは、盗賊以外には熟練した忍者くらいのもんなんだぜ?」
「まぁ、確かにガライよりは私の方が器用だって断言できるけどね」
「んなっ、何だとぉ!」
どうやら男と女の二人組らしかった。やはり私たちと同じように冒険者としての登録に訪れたようだ。
女性は身軽そうな革鎧に身を包み、腰から短めの片手剣を提げている。
話を聞く限り彼女は盗賊の適性しか認められなかったため、不本意ながらも盗賊になったらしい。
一方、男は女性よりもやや丈夫そうな革鎧に、やはり女性よりも長めの片手剣を背に負っている。
戦士の適性が認められたのだろう、と私は推測した。
「お姉だったらどうする?」
不意にシャロルが訊ねてきた。
「なりたい職業に適性がなかった、とかなったらさ? ううん、どの職業にも適性が認められなかったら…」
「…修行して出直すわ。適性が認められるまでね」
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