人生のメリーゴーランド
宮崎駿監督の最新作「ハウルの動く城」のメインテーマ「人生のメリーゴーランド」が演奏された、ワルツのリズムが全体を通して基調となっていて、どこかバレエの演出曲の様な、レトロでいかにも久石メロディーという雰囲気の漂う一曲である。アレンジはコンサートのために書き下ろされたもので、同じ旋律を多用しながらも、編曲によって、その印象を大きく変える演奏であった。キーも違えばテンポも様々に変化する・・・まさに人生の様な曲だ。人生はメリーゴーランドの様に楽しい事ばかりではない。メリ
ーゴーランドは遊園地の象徴。止まらない、周り続ける・・・。永遠に受け継がれる生命の鼓動を表しているのかもしれない。
Ikaros
東ハト「キャラメルコーン」のCM曲として作曲された曲が演奏された。Ikarosを名づけられていた。ギリシャ神話の神の名前だっただろうか。そのイメージとは違い、とても明るい曲に仕上がっていた。コミカルなゲームのおまけコーナに出てきそうな楽しいメロディー。分数も長めで、CMの軽いポップなイメージが、さらにしっかりし、内容の濃いものになったという印象の演奏だった。きっと楽しい神様なのだろう、Ikarosは・・・。
Spring
ご存知「進研ゼミ」のCM曲として作られたこの曲は、Summerを意識して作られたと本人が公言しているという話題も出ているが、本当にその通りで、出だしのフレーズはSummerの旋律を音符を上下に移動(間隔・リズムは全く同じ)すると出来てしまう曲になっている。久石さんの曲でこのような兄弟曲として作られた曲は多いが、Summerのような明るい曲にも進出か?!という感じだ。春はいつも、甘酸っぱい花の香りがする・・・。
Fragile Dream
この曲は、CM等のタイアップは無く、アルバムのために書き下ろされた新曲だと思われる。今までの明るい曲想とは、ちょっと形相を変え、切ないメロディーが主体の楽曲になっていた。久石さんの持ち味であるストレートに伝わってくるメッセージ性のあるメロディーがふんだんに使われ、とても期待できる一曲だ。
Oriental Wind
サントリー「伊右衛門」のCM曲としてもうすっかりお馴染みになったこの曲。コンサートアレンジでは、CMバージョンとは趣を変え、タタッタタ、タタッタタ、タタタタという世界美術館紀行のテーマにも似たリズムを基調にアレンジされ、スピード感あふれるものとなっていた。いつもCMなので同じところで切れてしまう、30秒のその先は!というもどかしさが、開放された瞬間だった。(笑)フルコーラスを聴いて、さらにこの曲が好きになった。流石は久石さん、やるじゃん!(いや実際は「やるやん!」)
ここで2回目の久石さんのMCとなった。
「後半一曲目に聴いていただいたのは、宮崎駿監督の最新作「ハウルの動く城」のテーマ曲です。この曲名は宮崎さんが付けたものです。人生のメリーゴーランド・・・実はあまり気に入っていません(爆)人生のって、なんだか人生の酒場とか、ほら演歌にあるじゃないですか・・あ、いや別に演歌が悪いって言っているんじゃないですよ!(笑)宮崎さんから沢山ファックスやメモ用紙が届きまして、その中に「人生のメリーゴ
ーランド」「人生はメリーゴーランド」と「の」「は」で何回も書き直しがしてあったりして、相当悩まれていたんだなということが伺えました。そのメモ用紙には最終的に「の」が書かれていて、そうだ、監督はいつも重要なものには、「の」をつけるんだ。「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」とか「となりのトトロ」だぞとか(笑)、「もののけ姫」なんか2つもついちゃっていますし(爆)」
会場は爆笑の渦だった。
「人生のメリーゴーランドはそれだけ重要で大切なものだと監督は考えてくれているのかと思いました。後日、監督にお会いする時がありまして、監督に「人生のメリーゴ
ーランド」良いですね。って言ったら「え?人生は・・じゃなかった?」・・・僕の考えすぎでした(爆)」
宮崎監督の最新作「ハウルの動く城」から人生のメリーゴーランドを聞いていただきましたが、この時期、組曲という形でコンサートではお届けできるのが本来の形なんですが、今回のハウルの動く城、30曲、曲を書いたんですが、そのうち17曲がこの人生のメリーゴーランドの旋律のバリエーションになっているんです。これは宮崎さんの要望でそうなったんですが、作曲家としてはかなりの力量を求められる手法なんですね。いろいろなシチュエーションに耐えられるものを、一つのメロディーで書き上げなければならない・・。なので、組曲という形ではなく、メインテーマの演奏という形でお届けしました。もう一曲、ちがう旋律の「Cave
of Mind」という曲があるんですが、トランペットとオーケストラのために書いた曲で、今日は、それをチェロのためにということで、演奏したいと思います。
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