3-1 気付けば、月日は少し流れ、受験生は最後の追いこみの時期だった。
「真子ー」
真子は廊下を駆け抜けて来たあやかを受けとめ、危うく尻餅をつきそうになった。
「クリスマス会しよ、クリスマス会ー。明日ね」
はいはい。とあやかをなだめながら、ガラスの向こうの青い空を見た。
「……あやか。椎名は?」
「呼ぶわよ。不本意ながら。真子が仲間はずれにするなってうるさいし」
「なんか俺ってかわいそうだな」
あやかのスピードについて来れなかったのか、椎名が遅れて登場した。
「かわいそうじゃないわよ、全然。呼んであげただけでも幸せに思いなさい」
はいはい。と椎名が言った。真子は可笑しくて吹き出しそうになるのを堪えた。
再びガラスを隔てた空を見て、一つ息を吐いた。
「……一輝、あっという間に転校してったな」
「?椎名ぁ?」
「俺んとこにもよく来たからな。お前のことで。あいつはおせっかいなんだか、なんなんだか」
「ええ?なになに??」
一人事情を飲み込めないあやかを置いておいて、椎名がその名前を口にするのは不思議だった。
日比野一輝は、さすらいの転校生なんだと言っていた。
サンタクロースはみんなに平等に幸せを贈りますからって笑ってた。
「好きだったの?」
「そうだなー、微妙だなー」
好きだったけど、でも。
「なんせサンタクロースだからなあ」
はあ?と二人が同時に返したのが可笑しくて、真子はあははと笑った。
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