+サンタに花束を+ ++TOP

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 気付けば、月日は少し流れ、受験生は最後の追いこみの時期だった。
「真子ー」
 真子は廊下を駆け抜けて来たあやかを受けとめ、危うく尻餅をつきそうになった。
「クリスマス会しよ、クリスマス会ー。明日ね」
 はいはい。とあやかをなだめながら、ガラスの向こうの青い空を見た。
「……あやか。椎名は?」
「呼ぶわよ。不本意ながら。真子が仲間はずれにするなってうるさいし」

「なんか俺ってかわいそうだな」
 あやかのスピードについて来れなかったのか、椎名が遅れて登場した。
「かわいそうじゃないわよ、全然。呼んであげただけでも幸せに思いなさい」
 はいはい。と椎名が言った。真子は可笑しくて吹き出しそうになるのを堪えた。
 再びガラスを隔てた空を見て、一つ息を吐いた。

「……一輝、あっという間に転校してったな」
「?椎名ぁ?」
「俺んとこにもよく来たからな。お前のことで。あいつはおせっかいなんだか、なんなんだか」
「ええ?なになに??」
 一人事情を飲み込めないあやかを置いておいて、椎名がその名前を口にするのは不思議だった。

 日比野一輝は、さすらいの転校生なんだと言っていた。
 サンタクロースはみんなに平等に幸せを贈りますからって笑ってた。

「好きだったの?」
「そうだなー、微妙だなー」
 好きだったけど、でも。
「なんせサンタクロースだからなあ」

 はあ?と二人が同時に返したのが可笑しくて、真子はあははと笑った。

 
 
 初冬の澄み切った青空を、サンタもどこかで見ているのだろうか。
 一生に一度の一回かもしれないクリスマスをどこかで迎えるのだろうか。
 願わくば、クリスマスはサンタにも平等な幸せをプレゼントをしますように。
 どこかの街で、幸せでありますように。
 

 

 

 

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