「あたし、あやかを裏切ったの。 三人でいつも一緒だったでしょ?でも気付いちゃったから」
「先輩のはあれでしょ、先手を打った、ってことでしょ」
「早い者勝ちって言うなら、それはあやかの方が勝ちだよ。あたしは横入り」 テーブルに一輝が注文した特大パフェが二つ。
一つは真子の分で、もう一つは彼の分だった。
ま、いいんだけどね、別に。彼ならパフェでもなんでも許せる気がした。
「日比野くんって彼女いるでしょ」
「……なんでですか?」
「女の子の扱い方が上手だから。残念だな。好みなのに」
「あはは、どうもです」
否定しない彼はいいと思う。
「でも、今日ぐらい、彼氏にフラレて傷心でいる女の子を一人にしないでね」
「ラジャ、です」
とろけるような甘いパフェはあなたがあたしにくれたプレゼント。
「頑張って、サンタさんになるんだよ」
「先輩も、幸せになってください」
にこーとあの笑顔で見つめられたら、涙が止まらなくなった。
「いいの。椎名はあやかにあげるんだ。一生に一度の一回ぐらい、あたしだってサンタになってもいい」
クリスマスにはまだ日があるけれど。
涙がしょっぱいんだか、パフェが甘いんだか。途中で分らなくなった。
「先輩は幸せになります。一生に一度の一回だけかもしれない、それくらい貴重なんだから」
サンタ志望が言うならそうかもしれない。
「ありがと」
負けじとにこーと笑ってやった。
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