+どこに転んでも幸せな夜+
読まれる前に。 5万打で人気投票だ、の救済企画です。 *おはなし*の、一部の作品を読んでないと、面白くない、ということになるかもしれません。 うらばなしにヒントを書きましたので、最後まで読んで分からなかった方は参考にしてください(ネタバレありなので) |
1 そのお店の看板は、淡く控えめに灯っていた。 (ここで、間違いない) そう、ハガキに記された略地図と何度もにらめっこをして、確信した。 「わ、よかった。仲間がいた」 予告もなく背後から声がして、二の腕が捕まった。 「あ……」 「矢野さんと安藤、ただいま到着しました!遅刻して、ごめんなさい」 けして、大声を張り上げたわけではなかったのに。 とりあえず、安藤が深々と頭を下げたので、私も横で慌ててそれにならった。 |
「安藤、まさかそれ制服じゃないよなー?お前、10年経ってもまったく変わりねえのなー」 と、すでに悪酔いしているらしい冗談が届く。 心は恐ろしく同調したが、とても礼儀に欠ける発言に、不愉快になる。 案の定、そんなことを言ってゲラゲラと下品な笑い方をする元クラスメイトを見ても、名前も出てこなかったりする。 けれど、安藤は特に気にした様子も見せずに、10年前と全然変わらない笑顔になった。 「久しぶり」 と、当たり前のように輪の中に入っていく。 彼の、変わらない、しなやかな柔らかさが、羨ましかった。 なんとなく、私は自分の足元を再確認した。 とは言え、ここまで来ておいて帰ってしまうわけにもいかない。 「矢野さんは、最近どうしてたの?」 しばらくは懐かしい顔に、近況報告を言ったり聞いたりして。世間話をして。 私は笑う。ええっとねー、と何年もの月日を30秒ほどのスピーチにまとめる。 そんな27歳の夜。 |
……次の展開がばればれーな気もしますが、しばらくお付き合いください。 |