私の主張  平成十八年一月十二日更新 (これまでの分は最下段)    「契冲」のホ-ムペ-ジに戻る

申申閣代表  市川 浩

 

正統國語ソフト「契冲」

正字・正かな發信のために

「國語國字」第百八十四號(平成十七年十月十日)

 

パソコンで文章を作成するには、最初キーボードで「わがはいはねこである」と一旦平假名の文字列を打込み、これを「吾輩は猫である」といふ目的の漢字假名交り文に變換するわけですが、これを實行するには語彙を蓄へる辭書機能とこれを利用して最初の假名文字列を解讀して適當な漢字語彙を探し當てる文法機能とを備へたコンピューターソフトが必要です。ここで一般の文法機能は主として、現代假名遣、常用漢字を基礎としてゐるため、文語文法竝びにこれを繼承する正統口語文法を取扱ふことができません。

私はこの問題を解決すべく既存の日本語變換ソフト「松茸」(滑ヌ理工學研究所)に新しい文法機能とこれに對應する語彙辭書とを連動させたパソコンソフト「契冲」を開發(特許第二八一〇八八〇號)、初めて世に出してから十二年、改善を重ねてきました。

具體的にどんなことが問題なのでせうか、「契冲」での解決策と併せて以下に御説明致しませう。

 

○「ゐ」、「ゑ」が入力文字として使へること

通常のキーボードには「ゐ、ゑ」のキーが無く、ローマ字方式で「WI、WE」と打込んでも「うぃ、うぇ」となるだけで「用ゐる、据ゑる」などは變換以前に「もちゐる、すゑる」と平假名文字列に打出すこと自體が不可能です*。「契冲」では「松茸」のローマ字割當てを活用し「WI、WE」で「ゐ、ゑ」が得られます。

○文語特有の用言の活用に對應ができること

一般のパソコンソフトでは二段活用には對應してゐませんので、「くれなゐもゆる」から「紅燃ゆる」といつた文に變換できません*。「契冲」の文法機能は二段活用の他、ナ變、ラ變、さらには助動詞などを含む文語特有の用言の活用にも對應してゐます。

○歴史的假名遣に不馴れでも正しく使へること

歴史的假名遣を目にする機會も稀な昨今、馴染が薄いのは當然です。「契冲」では學習支援版を用意し、このモードに切換へるだけで、假に誤つて「かんがえる」と打込んでも「考へる」と正しく變換します。また「葵」の假名遣が知りたい場合、「あおい」から變換すると、「葵、青い、青井」と共に「あふひ」も候補に表示します。さらに「急」の字音の場合、「きゅう」と打込んで「單漢字變換」のキーを押すと「急・きふ」も表示されます。

○正漢字と常用漢字の混淆が防げること

常用漢字の字體は略體の採用だけでなく、「舍」を「舎」とするなど意味の無い字形改變が至る所で行はれ、專門家以外殆ど通曉できず、JISでもそのすべてには對應してゐません。「契冲」には完全な正漢字フォント「文字鏡契冲」を表示及び印字用に添附してあります。

また常用漢字の弊害である「同音の漢字の書換へ」や「交ぜ書き」を拒否し、「日食、改ざん」などを「日蝕、改竄」と正規の表記を可能にしてゐます。

○同音異義語の書分けができること

これは文語に限らず、日常でも誤變換による誤植をよく目にする問題です。一つの解決策は、「契冲」では字音假名遣で打込まれたものも變換できることです。同じ「こうい」でも「厚意」は「こうい」のままですが、「好意、更衣」は「かうい」、「行爲」は「かうゐ」、「皇位、皇威」は「くわうゐ」と打分けることで變換效率を高めることができます。

 

以上正統國語ソフト「契冲」の概要を述べましたが、飜つて本會は昨年の秋設立四十五周年を迎へるに當り、正假名遣・正漢字の復活と普及を初めて會則第一條に明記して、國語を通して我が國文化の發展を目指す運動體であると内外に闡明しました。

しかしその實現には立ちはだかる牆壁もなほ高く、正假名遣・正漢字での出版一つをとつてもなかなか困難で、現代假名遣を批判する論文を現代假名遣で書かざるを得ない状態も未だ續いてゐます。しかし現在私たちは幸ひにもパソコン印刷やインターネット通信といつた有力な發信手段を手にしてゐます。このやうな追ひ風の中で正假名遣・正漢字の文書制作に「契冲」が御役に立てるのは洵に嬉しい限りであります。

 

 

 

*勿論一旦「用いる」、「燃える」と確定した上で、「い」を「ゐ」、「え」を「ゆ」に置替へれば結果としては可能となります。この場合「ゐ、ゑ」はJISコードで打込むことになります。

 

「契冲」の御申込は 「契冲」の御購入方法 御參照下さい

 

(平成十八年一月十二日架網)

 

市 川   

昭和六年生れ

平成五年 有限會社申申閣設立。

正假名遣對應日本語IME「契冲」を開發。

國語問題協議會常任理事、文語の苑幹事、契冲研究會理事。

 

これまでの私の主張(ホームページ掲載分)日附降順

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朱鷺、信天翁、歴史的假名遣

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パソコン歴史的假名遣で甦れ!言靈 (『致知』平成十六年三月號(通卷三四四號))

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