*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【研修発表への準備?(その2)】

 前号で,ブロック研修会での発表について,発表事例の案を想定しました。その後の定例会議で,廃案になりました。実のところは,協議の中に提案することを思い止まりました。別のテーマについて発表することにしたためです。


 社会教育関係団体等連絡会議では,もう一つのテーマが動いていました。平成15年まで小学校・中学校・高等学校の連携による「花いっぱい活動」が,3年間の研究事業として実施されました。ところが,その活動は事業期間が終わると同時にあっさりと消えていきました。指定研究の通例です。せっかく盛り上がった機運を持続しようという働きかけはどこからも出てきません。そこで,8月に開催している連絡会議の席で,社会教育委員から各団体に投げかけてみることを考えました。
 各団体はそれぞれの活動をしていますが,奉仕的に「美化活動」をしています。それが主として清掃活動に止まっています。清掃は汚れたところをきれいにすることであり,マイナスをゼロに戻す活動です。美化活動と銘打つ以上,ゼロからプラスに美しくすることでなければなりません。例えば,花いっぱいにするといったことです。そこで,清掃をした後に,花を植えるといった所まで手を掛けませんかという提案を始めたのが,平成16年でした。

 ○平成16年度夏季連絡会議での提案骨子
 町に一つの運動を巻き起こすためにメンバーの皆様のご尽力をお願いすることにしました。それぞれの団体が共通の活動に取り組むことが社会的な力になるからです。その取組方としては,新しいことを始めるのではなく,実践されている活動に追加修正を加える方法で行うことが現実的です。その一つの活動として,各団体によって行われている美化活動が清掃に止まっているので,花いっぱいの美化活動にまで進めてはいただけないかと提案しました。具体的な作業等は17年度事業として各団体独自で立案をしていただければと投げかけました。
   ・キーワード:「○○町花いっぱい運動」
 なお,折しも,来年2005年は国連総会決議による"持続可能な開発のための教育"が始まりました。大きな流れを小さな町に移植することを引き受けるのも,社会教育関係団体の役目ではないかという考えも伝えました。

 このような委員からの提案に対して,団体からの反応は消極的なものでした。この提案には何の予算的な裏付けもないので,団体の中で予算化は困難である,花の水やりなどの手間暇が取れないといった意見に終始しました。突然の提案であり即答は期待しませんでしたが,団体にとって余計な活動を受け入れる余地は考えてもらえませんでした。

 ○平成18年夏季連絡会議での提案骨子
 孟宗竹の節を利用した花鉢を委員が事前に見本として56本手作りし,席上で提示しながら提案しました。各団体代表の皆様方に持ち帰って頂き,各自の家で道路に向けて飾ってくださるようにお願いしました。もし賛同できるようでしたら,各自同じものを作成して団体が日頃活動する場所に増やしてもらえればと期待も表明しておきました。
 【会長としてのコメント】
 「まちづくりは,みんなが「わざわざ」することによって可能になります。「もったいない」という言葉が国際的になろうとしていますが,もったいないはどちらかといえば「守り」の言葉です。わが町では「わざわざ」という言葉を再生してはという提案です。前向きに行動することになるからです。しなくてもいいこと,する責任のないことをわざわざするから,喜ばれます。その総体がまちづくりだと思います。皆さんが一歩進んだ美化活動に取り組もうというご了解を感謝いたします」。

 一団体より,賛同する声が上がりましたが,花の植え替えについての質問も出ました。それに対しては,行政の他課で花の苗を季節ごとに町内各自治区に配るという事業を行っているので,社会教育課に申し込みしていただければ分けてあげられると伝えておきました。実際には,その申し出は1団体だけに終わりました。

 ○平成19年夏季連絡会議での提案骨子
 予算やかなりの手間暇を必要とする活動の要請は困難であると判断し,一つ後退した提案をすることにしました。それは,町内には,個人的に町を少しでも美しくできたらとさりげなく気遣いをしていただいている方がおられます。そのような家や場所を見つけてもらう活動を提案することにしました。名付けて「ディスカバーほっとin○○○」です。ほっとするような街角を見つけて,各団体より推薦してもらおうという活動です。その写真を,文化祭などのイベント会場で展示して,皆さんに見ていただく機会を設けるという地味な活動です。写真を撮ってくればいいので,いつでも誰でもできるはずです。
 この活動は提案ではなく,こうすると決めて協力をお願いするという形式にしました。事務的に進めることで,巻き込んでいった方が早いという判断をしたからです。町内の美しいところを発見するという活動に誘うことで,町内を意識して見回る目を持っていただくことがねらいです。ともすれば,見逃してしまう温かい善意を,皆できちんと見て認め合うという雰囲気が生まれることを期待しています。


 以上のような連絡会議での社会教育委員からの提案の経過を,事例発表することになりました。そこには,成果と言えるようなものは見あたりません。委員がまちづくりに向けて各団体にどのように働きかけを行ってきたかという足跡だけです。社会教育関係団体と社会教育委員との接点を,連絡会議という形で持ち合わせているという事例に過ぎません。システムの事例としての意味づけを主テーマにした発表になるはずです。
 この提案には,一人の委員に終始中心になって取り組んでもらいました。その委員に発表の機会を持ってもらうことも,この発表テーマに決めた大きな要因です。

 なお,前号で想定していた12基礎力についての選定については,教育委員会への提言としてまとめていくことにしました。実は,12月には教育委員と社会教育委員の合同会議が定例として開催されています。その会議で,正式に提案していく予定です。どのような提案ができるか,別稿でご紹介しておきます。

(2007年09月10日)