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1999年7月の感想

ちょこっとした感想を「日記のフリ」のほうに書くこともあるので、そちらもどうぞ

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つきのふね(森絵都) (7/1)
謎のギャラリー特別室V(北村薫編)(7/2)
神様のボート(江國香織) (7/22)
そして二人だけになった(森博嗣) (7/29)

森絵都『つきのふね』講談社 1998

*感想
あまりピンとこないまま進んだのに、読み終えてみると悪くないな、という感じ。いまいちノれなかったくせに、人にすすめてみたくなる、この気持ちはなんだろう。

彼らが思ったことや語った言葉を追っていくのに、かなり神経がいる。この物語は読みやすいけど甘くはない、ということ。

すでにこれを読んだ人たちは、どういうところにじんとしたんだろう、と考えてみるのは面白い。じんとするであろうエッセンスがちりばめられていると思うので、あとはその人のツボ次第?

ちなみに私の場合(以下、ネタバレします)、ドラッグしてみてください。

ここから→店長からさくらへのバレッタ贈呈(pp.164-166) 「言われてみると、これがずっとほしかったような・・・・・・」

「でも、あたしたちはきたよ」(p.220)

最後、バレッタ→月の船(p.224) 、そして、手紙(やられたわっ)(pp.225-226)

1999/7/1


北村薫編『謎のギャラリー特別室V』(マガジンハウス) 1999

*収録作品
宇野千代「大人の童話」/乙一「夏と花火と私の死体」/ジェイムス・B・ヘンドリクス 桂英二訳「定期巡視」/古銭信二「猫じゃ猫じゃ」/シャーリー・ジャクスン 大山功訳「これが人生だ」

*感想
「大人の童話」の、おしりがむずむずするような居心地の悪さはすごい。「夏と花火と私の死体」における、「誰に語らせるか」、これは斬新。「定期巡視」は、まあそれなりに。「猫じゃ猫じゃ」は、笑える悲劇、あるいは、笑えない喜劇。「これが人生だ」、そうよ人生なんて。あまり新鮮さはないのだけど。

アンソロジーには、その人の好みがすごく出て、全体に通じるなにかが見えそうな気がする。ただ、それが何なのかを指摘するのは難しいし、指摘する気はない。北村薫には、まだ(あえてこう言う)思い入れがないし。しかし、「特別室」が4冊も出てしまった現在、さすがに飽きてきたなあという感じ。好みが出ている=テイストがあるというわけで、その味に飽きてしまったのだ。物語をおさめた「特別室」よりも、古今東西の埋もれた物語を縦横無尽に語る『謎のギャラリー』のほうが楽しいな。入手の難しい面白い話を次から次へ語られ、私は指をくわえておあずけ状態。手に入れられないから読みたくなる、それは正しい。読んでみてどうかは、また別の問題にして。

1999/7/2


江國香織『神様のボート』新潮社 1999

*感想
自分が知っている人ならば、たとえ人込みにまぎれていたとしても、そこだけが「パッ」と浮きでて見えるように思う。顔が髪が身体が、あるいはその人のまとう雰囲気さえもが、私にとって意味のあるものとして映る。その人を思う気持ちが強ければ強いほど、目で見えるものじゃなくても感じられるんだろうと思う。足音などは、そうじゃないか? つきつめてしまえば、その人がいることによる空気の感じで、もうわかってしまうというような。

そんなことを思い出させてくれた場面が、とても好き。それまでは、ずっと静止画に思えてた物語に、スローモーションの動きがあらわれたような気持ちだった。うつくしくってじんとした。

馴染まない、馴染む、浮かない、浮く。

「旅がらす親子」をみていて、『落下する夕方』の華子を思い出していた。やはりどちらの場合も、「定着してしまう自分」を恐れて、それぞれの行動に出たのだと思っている。

見つけてくれると信じているくせに、「保険」をかけずにはいられなかったんだろうか。あるいは、早く見つけて欲しい、と。なるべく、相手から見つけられるように、自分を馴染ませないでいようと?

とても淡々としている描写が多いけれど、ときどき「あそこではこう言っていた関係か」とか「これはこういう意味なのかな」など、線を引きながら分析めいて読んでみたくなった。感覚だけに頼って書いているとは思わなくて、逆に、すごく考えて書いたんだろうな、と感じた。

こういうつかみどころのない物語ほど、私は「つかみどころのある」感想を書きたいと思う。でも、やっぱりそれはすごく難しいし、具体的なことを書けば書くほど、やぼになってく自分を発見しそうなので、やめておこう、と思う。

1999/7/22


森博嗣『そして二人だけになった』新潮社 1999

*内容紹介(表紙折り返しより)
巨大な海峡大橋を支える<アンカレイジ>内部に造られた建物に集まった男女六名。海水に囲まれ完全な密室となったこの部屋の中で、次々と殺人が起きる。最後に残ったのは、盲目の天才科学者とアシスタントの二人。この密室でいったい何が起きたのか? そして、二人を待ち受けているのは----。

*感想
構造というのか、構成というのか、仕掛けというのか…。うまいと思う。「本格」と思わせておいて、ひょいとかわされたような? あるいは、それだけでも充分いいと思う服の上に、重ね着をして、それが決まった感じとでも言うのか。この転換?/重ね?の感じが、ブランドの「ジェミニー・クリケット事件」に似ていると思ったんだけど、どうだろう。

うーん、悪くないな〜。

1999/7/29


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