カクテルを観る

映画の中のカクテル USING COCKTAIL IN MOVIE

映画を観て酔う夜 カクテル一杯で人生を語る

映画の中に登場するカクテルは、しばしば小道具として使われるが、その魅力はロマンチックでありながら主人公の性格や感情までも表現するところある。多くのエピソードが含まれ、どのカクテルを選ぶかで意味や感情をも語ってくる。映画の中で飲んでいる主人公らの姿は、大人の魅力と雰囲気を演出し、心奪われてしまう。そんな心に残る映画を思い出しながら、また鑑賞しながら味わってみるカクテルは、まるで映画の中のヒーロー、ヒロインになったような気分になってしまうことだろう。

COCKTAIL カクテル

カクテルに夢をもシェークした、魅力あふれるロマンチック・ストーリー

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トム・クルーズが演ずる、ブライアンは兵役を終えて就職活動を行うが、学歴に問題があってどこも雇ってくれない。そんな時ふと立ち止まったカクテル・バーの求人広告を見かけてアルバイトをすることになるブライアンは、朝から卵を入れたレッド・アイを飲む、オーナーのダグ(ブライアン・ブラウン)からカクテルのテクニックを教わる。マティーニジン・トニックキューバ・リバーヴェルヴェット・ハンマーなど注文が殺到するカウンターの中で、ブライアントダグのコンビ・プレイは圧巻である。次第にカクテルの魅力に引きつけられていくブライアンとダグの間に友情が芽生えてくるが女性のことで大喧嘩をしてしまい仲がこじれてしまう。2年後、ブライアンは自分の店を出したいと開店資金を貯めにジャマイカでピーチ・バーを開く。ジャマイカ特産のラムを使いフローズン・ダイキリを作るシーンではブレンダーの音が響き、都会のバーとはまったく違う雰囲気を醸し出している。南国の青い海と白い砂浜、ヤシの木にレゲエのリズムが心地よく合いビーチ・バーは大盛況。そんな優雅なジャマイカで、ブライアンはニューヨークからバカンスに来たジョーダン(エリザベス・シュー)と恋に落ちる。映画「カクテル」は生き生きと情熱あふれたバーテンダーを描き、主人公ブライアン自身も成長してゆく。後に念願叶って自分の店をジョーダンと開く。“カクテルズ・アンド・ドリーム”という店名はブライアン自身の人生と思い出、未来にに向けて出発していき、希望を与えてくれる。家族、友人、恋人には素晴らしくエッセンスの効いたカクテルと夢を与えてくれる。この映画では全部で約30種類ものカクテル名が出てくるが、まさにタイトルどおりカクテルの映画といえる秀作。

セクシー・カクテル

SATURDAY NIGHT FEVER サタデー・ナイト・フィーバー

ビー・ジーズのリズミカルなサウンドに乗せて味わうカクテル

ビー・ジーズの軽快でダンサブルなリズムに合わせて繰り広げられるディスコ・ブームを描いたジョン・トラボルタ主演の'70年代の名作。トラボルタ演じるトニー・マネロはディスコでで自信たっぷりにダンサーになりきり、一躍スターダムにのし上がる。そのセクシーでキレのよい踊りは女の子たちの憧れとなりヒーロー的存在になる。彼がそこのクラブでしばしばオーダーする“セブン・セブン”とは、アメリカン・ウイスキーの銘柄シーグラム・セブン・クラウンと炭酸飲料セブン・アップを半分ずつで作った、いわばウイスキー・ソーダのようなもの。王者の印とされる“7”をダブルでかけたカクテルのことでダンスの王者にふさわしい飲み物で、渇いた喉に刺激的な一杯である。華やかな夜の世界には魅惑的なカクテルは欠かせないもので、またそこに流れる音楽というものも、よりいっそうロマンチックな酔いに誘われる。ビー・ジーズの名曲「ステイン・アライブ」「愛はきらめきの中に」「恋のナイト・フィーバー」「ジャイヴ・トーキン」などが映画の中で非常に効果的に流れ、週末の夜の華やかな舞台を演出してゆく。世界中に“フィーバー・ブーム”を巻き起こした映画『サタデー・ナイト・フィーバー』では、酒と音楽を楽しむ空間をお洒落に演出してくれ、週末の土曜日、都会の世界へと引き込まれていく。"78年度グラミー賞を受賞している。 satuday_night.jpg

AROUND THE WORLD IN 80 DAYS 80日間世界一周

世界を旅する“アラウンド・ザ・ワールド”壮大な夢を感じるカクテル

around_the_world.jpg 1872年ロンドン。社会改良クラブで主人公のフォグ(デヴィット・ニーブン)は、仕事があるのかないのか見当がつかない日々を送っていた。その夜、社交クラブのメンバー達とポーカーをしている時に3ヵ月で世界一周を出来るというメンバーに対して几帳面なフォグは80日で出来ると言い張ってしまう。「約束の日までに戻ってきたら賞金2万ドル」という条件につられてフォグは新しく雇った執事のパスパドゥ(カンティフラス)と共に翌朝出発する。大勢の人々から見送られパリから気球に乗って旅立つ。アルプス山脈にさしかかり、山頂に積もる雪でシャンパンを冷やし乾杯するフォグとパスパドゥの旅が始まる。スペイン、スエズ運河、インドと順調に進んでいく中で様々な国の文化を知り、たくさんの人々と出会い、いくつもの体験していく2人。汽船に汽車、ゾウやトロッコまで乗り継ぎ、ついには上海から鎌倉にまで到着する。サンフランシスコ、ロッキー山脈、ニューヨークへと次々に渡り、後は大西洋を越えるだけという時に約束の時間をすでにオーバーしてることに気付き焦るパスパドゥ。しかし、日付変更線を越えた時点であと1日残ってるいることがわかり、ぎりぎり14秒前に無事たどり着くことができる。ヴィクター・ヤングの名曲に乗せて世界をかけめぐる80日間はなんとも素晴らしい旅行となっており、体験してみたくなる。そんな感動を味わえるカクテルがある。世界一周航路開航の際のカクテル・コンクールの優勝作品でもある“アラウンド・ザ・ワールド”というジン・ベースのカクテルは、この映画の世界のように夢と冒険にあふれ、壮大な味わいを醸し、口に含んだ瞬間、心が温まり、思いが湧き、世界が広がっていくような仕上がりである。この映画は、まるで自らも一緒に世界を駆けめぐっているような気分になる豪華絢爛な映画である。アカデミー賞作品賞をはじめ5部門を受賞。