Nゲージ蒸気機関車>蒸機の紹介>C56
C56 |
C56 1982年 |
1980年代に発売された古い模型ですが、当時のコアレスモーターをボイラーに内蔵しており、よいプロポーションを持っています。途中でモーターが調達できなくなったのか、後の再生産品ではモーターとギヤが抜かれたダミーとなっているものがありました。ギヤ類は特殊なものですから、他の機関車のギヤを転用させて走らせるのも難しいようです。
中村精密のテンダードライブ蒸機は見かけによらず結構よく走るものが多いのですが、C56は不調をきたすことも多かったようです。「中村精密は走らない」という人に話を聞くと、この機関車に行き着くことがあります。
原因のひとつはテンダーに使用されている車輪にあるようです。ピボット軸やドローバーの集電機構はきちんとできているのですが、集電性能が良くありません。
すべての集電ブラシ、接点を清掃し、完璧な状態なのに動きが悪いときは、次のように対策しました。
(1)テンダーの3軸が平行になっていないことがあります。
集電がうまくいかないので、台車枠の取り付け方を工夫して調整します。
(2)集電箇所を増やしてみます。
テンダー車軸からも集電してみるのが簡単そうでした。
(3)車輪を交換してみます。
最初から付いている車輪は集電性能がよくないようです。上の写真ではGMの客車の車輪に交換しただけですが、見違えるほど性能がよくなりました。
C56 1999年 |
C56 1999年 |
中村精密に遅れること16年、1999年の夏に発売されました。テンダーモーターのためキャブ内がすっきりとした空間になっており、シャフトが貫通しているにも関わらず、他の製品よりもリアルに見えるのが特徴です。
この製品にはキットと完成品がありましたが、車体の主要部分の多くにロストが多用されており、ワールド工芸製品とはかなり違った作りになっていました。フロントデッキ周りはそのまま一体のロストです。ボイラーもロストで逆転機レバーも一体になっています。キャブ下のディテールもまとめてロストです。
基本的な形もよく、説明書どおりに作るだけでかなりのディテールとなります。
下廻りの作成は調整が難しく、なかなかうまく走らないかもしれませんが、部品を傷めないように根気よく作ることが必要です。テンダーから伸びるシャフトはシリコンチューブを介して機関車に結ばれますが、長さの調整が大切です。平地でウォームの前後に0.5mmずつくらいのアソビがあるように作ることが大切で(説明書にあります)、これを怠ると坂道にさしかかる前後などで動きが悪くなります。ちゃんと組み上がれば、結構スローも効いて安定して走ります。
テンダーの底板はプリント基板になっており、車軸の集電板から集電してエンジン側に通電させています。 | |
テンダー内にモーターを収め、シリコンチューブで機関部を駆動しています。 |
乗工社はこのあと廃業してしまいましたが、幸いC56は完成品がIMONに引き継がれ、コアレスモーター仕様となってしばらくの間発売されました。
これを持っている方はほとんど手放さないのではないかと思います。私は中古で売られているのも一度しか見たことがありません。
A6301 C56 92 2000年 |
A6301 |
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A6302 C56 125 2000年 |
A6302 |
乗工社の半年後、2000年1月頃に発売されました。
92号機・125号機が発売されましたが、一風変わった外観で、モーターを収める苦労の様子が伺えます。特にランボードから上と、キャブの大きさのバランスが苦しいです。
形は残念ながらそんな感じですが、他の金属製品は十分に流通しなかったため、小型レイアウトなどには結構重宝されました。従台車がないためC11やC12よりもカーブに強く、ミニカーブレールのC140を通過できます。
その後、2007年6月にさらに2種が追加されました。事実上、7年ぶりの再生産です。
A6305 C56 150・初期テンダー 2007年 |
A6305 |
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A6308 C56 160 2007年 |
A6308 |
いずれも最近の仕様に合わせて黒色車輪となり、各種印刷表記が追加されています。汽笛は金色となりATS発電機が追加されています。側面ガラスもはめ込みになるなど、細部は細々とリニューアルしました。動輪の位相は前回は左先行でしたが、右先行に修正されました。
全体の格好はそのまま受け継がれているので、この模型を見た印象は以前と同じです。C56としてはどうかと思いますが(諸般の事情で仕方がないとして)、フリースタイルのC型機のベースとして利用するなど、工作派の方にはいろいろ使い道があるように思います。
煙突の火の粉止めは簡単には外れないので、接着されているのかもしれません。
さて、いつものパッケージ裏のイラストですが、前回の製品では理想像のイラストが描かれていたため、現実とは大きな開きがありましたが、今回は模型の姿そのままが描かれています。また、いつの頃からか「PL対策商品」のマークがなくなっていますね。
2010年11月にはお召仕様として2種が追加されています。92号機は2度目の登場です。
A6307 C56 91 吉松機関区・お召指定機 2010年 |
A6307 |
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A6309 C56 92 吉松機関区・お召指定機 2010年 |
A6309 |
形は今までと同じですが、お召仕様ということもあって12,500円と強気の価格設定です。
コストダウンのためか、成型・印刷技術の問題かわかりませんが、ナンバープレートが平面の印刷表現になったという仕様変更があります(もっとも、実物の文字の浮き出しの厚さなど、模型にするとほんの少しのものなのですが)。ただ文字ははっきり見えますし、書体も従来のものより良いので、確かにありうる方法です。個人にもプリンターで作れそうなので何か嫌ですけど(笑)。
もうひとつ大きな変更として、動輪を押さえる床板がネジ留めではなく、ダイキャストの爪にパチンと押し込んで固定する方式に変わっています。分解するときはこじ開けるしかないようなので、破損しないようにご注意ください。
2年後には、先に出た160号機も同様に仕様変更され、改良品として追加されました。
A6310 C56 160 改良品 2012年 |
A6310 |
C56 2000年 |
C56 2000年 |
マイクロエースの初回品(2000年)の発売から、4ヶ月後に発売されました。
この時期のトレインショップは、C12・E10・4110と、出すものすべてがすかさずマイクロエースとバッティングしていますが、C56は唯一マイクロエースよりもあとに出されたものです。最後に発売されただけあって、エンジンドライブのうえスタイルもよく、現在でもファンの多い模型です。
製造は他のトレインショップ製品と同じく、韓国のサムホンサでした。特注で長軸にしたコアレスモーターを使い、キャブ内にモーターを収めることに成功したとのことです。ボイラー後部のテーパー部は太くなっていて、そこにモーターの前半分が入り込んでいます。動輪の軸箱は可動式で、第二動輪がギヤケースになっていて中にグリスが詰まっています。ディテール表現も細かく、かといってしつこくもありません。
ロッド類は可動部の逃げを大きくとってあり、やや曲がりが気になる部分もありますが、走りはとても静粛・スムーズです。
テンダーの片側には集電シューがあり、そこからリード線がエンジン側に伸びています。
手作りのため製品はひとつひとつ違い、細かい部品の付き方も少しずつ違いますから、金属製品に慣れていない方はとりあえずそういうものだと思ってください。
乗工社やトレインショップのC56は、持っている人の満足度も高いのか、代わりになるものがないからか、手放したという話を聞くことがほとんどありません。中古にもめったに出てきません。お探しの方にとっては、かなりの難関だと思います。運よく手に入れることができたら、大切にしてあげてください。
マイクロエース以外のメーカーから、C56がプラ量産品で出ることはまずないだろうと思っていましたが、2012年になって予想を覆される製品が発売されました。
2020-1 C56 小海線 2012年 |
2020-1 |
KATOが新規形式を発売したのは、2002年の9600のあと実に10年ぶりです。
D51 498から始まった超小型コアレスモーターを採用し、乗工社と同様の細いボイラーをエンジンドライブで再現しています。
モーターは少しキャブ内に入り込んでいますが、バックプレートも座席もちゃんと付いています。
驚きなのはこの小型のシールドビーム灯がちゃんと点灯することです。LEDの基板は何とキャブの天井にあり、そこから長いプリズムを介してライトまで導光されています。
ナンバー以外の部品はすべて取り付け済みとなっています。組み立て工数削減のためか取り付け足の数が最小限になっており、やや固定が甘い箇所もありますが、ぱっと見ただけでは金属製品と見間違うほどプロポーション・ディテールともに充実しています。
こちらでもご紹介しています。→C56 小海線(KATO)
2020-2 C56 160 2024年 |
2020-2 |
C56小海線の発売から干支が一巡した2024年、ついにおなじみの160号機が発売されました。もともと完成度の高かったC56小海線の構造を引き継ぎ、つや消し車体に抑えた表現の装飾が施された上品な仕上げです。
C56小海線は2018年の再生産でも先輪スポークは抜けていませんでしたが、C56 160は最初からスポークが抜けました。切り離しにナイフが必要だったナンバープレートは指先でもぎ取れるものに変わりました。黒・赤それぞれ8枚ずつ付属しているので予備も十分あります。
ヘッドライトのシールドビームは大型のLP403タイプとなりました。ライトは今回も固定式なので差し替えはできませんが、テンダーのライトは引き抜くことができ、分売パーツも新たに用意されました。
こちらでもご紹介しています。→C56 160(KATO)
C56は最終的に5社ものメーカーが参入した製品になりました。1983年代の中村精密から始まって、すべてが少なくとも全長は1/150でできており、乗工社以外はすべてエンジンドライブです。技術的に挑戦すべき課題が多く、開発意欲をかきたてられる形式なのかもしれませんね。