20世紀制服保護協議会 〜このサイトの趣旨


4. 平成不況型の大増殖


平成不況型が増えるわけ


 平成不況型ブレザーが増えるのには、メーカーにとってメリットが大きい、ということが挙げられます。
 メーカーの扱いにくい制服というのは、使い回しができないその学校オリジナルのデザイン。特殊なデザインのセーラー服なんて、その典型です。使わない可能性のある在庫は抱えたくありません。
 一方、平成不況型はシャツ、ブレザー、スカートなど各パーツごとに同じ制服を採用している学校の間で使いまわしができます。メーカーにとって、「学校のオリジナリティー」は邪魔者です。
 また、ブレザータイプはオプションが多いので、1人あたりの売り上げが高くなります。これはそのまま会社の売り上げ増につながります。
 メーカーにとっていいこと尽くしの平成不況型ブレザー。モデルチェンジの可能性があるけれどもデザインが決まっていないような学校には、このタイプの制服を勧めるのが普通です。よく数社のメーカーのサンプルの中からファッションショーで投票したりしていますが、出てくるのは微妙な色合いの違ったり、リボンなどオプションが違うだけの平成不況型ばかり。投票の意味がありません。
 しかし、こんな制服ですから、学校のオリジナリティーのかけらもない無個性なデザインであることは明白です。「学校オリジナルデザイン」と聞いて導入したのに、遠くに同じ制服があることを知って怒った学校がメーカーを変えてしまった、なんていいう笑えない話もあります。学校名を書いたエンブレムなどのオプションでごまかしてはいますが・・・勢い込んで導入するような制服ではありませんよね?

デザイン策定を丸投げする学校

 かつて、制服のデザインは学校が決めるものでした。
 近隣の伝統校の人気にあやかったり、流行にあわせたりして、地元の小メーカー、家庭科の先生、卒業生、あるいは生徒たち自らがデザインした制服が普通でした。その学校に愛着を持った関係者や地元の人たちが今後の学校の発展を願って制定した、派手さはないけど愛情のこもった制服でした。愛知県の名古屋襟セーラー、東京都の東京襟セーラーなど、地域ごとにある程度制服の特徴がまとまっているのはそのためです。
 「モデルチェンジブーム」まで、学校主導のデザインは健在でした。特に昭和末期のセーラー服は名作が多く、今でも地域で絶大な人気を誇っています。これも、学校がオリジナリティーを大切にしつつ、新しい感覚を取り入れてデザインしたためです。愛知県の東浦高校、千葉県の成田国際高校、福岡県の香住丘高校、広島県の廿日市西高校などはその代表的な例。当HPの図鑑をごらんいただけば、どれだけ丹精こめて作られた優れたデザインかがおわかりいただけると思います。
 しかし、「モデルチェンジブーム」がこの流れを変えました。大メーカーが競合して既成モデルを売り込み、投票で決めさせるようなやり方が主流になったため、学校はデザインの希望を簡単に伝える程度で、メーカー主導のデザイン策定が普通になってしまいました。
 これでは、メーカーが売りたい平成不況型ブレザーが増えていくのは当然です。
 学校が「セーラー服がいい」と言った場合はどうなるか? その場合にはメーカー既成モデルのセーラーブラウスが出来上がっていて、それが売り込まれることになります。最近導入されるセーラーブラウスがみな似たような簡素なデザインで、オプションがつかないのに気づいていますか? 昭和末期の名作セーラー群と比べると、なんと味気ないことか。つまるところ学校がちゃんとデザインを決めないのが原因といえます。





メーカーにとってありがたい平成不況型ブレザー。















昔の制服は学校関係者や地元の小メーカーが愛情をこめてデザインしていた。

昭和末期の名作セーラー。



モデルチェンジブームを契機に既成モデルをアレンジしたものから選ぶ方向へ転換。

それじゃあ、学校がモデルチェンジするメリットは・・・?

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