実はデメリットも多い制服モデルチェンジ
制服改定を業界では「モデルチェンジ(MC)」と呼んでいます。「制服がおしゃれになる」とか「学校のイメージが新しくなる」とか、メリットばかりが喧伝されて、ちょっと聞いた限りではみんなに喜ばれているかのようですが、事態はそんなに単純ではありません。
伝統の制服といえば卒業生の大切な思い出。たくさんの卒業生を輩出している伝統校であればあるほど、地域の制服に対する愛着は強いものです。卒業生が母校の健在ぶりを感じるのは、自分と同じ制服を着た生徒さんを町で見かけるとき。制服は卒業生と母校の絆の1つであるのに、これがいとも簡単に断ち切られます。
また、勢いこんで導入したものの、不評のために数年で再度改定される制服の多いこと。まさに金と時間と、それからかけがえのないものを失う最悪の結果になることが少なくありません。ひどい例では、2年しかもたなかった制服もあります。
学校が無理やり進めたモデルチェンジに、卒業生が長く不満を持っている例は事欠きません。学校の歴史上、大きな汚点となりかねません。これなら、決して「おしゃれ」ではなくとも、それなりに愛着を勝ち得ていた以前の制服を維持していたほうがはるかにマシだったということですよね。
モデルチェンジを勧めるメーカーの戦略
なぜそんな危険なモデルチェンジが「いいことづくし」だと思われているのか? それはメーカーの経営戦略と、失敗を失敗と認められない公教育機関としての学校のありようが関わっているのです。
少子化時代を迎えて、今後手をこまねいていては売り上げ拡大が望めない学校制服メーカー。そんなメーカーの戦略の大きな転機となったのが1990年ごろから始まったモデルチェンジブームでした。初めは東京の一部の私立から火がついたこの動き、地方へも波及していきます。それに乗じて、メーカーは、他社が入っている学校を自社の顧客とすべく、積極的にモデルチェンジを勧める戦略へと転換しました。つまり、そのままではシェアを広げるすべがないので、他社が入っている学校にモデルチェンジを働きかけ、コンペに持ち込むわけです。うまく自社の制服の採用が決まれば、一気に売り上げの拡大が望めます。そんなわけで、どのメーカーも「モデルチェンジはいいことづくし」という宣伝をするわけです。
モデルチェンジブームは、裏を返せばかなりの割合で制服メーカーによる学校の食い合い、シェア争いそのものなのです。ある高校の先生から直接聞いた話ですが(生々しい話なので校名は伏せます)、モデルチェンジの可能性があるとみるや、脅しまがいのことまでしてくる営業マンまでいたそうです。とんでもない事態ですよね。
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