20世紀制服保護協議会 〜このサイトの趣旨


7. 学校の伝統と未来を守るために

きちんとした意思表明を

 まずは、自分が在籍している、あるいは卒業した学校の制服が、伝統の象徴であり、かけがえない貴重な精神財産だということを再認識すること。歴史の長い学校でならばなおさら、地元の愛着も勝ち得てきた、町のシンボルだといえますよね。そう考えれば、簡単に制服を変えようなんて気にならないはずです。
 残念ながら、これまで生徒さんたちの反対意見があったにもかかわらずモデルチェンジが行われた学校は、生徒会などを通じた正式な反対がなされなかったようです。散発的に「制服は変えて欲しくない」などという意見がネット上で書き込まれたりしたところで、やはり力のある団体が正式に申し入れをしない限り、抑止力にはならないものです。特に、一度モデルチェンジの流れができてしまうと、いかに生徒さんたちが反対しようと、これまでの仕事を無にされてたまるかというメーカーの圧力が強く、学校側が最後まで押し切られてしまう傾向があります。モデルチェンジは形になる前に阻止しないといけません
 あと、大きな力を持つのが同窓会。「制服が変わるのは残念だが、流行にあわせていかないと仕方がない」などと妙に物分りのよい同窓会がありますが、制服改定のロジックがこれまで述べてきたようなものだとすると、そうそうのんきにモデルチェンジを認められないのではないでしょうか?

鼎が浦高校の奇跡

 最後に、1つ感動的なエピソードを。
 2004年、たいへんな希望を与えてくれる事件が三陸地方の小都市で起きました。気仙沼市の鼎が浦高校は80年の伝統をもつ黒セーラー服の女子高。宮城県の公立高校で唯一のセーラー服でした。この学校が、自由服の男子校、気仙沼高校と統合することが決まってしまいます。校名は気仙沼高校に、校舎は旧気仙沼高校のものを使用、校歌と校章は新たに策定と、統合とは名ばかりで、鼎が浦高校は事実上廃校という決定だったのです。

 鼎が浦の面影を残せる可能性は制服のみ、という状況で、当初統合準備委員会は「制服は慎重に決める」と態度を保留していました。しかし、おそらくメーカーの売り込みが激しかったと思われます。2004年春先、ついに委員会は新制服策定に動き出し、メーカー各社にサンプルを出させました。出てくるのは鼎の伝統の制服とは似ても似つかないもの。この時点で鼎が浦高校の長い歴史に完全な終止符が打たれたかと思われました。
 が、これに対して鼎が浦高校の生徒会は立ち上がります。「鼎のセーラー服をなくさないで欲しい」、と。生徒会のアンケートによると、校内での鼎のセーラー服の支持率は85%。事実上の「廃校」を突きつけられた伝統校の生徒さんが、自分たちの唯一の思い出となるものを守ろうと、委員会に組織的に申し出を行ったのです。同時に、保護者や近隣住民への署名運動が始まりました。中では1日に200本もの署名を集めた子もいたとか。その様子は地元の新聞、河北新報などで伝えられ、近隣市町村の注目を集めるほどの事件になりました。
 ここまで話が大きくなってしまっては、準備委員会も無視するわけにはいかなかったと思われます。9月、鼎のセーラー服や平成不況型などを含めたいくつかの案の中で中学生や近隣住民を含めた広汎な投票が行われました。結果は当然、鼎のセーラー服の圧勝。河北新報の紙面には「セーラー服の願いかなう」の見出しが躍り、地元の多くの人々の祝福を受けながら、新生気仙沼高校の制服が晴れて決定したのです。

 いやはや、ちょっと熱がこもってしまいました。
 要するに統廃合に伴う無分別な制服制定は、気づかないうちに統合校の生徒さんたちを深く傷つけているかもしれない、ということです。そして、生徒さんたちも、その気になればかけがえのないものを守ることができるということ。一人ひとりは力を持ち得なくても、生徒会という組織をもって団結し、地元のマスコミの力も借りてアピールしていけば、きっと学校の名残を残していくことは難しくないはずです。ただ、残念ながら今までほとんどの事例で統廃合という危機に対する認識が甘く、組織的な運動にはなりえませんでした。そうして、いくつもの誉ある伝統の制服が強制的に引退させられてきたのです。
 今、当HPの図鑑には、気仙沼高校の制服として、旧鼎が浦高校の制服が誇り高く掲載されています。勇気を与えてくれた鼎が浦高校の生徒さんたちに敬意と感謝の気持ちを表しつつ、今後の制服のありかたを見守っていきたいと思います。



今ある制服は学校の象徴であり、地元に愛されてきた精神的な財産。

きちんと声をまとめてこそ、大きな力となる。



















鼎が浦高校の思い出を守り通した生徒会の偉業。




今学校で起こっている不条理を認識していただけましたでしょうか。
思い出の母校を正しい姿で守っていくために、皆さんの一層のご理解をいただけますよう、お願いする次第です。
でも、当HPはそんなに堅苦しいもんじゃありません。純粋にコンテンツを楽しんでいっていただければうれしいです。

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