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Schlaraffenland

Friedemann Fromm

1999 D 114 Min.

出演者

Franka Potente
(Mona Wendt)

Jürgen Tarrach
(Wolfi Berner)

Heiner Lauterbach
(Mark Popp)

Daniel Brühl (Checo)

Roman Knizka
(Michi Holzner)

Ken Duken (Laser)

Tom Schilling (Dannie)

Tobias Schenke (Blocker)

Susanne Bormann (Lana)

Camilla Renschke (Mary)

Denise Zich (Pia)

Bernd Tauber (Worzig)

Ulrike Kriener
(ラーザーの母親)

見た時期:1999年10月

要注意: ネタばれあり!

ちょっと古い作品ですが、これを見た時腹を立てたのを覚えています。教育に無関心でない人が多い国ドイツですが、こういう映画が時々作られ、誰も文句を言わないだけでなく、ある程度ヒットしてしまいます。私は保守的な考え方をする方なので、こんなのがヒットしてしまうと、教育や警察に払っている税金が無駄になるなあと嘆きます。なぜ年寄りがこんなことをぼやくか。

タイトルの Schlaraffenland は《怠け者が働かずに暮らせる楽園》という意味です。

もう古い作品ですし、今更改めて日本で公開ということもないでしょうから、ネタは気前良くばらしてしまいます。七人の侍でもなく、7人の小人でもなく、荒野の7人でもなく、黄金の7人でもなく、7人の悪ガキがパーティー気分で年末に町1番の大きなショッピング・センターに押し入ります。酔っ払っていたり、ラリっていたりで、やる事は滅茶苦茶。内輪で喧嘩も始まります。警備員との争いもあり、死者まで出ます。反省の色なし、損得勘定で「こんな事をやっていては行けない」とすら考えません。そこへ大人がもっと悪い事をやり始めるため、ティーンの悪さがかすんでしまうという結末。

笑えるという話でもなく、警察の捜査談でもなく、人間ドラマでもなく、エンターテイメントでもなく、実話でもなく、ただショッピング・センターを荒らして回るだけ。このように何のために作ったのかさっぱり分からないという作品がドイツでは時々出て来ます。生きる意味を見つけられず、方向性もないさまよえる若者を表現したというわけでもありません。今の若者はこうだから、とただそれを示しただけのようなひねりのなさ。

この筋もつまらないし、演技、演出の妙も見られない映画が、驚くべき作品だと分かったのは新しい世紀に入ってから。出演者のほとんどがこの後飛ぶ鳥を落とす勢いで出世して行きました。世界的に有名になったフランカ・ポテンテはご存知の方もいるかと思います。ついこの間マット・デイモンと共演して、いい評価を得ています。彼女は Schlaraffenland の1年前に出世作ラン・ローラ・ラン(下の方へスクロールして下さい)で国内ブレイクしています。その後 Bin ich schön? に出てからこの Schlaraffenland へ。このあたりではまだ海のものとも山のものとも分からないのですが、その後 Der Krieger und die Kaiserin でドイツ国内の地位はだいたい固まります。日本にはアナトミーが行っており、Der Krieger und die Kaiserinプリンセス&ウィーリアーという名前で公開されたそうです。ハリウッドでは一般のファンの間でなく、業界でラン・ローラ・ラン(下へスクロール)が評判になったそうで、それがきっかけで監督共々国際的な企画が舞い込むようになっています。

国際的なのは彼女1人ですが、ユルゲン・タラッハがまたこの後国内で大ブレーク。それまではテレビが多く、太って無様な姿をさらしたアホという役が多かったのですが、その後コメディーでも個性のある役をやるようになり、最近実話の犯罪ドラマの主演になったりと、一目置かれる性格俳優に変身。過渡期に1度ベルリンでじきじきにお目にかかったことがあります。太っちょの無様な警官役の試写会でしたが、試写会に現われたタラッハは黒い服のシックな出で立ちで、私生活と役は全然違うんだというところを見せていました。テレビもおろそかにせず、いい企画ももらえることがあるようです。ついでですがポテンテと同じくプリンセス&ウィーリアにも出演しています。

ハイナー・ラウターバッハは芸能界の大ベテランでこの前も後もコンスタントに中堅でがんばっています。日本でも知られている作品としては恐ろしく長いタイトルのロッシーニ・悦楽晩餐会・また誰と寝るかという重要な問題、井上さんが見たかも知れない Cascadeur、あまりおもしろいとは言えないけれどスター、中堅が顔をそろえている St. Pauli Nacht、日本にも行きちょっと知られた MON-ZENes[エス]、 そのほかにテレビでも長く活躍しています。このあたりまでは Schlaraffenland では年寄り組。

7人の悪ガキの中で1番才能があり、出世著しいのがダニエル  ブリュール。私も何度か御紹介していますが、どの作品に出てもデ・ニーロかというぐらい役の解釈が徹底していて、毎回違う個性を発揮します。写真映りによりますが、時にはジョニー・デップのような雰囲気も漂います。しかし誰かの真似をしているという人ではありません。俳優学校に行ったわけでもなく、天才としか言えません。これまでにも Das weisse RauschenVaya con diosElefantenherz を取り上げましたが、この間見た最新作グッバイ、レーニン!は大ヒット。1つの役が成功すると似たような役ばかり押し付けられる人が多い中、ダニエル  ブリュールのように多彩な役を軽くこなしてしまう人はあまり見かけません。ブリュールは演じる役ごとに足跡を残して行きます。1978年生まれですが、堂々のスターぶり。このところ賞を集めて歩いている感があります。最近はベルリンに引っ越して来ています。

次に名を挙げるべきはロマン・クニツカでしょう。ドイツ国内では、若手スターの列に並びます。 私の好みには合いませんが、彼のようなハンサムで明るい若者がいいという観客はたくさんいると思います。家族ドラマをコメディー・タッチにした Mein Bruder, der Vampir に主演。訳すと「僕の弟はバンパイア」という意味でそのバンパイアが彼の役です。ちょっと趣向を変えた ギルバート・グレイプです。Vienna では重要な主演3人の1人。まだ見ていませんが Anatomie 2 にも出ています。映画雑誌の写真を見ると彼の写真が大きく出ているので、重要な役なのでしょう。そのほかにコンスタントにテレビにも出演しています。

トム・シリングも Crazy で主演級になり、アグネスと彼の兄弟 にも他のスタート並んで顔を出しています。

子供の時から映画に出ているということでもうベテランに数えられる若者がトビアス・シェンケ。生まれたのは1981年で1997年には Knockin' On Heaven's Door に顔を出しています。次の年に Das Merkwürdige Verhalten geschlechtsreifer Großstädter zur Paarungszeit (なぜ南の人はこういう長いタイトルが好きなんだろう)、 そのまた次の年に Alles Bob! (このボブという男はアホだった。マーサの幸せレシピにも出て来るマルティナ・ゲデックに窓から放り出されるのも当然)と Schlaraffenland。そのまた次の年に Harte Jungs。これまた類を見ないアホな作品でしたが国内ではヒット。私は彼の作品はその後見ていませんが、Harte Jungs の続編に当たる Knallharte Jungs にも出ており、やはりテレビと平行して大活躍しています。

女性軍の方ではスザンネ・ボアマンが NachtgestaltenFreundeに出演。カミラ・レンシュケとデニーズ・ツィッヒはもっぱらテレビで活躍中。

というわけで主立った出演者はその後もどんどん上昇中。この作品を作った監督はテレビの方を専門にしているらしくマイペースで、作品数はテレビを含めても少ない方。その後大成功したという話もあまり聞きません。他の人に成功をもたらす幸運の神のようではありますが。

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