企喩歌
無名氏
男兒可憐蟲,
出門懷死憂。
尸喪狹谷中,
白骨無人收。
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。
企喩歌
男兒 憐
(あはれ)
む可
(べ)
きの 蟲,
門を出づれば 死の憂へを 懷
(いだ)
く。
尸
(しかばね)
は 狹谷の中に 喪
(うしな)
ひて,
白骨 人の 收むる 無し。
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◎ 私感訳註:
※企喩歌:『楽府詩集』梁・鼓角横吹の曲名。もと北狄の馬上の楽。北方民族のもの。中国に入って、隋代にその辞が一般に奏せられた。「企業の喩(たと)え」の意。この作品は華北、華中を統一した前秦(351〜394)の苻融のものともいう。『樂府詩集』『古詩源』にある。後世、杜甫は『兵車行』で「車
,馬蕭蕭,行人弓箭各在腰。耶孃妻子走相送,塵埃不見咸陽橋。牽衣頓足闌道哭,哭聲直上干雲霄。道旁過者問行人,行人但云點行頻。或從十五北防河,便至四十西營田。去時里正與裹頭,歸來頭白還戍邊。邊庭流血成海水,武皇開邊意未已。君不聞漢家山東二百州,千村萬落生荊杞。縱有健婦把鋤犁,禾生隴畝無東西。況復秦兵耐苦戰,被驅不異犬與鷄。長者雖有問,役夫敢申恨。且如今年冬,未休關西卒。縣官急索租,租税從何出。信知生男惡,反是生女好。生女猶得嫁比鄰,生男埋沒隨百草。君不見青海頭,古來白骨無人收。新鬼煩冤舊鬼哭,天陰雨濕聲啾啾。」
や、白居易の『新豐折臂翁』「新豐老翁八十八,頭鬢眉鬚皆似雪。玄孫扶向店前行,左臂憑肩右臂折。問翁臂折來幾年,兼問致折何因縁。翁云貫屬新豐縣,生逢聖代無征戰。慣聽梨園歌管聲,不識旗槍與弓箭。無何天寶大徴兵,戸有三丁點一丁。點得驅將何處去,五月萬里雲南行。聞道雲南有瀘水,椒花落時瘴煙起。大軍徒渉水如湯,未過十人二三死。村南村北哭聲哀,兒別爺孃夫別妻。皆云前後征蠻者,千萬人行無一廻。是時翁年二十四,兵部牒中有名字。夜深不敢使人知,偸將大石槌折臂。張弓簸旗倶不堪,從茲始免征雲南。骨碎筋傷非不苦,且圖揀退歸ク土。此臂折來六十年,一肢雖廢一身全。至今風雨陰寒夜,直到天明痛不眠。痛不眠,終不悔,且喜老身今獨在。不然當時瀘水頭,身死魂孤骨不收。應作雲南望ク鬼,萬人冢上哭
。老人言,君聽取,君不聞開元宰相宋開府,不賞邊功防黷武。又不聞天寶宰相楊國忠,欲求恩幸立邊功。邊功未立生人怨,請問新豐折臂翁。」
と、詠い継がれている。
※男兒可憐蟲:男とは、可哀想な動物である。 ・男兒:おとこ。 ・可憐:可哀想な。憐れむべき。 ・蟲:動物。むし。
※出門懷死憂:一歩、家を離れれば、胸の内には、死の覚悟を秘めているものなのだ。 ・出門:家を出る。城門を出ることで、郊外へ行くの意。
漢魏・王粲の『七哀詩』三首之一「西京亂無象,豺虎方遘患。復棄中國去,委身適荊蠻。親戚對我悲,朋友相追攀。
出門
無所見
,白骨蔽平原。路有飢婦人,抱子棄草間。顧聞號泣聲,揮涕獨不還。未知身死處,何能兩相完。驅馬棄之去,不忍聽此言。南登霸陵岸,迴首望長安。悟彼下泉人,喟然傷心肝。」
や盛唐・高適の『田家春望』「
出門
何所見
,春色滿平蕪。可歎無知己,高陽一酒徒。」
は、後者の例。 ・懷:心の内で思う。 ・死憂:死ぬことの憂い。死の覚悟。
※尸喪狹谷中:(戦闘で死んだ)屍体は狭い谷に打ち棄てられて。 ・尸喪:〔しさう;shi1sang4○●〕・尸:〔し;shi1○〕屍体。死体。しかばね。かばね。亡骸。=屍。 ・喪:〔さう;sang4●〕うしなう。なくす。ほろびる。両韻で、名詞「喪」(も)、葬礼の意の場合は〔さう;sang1○〕になる。 ・狹谷:狭い谷。 ・中:うち。
※白骨無人收:(兵士の)白骨は、誰も収めてくれる人はいない。 ・無人收:収める人はいない。打ち棄てられたままである。「無人…」:(誰も)…する人がいない。
◎
構成
について
韻式は「AA」。韻脚は「憂收」で、平水韻でいえば、下平十一尤。次の平仄はこの作品のもの。
○○●○○,
●○○●○。(韻)
○●●●○,
●●○○○。(韻)
2004.10. 9
10.10
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