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返照入閭巷,
憂來誰共語。
古道少人行,
秋風動禾黍。
秋日
返照(へんせう) 閭巷(りょかう)に 入り,
憂へ來って 誰(たれ)と共にか 語らん。
古道 人の行くこと 少(まれ)に,
秋風 禾黍(くゎしょ)を 動かす。
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◎ 私感註釈
※耿:中唐の詩人。字は洪源。河東の人。
※返照入閭巷:夕映えが村里の通りに(まで)入ってきて。 ・返照:〔へんせう、はんせう;fan3zhao4●●〕夕ばえ。光が照り返す。≒反照。後世、日本の菅茶山は『路上』で「反照入楊林,沙灣晩未暝。母牛與犢兒,隔水相呼應。」と使う。 ・閭巷:〔りょかう;lyu4xiang4○●〕村里の通り。村里。
※憂來誰共語:憂える気持ちが起こってくるが、誰と共に語ろうか。(なかなか相手は見つからない)。 ・憂來:憂える気持ちが起こってくる。「-來」は方向動詞で趨勢を表す。…てくる。沈期に『臨高臺』「高臺臨廣陌,車馬紛相續。回首思舊鄕,雲山亂心曲。遠望河流緩,周看原野綠。向夕林鳥還,憂來飛景促。」
がある。 ・誰:だれ。 ・共語:ともに語る。
※古道少人行:昔の旧い道を通る人も減って、昔の聖賢のおしえを踏み行う人も少なくなった。 ・古道:昔の聖賢のおしえ。聖賢が説いた道理。後世、南宋・文天祥の『正氣歌』「顧此耿耿在,仰視浮雲白。悠悠我心悲,蒼天曷有極。哲人日已遠,典型在夙昔。風檐展書讀,古道照顏色。」や馬致遠の元曲〔越調〕『天淨沙』秋思「枯藤老樹昏鴉,小橋流水人家,古道西風痩馬。夕陽西下,斷腸人在天涯。」
柳永『少年遊』「長安古道馬遲遲,高柳亂蝉棲。夕陽島外,秋風原上,目斷四天垂。 歸雲一去無蹤迹,何處是前期?狎興生疏,酒徒蕭索,不似去年時。」
の用法にほぼ同じ。 ・少:稀である。少ない。 ・人行:人が行くこと。
※秋風動禾黍:秋風が(もの悲しく吹いてきて)イネやキビを動かしている。(それを見ているわたしは、恰も『詩經・王風・黍離』の中の人物のように、憂いに満ちた心境になってくる)。 ・秋風:秋の風で、悲しさを伴うものと古来されてきた。漢・無名氏の『古歌』に「秋風蕭蕭愁殺人,出亦愁,入亦愁。座中何人,誰不懷憂。令我白頭。胡地多飆風,樹木何修修。離家日趨遠,衣帶日趨緩。心思不能言,腸中車輪轉。」とある。清末・秋瑾の『絶命詞』に「秋雨秋風愁殺人」
とある。 ・動:動かす。構文から、他動詞的な用法になる。 ・禾黍:〔くゎしょ;heshu32○●〕イネとキビ。『詩經・王風・黍離』「彼黍離離,彼稷之苗。行邁靡靡,中心搖搖。知我者謂我心憂,不知我者,謂我何求。悠悠蒼天,此何人哉。 彼黍離離,彼稷之穗。行邁靡靡,中心如醉。知我者,謂我心憂,不知我者,謂我何求。悠悠蒼天,此何人哉。 彼黍離離,彼稷之實。行邁靡靡,中心如噎。知我者,謂我心憂,不知我者,謂我何求。悠悠蒼天,此何人哉。」
での憂えるさまを暗示している。
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◎ 構成について
韻式は「aa」。韻脚は「語黍」で、平水韻上声六語。次の平仄はこの作品のもの。
●●●○●,
○○○●●。(韻)
●●●○○,
○○●○●。(韻)
2005.8.21 8.22 8.23 2006.1.21 |
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