金碧樓臺眼界新, 競將工巧詫西人。 竹籬茅舍清江上, 幾樹幽花本色春。 |
西貢 雜詩
金碧 の樓臺 眼界 新 たに,
競 ひて工巧 を將 って西人 を詫 る。
竹籬 の茅舍 清江 の上 ,
幾樹 の幽花 ぞ本色 の春。
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◎ 私感訳註:
※丘逢甲:清末の文学者、教育者、政治家。同治三年(1864年)〜中華民國二年(1913年)。字は仙根、号して蟄庵また仲閼、筆名に倉海、台湾の苗栗の人。光緒十五年の進士で、官工部主事。日清戦争後、清国は台湾を日本に割譲することとなったが、義軍大将軍となって台湾を守って日本軍に抵抗した。失敗した後は秘かに広東に移住、学校などを開設し、新思想と西方科学を紹介した。辛亥革命では、中央参議院議員に選ばれた。詩は七律に巧みで、陸游に学んで台湾を恢復して国恥を雪ごうとした詩がある。著書に『嶺雲海日楼詩鈔』がある。
※西貢雑詩:サイゴンでの興の趨(おもむ)くままに作った詩。 *フランス殖民地のコロニアル(?)風の華麗な建築物と原住民の自然の中での生活を対比させて描いて、殖民地について考えさせている。 ・西貢:〔Xi1gong4〕サイゴン。現・ホーチミン市。十九世紀後半、フランスにより殖民地化された当時のベトナム地方(=安南)のサイゴンは、フランスの影響を受けて発展を遂げ、街には古典的西洋風の建築が数多く現れ、「極東の真珠」「東洋のパリ」と呼ばれた。しかし、殖民地としてであった。 ・雑詩:興の趨(おもむ)くままに作った、型にとらわれない詩。
※金碧楼台眼界新:(フランスの殖民地風の)華麗な建築物は、目に見える限り、新たであり。 ・金碧:金色や赤青の色(の宮殿建築物)。極彩色(の華麗な宮殿建築物)。 ・楼台:バルコニー。高殿(たかどの)。 ・眼界:目に見える限り。視野。
※競将工巧詫西人:きそって、巧みさで、西洋人(ここでは、ベトナムを殖民地としたフランス人)を誇っている。 ・競:きそって。 ・将:…をもって。 ・工巧:〔こうかう;gong1qiao3○●〕精巧である。巧みである。また、軽薄。薄っぺら。 ・詫:〔た;cha4●〕誇る。大言を吐いて人を驚かせる。きわだたせる。ひきたてる。 ・西人:西洋人。ここでは、ベトナムを殖民地としたフランス人のことになる。
※竹籬茅舎清江上:(原住民の)竹の垣に萱葺(かやぶ)きの家といった質素な住まいが、清らかな川のほとり(の)。 ・竹籬:竹の垣。 ・茅舎:質素な住まい。あばら家。茅屋(ぼう おく)。「竹籬茅舎」で竹の垣に萱葺(かやぶ)きの家。質素な住まい、の意。 ・清江:清らかな水の川。 ・-上:ほとり。場所を指す。この用例には、金・完顏亮の『呉山』「萬里車書盡混同,江南豈有別疆封。提兵百萬西湖上,立馬呉山第一峰。」や盛唐・岑參の『與高適薛據同登慈恩寺浮圖』「塔勢如湧出,孤高聳天宮。登臨出世界,磴道盤虚空。突兀壓~州,崢エ如鬼工。四角礙白日,七層摩蒼穹。下窺指高鳥,俯聽聞驚風。連山若波濤,奔走似朝東。松夾馳道,宮觀何玲瓏。秋色從西來,蒼然滿關中。五陵北原上,萬古濛濛。淨理了可悟,勝因夙所宗。誓將挂冠去,覺道資無窮。」や中唐・白居易の『送春』「三月三十日,春歸日復暮。惆悵問春風,明朝應不住。送春曲江上,拳拳東西顧。但見撲水花,紛紛不知數。人生似行客,兩足無停歩。日日進前程,前程幾多路。兵刃與水火,盡可違之去。唯有老到來,人間無避處。感時良爲已,獨倚池南樹。今日送春心,心如別親故。」や中唐・張籍の『征婦怨』「九月匈奴殺邊將,漢軍全沒遼水上。萬里無人收白骨,家家城下招魂葬。婦人依倚子與夫,同居貧賤心亦舒。夫死戰場子在腹,妾身雖存如晝燭。」や元・楊維驍フ『西湖竹枝歌』「蘇小門前花滿株,蘇公堤上女當壚。南官北使須到此,江南西湖天下無。」がある。現代でも張寒暉の『松花江上』「我的家在東北松花江上,那裡有森林煤鑛,還有那滿山遍野的大豆高粱。我的家在東北松花江上,那裡有我的同胞,還有衰老的爹娘。」がある。
※幾樹幽花本色春:何本かの木にひそやかに咲く花が本来の姿の春(を見せている)。 ・幽花:ひそやかに咲く花。北宋・蘇舜欽の『淮中晩泊犢頭』には「春陰垂野草,時有幽花一樹明。晩泊孤舟古祠下,滿川風雨看潮生。」とある。 ・本色:本来の姿。本来の性質。真面目(しんめんもく)。本領。本来の面目。
◎ 構成について
2016.7.22 7.23 7.24 7.25 |
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