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      送友人

                 李白


青山橫北郭,
白水遶東城。
此地一爲別,
孤蓬萬里征。
浮雲遊子意,
落日故人情。
揮手自茲去,
蕭蕭班馬鳴。


******


友人を 送る
 
青山  北郭に 橫たはり,
白水  東城を遶
(めぐ)る。
此地  一たび 別れを 爲
(な)し,
孤蓬  萬里に 征
(ゆ)く。
浮雲  遊子の意,
落日  故人の情。
手を 揮
(ふる)ひて  茲(ここ)より 去れば,
蕭蕭
(せうせう)として  班馬 鳴く。

*****************



◎ 私感註釈

※李白:盛唐の詩人。

※送友人:友人を見送る。人を送るために、しばし同行してゆく。後世、現代・毛沢東は『賀新郞・
別友』(一九二三年)で「揮手從茲去。更那堪凄然相向,苦情重訴。眼角眉梢都似恨,熱涙欲零還住。知誤會前番書語。過眼滔滔雲共霧,算人間知己吾和汝。人有病,天知否?   今朝霜重東門路,照橫塘半天殘月,凄淸如許。汽笛一聲腸已斷,從此天涯孤旅。凭割斷愁絲恨縷。要似崑崙崩絶壁,又恰像颱風掃寰宇。重比翼,和雲翥。」と使う。

※青山橫北郭:青山:草木が青々と茂っている山が、街のの城郭の北側に横たわって。 ・青山:草木が青々と茂っている山。また、墓所とすべき山。ここでは、前者の意。 ・橫:よこたわる。動詞。 ・北郭:都市の城郭の北側。

※白水遶東城:澄んだ水が、都市(城市)の東側をめぐっている。 ・白水:澄んだ水。 ・遶:〔ぜう;rao3●〕めぐる。めぐらす。とりまく。 ・東城:都市(城市)の東側。

※此地一爲別:(今、)この地で一たび別れることになれば。 ・此地:この地(で)。この場所(で)。 ・一爲:ひとたび…をなす(やいなや)。ひとたび…をす(れば)。 ・別:別れること。離別。名詞。

※孤蓬萬里征:風に吹かれて、ひとつだけで、風に飛びさすらう飛蓬のように、万里の道をゆく(ことになる)。 ・孤蓬:〔こほう;gu1peng2○○〕ヤナギヨモギが(根が大地から離れて)風に吹かれて、ひとつだけで、風に飛ばされてさすらうさま。日本のヨモギとは大きく異なり、風に吹かれて転がるように風に飛ばされる。(風に飛ばされて)転がってゆく蓬。飛蓬。「蓬」は、日本のヨモギとは異なる。蓬が枯れて、根元の土も風に飛ばされてしまい、根が大地から離れて、枯れた茎が輪のようになり、乾いた黄土高原を風に吹かれて、恰も紙くずが風に飛ばされるが如く回りながら、黄砂とともに流れ去ってゆく。映画『黄土地』にもその場面が出てくる。江湖を流離う老人が、転蓬とともに歩み去ってゆく。黄色い砂埃がやがて、老人も転蓬をも隠してゆく…。中華版デラシネ表現の一。流転の人生の象徴。飛蓬。転蓬。曹植の『吁嗟篇』に「吁嗟此
轉蓬,居世何獨然。長去本根逝,宿夜無休閑。東西經七陌,南北越九阡。卒遇回風起,吹我入雲間。自謂終天路,忽然下沈泉。驚飆接我出,故歸彼中田。當南而更北,謂東而反西。宕宕當何依,忽亡而復存。飄周八澤,連翩歴五山。流轉無恆處,誰知吾苦艱。願爲中林草,秋隨野火燔。糜滅豈不痛,願與根連。」とある。 ・萬里:遙かな行程をいう。 ・征:〔せい;zheng1○〕旅に出る。行く。

※浮雲遊子意:浮かび漂う雲は、旅立つ人の心であり。 ・浮雲:浮かび漂う雲。漂う雲のように行方定まらないこと。王維の『送別』「下馬飮君酒,問君何所之。君言不得意,歸臥南山陲。但去莫復問,白雲無盡時。」を蹈まえているか。 ・遊子:旅人。家を離れて他郷に旅立つ人。ここでは、李白の友人を指す。 ・意:心。

※落日故人情:夕陽は友人の感情である。 ・落日:夕陽。 ・故人:旧知の友人。 ・情:思い。

※揮手自茲去:手を振って、ここより去り行こう(とすれば)。 *前出・毛沢東は『賀新郞・別友』で「揮手從茲去。更那堪凄然相向,苦情重訴。」と使う。 ・揮手:手を振る。 ・自:…より ・茲:〔し;zi1○〕ここ。 ・去:去る。行く。

※蕭蕭班馬鳴:ヒヒーンと、別れる馬が嘶いた。 ・蕭蕭:〔せうせう;xiao1xiao1○○〕馬の嘶く声。また、もの寂しいさま。 ・班馬:〔はんば;ban1ma3○●〕別れる馬。 ・班:わかれる。はなれる。動詞。 ・鳴:(動物が)なく。ここでは、嘶くことになる。

               ***********




◎ 構成について

韻式は「AAAA」。韻脚は「城征情鳴」で、平水韻下平八庚。偸春体(偸春格)。偸春体とは、律詩では、
□□□□□,□□□□□。
□□□□□□□□□□
(赤色と桃色とは対句)
□□□□□□□□□□
(青色と紺色とは対句
□□□□□,□□□□□。

と対になるところを、
□□□□□□□□□□(赤色と桃色とは対句)
□□□□□,□□□□□。
□□□□□□□□□□
(青色と紺色とは対句)
□□□□□,□□□□□。

というふうに、第二聯(頷聯)の対句が第一聯(首聯)に移ったものをいう。偸春体とは、恰も梅花が天下の春に魁けて早いめに咲くことのように、律詩の頷聯にあるべき対句が早いめになっているものを呼ぶ。次の平仄は、この作品のもの。美事な平仄である。


○○○●●,
●●●○○。(韻)
●●●○●,
○○●●○。(韻)
○○○●●,
●●●○○。(韻)
○●●○●,
○○○●○。(韻)
2004.12.18
     12.19
     12.21

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