huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye
楚辞




                     
吁嗟篇

          

                        曹植


吁嗟此轉蓬,
居世何獨然。
長去本根逝,
宿夜無休閑。
東西經七陌,
南北越九阡。
卒遇回風起,
吹我入雲間。
自謂終天路,
忽然下沈泉。
驚飆接我出,
故歸彼中田。
當南而更北,
謂東而反西。
宕宕當何依,
忽亡而復存。
周八澤,
連翩歴五山。
流轉無恆處,
誰知吾苦艱。
願爲中林草,
秋隨野火燔。
糜滅豈不痛,
願與根連。


    **********************
        吁嗟篇
   
吁嗟
(ああ)  此(こ)の轉蓬,
世に居る  何ぞ獨
(ひと)り然(しか)る。
長へに  本根を 去りて 逝
(ゆ)き,
宿夜  休閑 無し。
東西  七陌
(しちはく)を 經(へ)
南北  九阡
(きうせん)を 越す。
(にはか)に  回風の起るに 遇(あ)ひ,
我を吹きて  雲間に 入る。
自ら謂
(おも)ふ  天路を 終(を)へ,
忽然として  沈泉に 下る。
驚飆
(きゃうへう)  我を 接(むか)へ 出(い)で,
(もと)の  彼(か)の中田に 歸らしむ。
(まさ)に 南すべくして  更に 北し,
東と 謂
(おも)ふに  反(かへ)って 西す。
宕宕
(たうたう)として  當(まさ)に何(いづ)くにか 依(よ)るべく,
(たちま)ち 亡びて  復(ま)た 存す。
(へうえう)として  八澤を 周(まは)り,
連翩
(れんぺん)として  五山を 歴(ふ)
流轉して  恆處 無く,
(たれ)か  吾が苦艱を 知らん。
願はくは  中林の草と 爲り,
秋  野火に 隨ひて 燔
(や)かれん。
糜滅
(びめつ)  豈(あ)に 痛ましからざらんも,
願はくは  根
(こんかい)と 連(つら)ならんや。
             ******************


◎ 私感訳註:

※曹植:曹植192年(初平三年)〜232年(太和六年)三国の詩人。曹操(魏・武帝)の第三子。字は子建。曹丕(文帝)の同母弟。兄曹丕との間に王位継承の抗争で、不遇な後半生を送る。兄との関係は『七歩詩』「煮豆燃豆,豆在釜中泣。本是同根生,相煎何太急。」によく表されている。この作品も不遇な思いを詠っている。

※吁嗟篇:歎きの歌。蓬に託して、変転きわまりない自らの境涯を歎き詠っている。陶淵明の『歸去來兮辭』は、この作品から大きな影響を受けていよう。

※吁嗟此轉蓬: ・吁嗟:〔うさ;
xu1jie1(例外の音)○○〕ああ。歎きの辞。ため息をつき嘆く。 ・此:この。作者の思いが託されている「この」蓬。 ・轉蓬:(風に飛ばされて)転がってゆく蓬。飛蓬。「蓬」は、日本のヨモギとは異なる。蓬が枯れて、根元の土も風に飛ばされてしまい、根が大地から離れて、枯れた茎が輪のようになり、乾いた黄土高原を風に吹かれて、恰も紙くずが風に飛ばされるが如く回りながら、黄砂とともに流れ去ってゆく。映画『黄土地』にもその場面が出てくる。江湖を流離う老人が、転蓬とともに歩み去ってゆく。黄色い砂埃がやがて、老人も転蓬をも隠してゆく…。中華版デラシネ表現の一。流転の人生の象徴。

※居世何獨然:世の中にいるものの中で、どうして蓬だけは、そのよう(変転する)であるのか。 ・居世:世の中にいるもの。 ・何獨:どうして、ひとりだけは。どうして、それだけは。 ・然:そのようである。そう。そのとおり。しかり。

※長去本根逝:長く本来の根っこから離れて行き。 ・長去:とこしえに離れて行く。 ・本根:もとの根。 ・逝:ゆく。去る。死ぬ。

※宿夜無休閑:朝早くから夜遅くまで、休まる時がない。 ・宿夜:朝早くから夜遅くまで。夙夜。『古詩源』では「夙夜」とする。 ・休閑:ひまでぶらぶらする。

※東西經七陌:東西に七本以上の道を通り過ぎて。 ・經:へる。通り抜ける。 ・七:多数を表す。後出の「九」も同義。 ・陌:陌:東西に通じるあぜ道。道。

※南北越九阡:南北に、九本以上の道を通り越えてきた。 ・越:こす。通り抜ける。 ・阡:南北に通じるあぜ道。道。

※卒遇回風起:にわかに、つむじ風の起きるのに出逢って。 ・卒:にわかに。あわてる。 ・遇:あう。 ・回風:つむじ風。 ・起:起こる。

※吹我入雲間:わたし(蓬)を吹き飛ばして、雲間に入れてしまう。 ・吹我:わたし(蓬)を吹き飛ばして。 ・入:入る。 ・雲間:天上の雲間。

※自謂終天路:みずからもう天の路も終わりかと思ったら。 ・自:みずから。 ・謂:思う。 ・終:おえる。 ・天路:天の路。

※忽然下沈泉:たちまち深い淵に下っていった。 ・忽然:ふいに。たちまち。 ・下:くだる。 ・沈泉:深い淵。

※驚飆接我出:はげしいはやては、わたしを(沈泉から)迎えて、出して。 ・驚飆:〔jing1biao1;けいへう、きゃうへう○○〕はげしいはやて。暴風。 ・接我:わたしを迎える。 ・接我出:わたしを(沈泉から)迎えて、出して。 ・接:迎える。現代語でも同義で使う、息の長い言葉。

※故歸彼中田:結局は元のあの畑へ戻してしまった。 ・故:もと。以前。昔。いにしへ;わざと。ことさら。ゆえに。 ・歸:もどす。 ・彼:あの。彼(か)の。 ・中田:畑の中。田の中。

※當南而更北:南へ行くかと思ったら、北の方へ変わり。 ・當:まさに…す。 ・南:南す。動詞。南へ行く。同様に「東、西、北、左、右」なども動詞の働きをする場合がある。 ・而:接続詞。 ・更:さらにまた。「當… 更…」。

※謂東而反西:東へ行くかと思ったら、反対向いて西へ行く。 ・謂:思う。 ・反:反対に。「謂… 反…」。 ・西:この語(字)は韻脚になるべきところ。何故か押韻しないが…??

※宕宕當何依:広々ととりとめもなく、一体何に寄り添えばよいのか。 ・宕宕:〔たうたう;dang4dang4●●〕広大でとりとめのないさま。蕩蕩。 ・當:…べきである。まさに…べし。また、あたる。 ・何依:何に頼るのか。

※忽亡而復存:見えなくなったかと思ったら、また、出てきて。 ・忽:たちまち。 ・亡:なくなる。 ・復:また。 ・存:。「忽… 復…」「…かと思うと、すぐに…」。

※飄周八澤:ふわふわと八つの沢を周(まわ)り。 ・飄:〔へうえう;piao1yao2○○〕翻り動く。 ・周:めぐる。 ・八澤:八つの沢。大野、大陸、楊淤、孟諸、雲夢、具區、海隅、圃田を指す。

※連翩歴五山:ひらひらと五岳を廻(めぐ)ってきた。 ・連翩:〔れんへ(ぺ)ん;lian2pian1○○〕次から次へと落ち着き無く。ふわふわと連続して行動をとる。鳥がひらひらと次々に飛ぶさま。 ・歴:経る。 ・五山:五岳のこと。泰山、華山、衡山、恆山、嵩山。

※流轉無恆處:絶え間なく移り変わって、一定不変のところに留まることはなく。 ・流轉:〔るてん;liu2zhuan3○●〕絶え間なく移り変わる。 ・恆處:一定不変のところ。常にきまったところ。

※誰知吾苦艱:だれがわたしの苦しみを分かろうか。 ・誰知:だれが分かろうか。 ・吾:わたし。「我」ともする。その場合は
。 ・苦艱:苦しみ。艱苦。「艱」が韻脚になるためでもある。

※願爲中林草:願わくは、林の中の草になって、(野火で焼かれ)たい。 *流転する「飛蓬」、「転蓬」ではなく、大地にしっかりと根を下ろした草になりたい。たとえ、秋に茎や葉が野火で焼かれようとも、根はしっかりと大地の中で生きている草になりたい。蛇足だが、ふと、フランキー堺の演じた『私は貝になりたい』を思い出した…。「もしも、生まれ変わることができるのならば、深い深い海の底の貝になりたい…」と言った……。 ・願爲:願わくば…になりたい。「願爲」は「中林草,秋隨野火燔」にまでかかる。 ・中林:「林中」のこと。陶淵明でも「心中」を「中心」と表現している。『己酉歳九月九日』從古皆有沒,念之中心焦。」とある。

※秋隨野火燔:秋になって野火で焼かれて。 ・隨:…になるにつれて。…になるにしたがい。 ・野火:野原を焼く火。野火。「野火燒不盡,春風吹又生。」と、野火は、上部の枯れ草を焼いても、根は焼き尽くさないということをいう。 ・燔:〔はん;fan2○〕やく。あぶる。

※糜滅豈不痛:(焼け)ただれれば、どうして痛くなかろうか。(しかしながら、それでもかまわない。その方がましだ)。 ・糜滅:〔びめつ;mi2mie4○●〕(焼け)ただれる。 ・糜:〔び;mi2〕ついえる。ただれる。形がぐちゃぐちゃになるまで煮る。ここは、前者の意。 ・豈:どうして…か。あに…や。反語。 ・不痛:痛くない。痛さを感じない。

※願與根連:願わくは、(中心になる)根っこと繋がっているいますように。 ・願:(…を)願う。(以下のことを)願う。願わくは。 ・與:…と。 ・根:〔こんかい;gen1gai1○○〕ね。草の根。 ・連:つらなる。つながる。





◎ 構成について

 韻式は「AAAAAAAAAAA」。韻脚は「然閑阡間泉田存山艱燔連」で、平水韻でいえば上平十五刪(山艱閑)、下平一先(阡田泉然連)。次の平仄はこの作品のもの。

○○●●○,
○●○●○。(韻)
○●●○●,
●●○○○。(韻)
○○○●●,
○●●●○。(韻)
●●○○●,
●●●○○。(韻)
●●○○●,
●○●◎○。(韻)
○○●●●,
●○●○○。(韻)
○○○●●,
●○○●○。(西:押韻しない?)
●●○○○,
●○○●○。(韻)
○○○●●,
○○●●○。(韻)
○●○○●,
○○○●○。(韻)
●○○○●,
○○●●○。(韻)
○●●●●,
●◎○○○。(韻)


2004.5.3
     5.4完

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