Huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye
                             

雪中渡江過山飮暘谷簡上人房
                                                  
                        元・薩都剌

山酒吹香出小槽,
燈前痛飮汚靑袍。
夜深夢醒知何處,
老鶴一聲山月高。




    **********************


   雪中 (かう)を渡り 山を過ぎ 暘谷(やうこく)(かん)上人(しゃうにん)(ばう)にて飮む

山酒(さんしゅ) (かう)を吹きて  小槽(せうさう)より()で,
燈前に痛飲(つういん)して  青袍(せいはう)(けが)す。
()けて 夢()め  何處(いづこ)なるかを知らんや,
老鶴(らうかく) 一聲(いつせい)  山月(さんげつ) 高し。


            ******************




◎ 私感訳註:

※薩都剌:〔さつとら(さっとら);Sa4du1la4〕元代の詩人。1305年頃~1355年頃。字は天錫(てんせき)、別号は直斎。西域の色目人・答失蛮(タシマン)氏(回教徒)の一族。書画に巧みで、詩詞に長じた。泰定帝イェスン・テムルの治世に実施された科挙に及第し、進士となるが、元末の混乱が激しくなると官界を退き、杭州に隠棲した。なお、「薩都剌」の「剌」〔らつ;la4〕字に注意(「刺」〔し(せき);ci4〕ではない)。「剌」〔らつ;la4〕字を「拉」〔らふ(ら・らつ);la1・la2・la3・la4〕字ともする。「薩都剌」の名前について、『中国大百科全書・中国文学Ⅱ』(673ページ 中国大百科全書出版社1986年北京・上海)では「薩都剌:
Sadula」となっている。(なお、『中国大百科全書』での姓名のピンイン(=ローマ字)表記では、例えば「田漢」は「Tian Han」と、姓と名のはじめの一字を大文字としている)。「薩都剌」では、姓・名という扱いにはなっていない。蛇足になるが、現代(中国)語(=普通話)では「薩都剌」〔Sa4du1la4〕は、「サードゥーラー」「サドゥラ」に近い音で言う。

※雪中渡江過山飲暘谷簡上人房:雪の中を、川を渡って山を過ぎ、暘谷(ようこく)の簡(かん)上人の家で(酒を)飲んだ。 ・暘谷:〔やうこく;Yang2gu3○●〕(東方の)日の出る処。日出づる処。 ・簡上人:簡という僧侶。 ・房:家。すみか。家屋。部屋。

※山酒吹香出小槽:山村で醸(かも)した酒は、香りを噴き出しながら、小さなおけからしみ出してくる。 ・山酒:山村で醸(かも)した酒。 ・吹香:香りが噴き出す。 ・小槽:水、酒などを入れる器。(酒や水などを入れる)ちいさなおけ。四角い桶。酒を入れた小さい桶(おけ)。薫り高い原酒(醪)から上槽でしぼって、できたての薫り高いお酒を飲む。酒を造る際、出来上った酒がここから少しずつ出てくる。また、醸造所。中唐・李賀の『將進酒』に「琉璃鍾,琥珀濃。
小槽酒滴眞珠紅。烹龍炮鳳玉脂泣,羅屏繍幕圍香風。吹龍笛,撃鼉鼓。皓齒歌,細腰舞。況是青春日將暮,桃花亂落如紅雨。勸君終日酩酊醉,酒不到劉伶墳上土。」とあり、北宋・秦觀の『江城子』に「南來飛燕北歸鴻。偶相逢。慘愁容。綠鬢朱顏,重見兩衰翁。別後悠悠君莫問,無限事,不言中。   小槽春酒滴珠紅。莫怱怱。滿金鐘。飮散落花流水、各西東。後會不知何處是,煙浪遠,暮雲重。」とある。五代・梁・羅隱の『江南行』に「江煙雨軟,漠漠小山眉黛淺。水國多愁又有情,夜槽壓酒銀船滿。細絲搖柳凝曉空,呉王臺榭春夢中。鴛鴦喚不起,平鋪綠水眠東風。西陵路邊月悄悄,油碧輕車蘇小小。」とある。船旅での酒を搾る様子に『晋書・畢卓列伝』に「卓嘗謂人曰:『得酒滿數百斛船,四時甘味置兩頭,右手持酒杯,左手持蟹螯,拍浮酒船中,便足了一生矣。』」とある。同じく、杜牧は『九日齊山登高』で「江涵秋影雁初飛,與客攜壺上翠微。塵世難逢開口笑,菊花須插滿頭歸。但將酩酊酬佳節,不用登臨恨落暉。古往今來只如此,牛山何必獨霑衣。」や、『遣懷』「落魄江南載酒行,楚腰腸斷掌中輕。十年一覺揚州夢,占得靑樓薄倖名。」とある。

※灯前痛飲汚青袍:灯火(ともしび)のところで(=日が暮れてから)大いに酒を飲んで(地位の低い官吏の着る)青い色の着物を(酔っぱらったために)汚してしまった。 ・灯前:ともしびのところで、の意。日が暮れてから、夜になって、のことを謂う。 ・痛飲:大いに酒を飲むこと。「痛」は、ひどく、はげしく、の意。 ・汚:よごす。南宋・陸游の『劍門道中遇微雨』に「衣上征塵
雜酒痕,遠游無處不消魂。此身合是詩人未?細雨騎驢入劍門。」とある。 ・青袍:=青衫で、「靑衫」:〔せいさん;qing1shan1○○〕ひとえの短い衣で、地位の低い官吏の着る服。青い色の着物。若者。書生。中唐・白居易の『琵琶行』に「淒淒不似向前聲,滿座重聞皆掩泣。座中泣下誰最多,江州司馬青衫。」とあり、南宋・陸游の『訴衷情』「青衫初入九重城,結友盡豪英。蝋封夜半傳檄,馳騎諭幽并。   時易失,志難成。鬢絲生。平章風月,彈壓江山,別是功名。」あり、南宋末・劉克莊の『戊辰即事』に「詩人安得有靑衫,今歳和戎百萬縑。從此西湖休插柳,剩栽桑樹養呉蠶。」とある。

※夜深夢醒知何処:夜が更(ふ)けてから夢より覚めたが、どこにいることやら(分からなかったが)。 ・醒:さめる。 ・何処:どこ(…か)。 ・知何処:どこにいることやら(分かろうか)。「知何処」≒「不知何処」。「夜深夢醒知何処」≒「夜深夢醒不知何処」、「夜深夢醒不知何(/処)」。盛唐・高適の『人日寄杜二拾遺』に「人日題詩寄草堂,遙憐故人思故鄕。柳條弄色不忍見,梅花滿枝空斷腸。身在南蕃無所預,心懷百憂復千慮。今年人日空相憶,明年人日
何處。一臥東山三十春,豈知書劍老風塵。龍鐘還忝二千石,愧爾東西南北人。」とあり、北宋・歐陽脩/張先の『生査子』に「含羞整翠鬟,得意頻相顧。雁柱十三弦,一一春鶯語。   嬌雲容易飛,夢斷何處。深院鎖黄昏,陣陣芭蕉雨。」とあり、清・『儒林外史』の呉敬梓は『説楔子敷陳大義借名流隱括全文』で「人生南北多岐路。將相神仙,也要凡人做。百代興亡朝復暮,江風吹倒前朝樹。功名富貴無憑據。費盡心情,總把流光誤。濁酒三杯沈醉去,水流花謝何處!」と使う。

※老鶴一声山月高:鶴が一声(鳴いて)、山の上に出ている月が高かった(ので、夜も更けているのがよく分かった)。 ・山月:山の上に出た月。盛唐・李白の『峨眉山月歌』に「峨眉
山月半輪秋,影入平羌江水流。夜發清溪向三峽,思君不見下渝州。」とある。






◎ 構成について

韻式は「AAA」。韻脚は「槽袍高」で、平水韻下平四豪。次の平仄はこの作品のもの。

○●○○●●○,(韻)
○○●●○○○。(韻)
●○●◎○○●,
●●●○○●○。(韻)
2015.1.19
     1.20
     1.21完
     1.23補
                               
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