江村即事 | |
司空曙 |
釣罷歸來不繋船,
江村月落正堪眠。
縱然一夜風吹去,
只在蘆花淺水邊。
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江村即事
釣 罷め 歸り來りて 船を繋がず,
江村 月 落ちて 正に眠るに堪へたり。
縱然ひ 一夜 風 吹き去るとも,
只だ 蘆花 淺水の邊に 在らん。
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◎ 私感註釈
※司空曙:中唐の詩人。司空が姓。複姓の一。字は文明。広平の人。虞部郎中に至る。大暦の十才子の一。
※江村即事:川辺の村を詠じた詩。 *後世、北宋・戴復古に『江村晩眺』「江頭落日照平沙,潮退漁船閣岸斜。白鳥一雙臨水立,見人驚起入蘆花。」がある。 ・江村:川辺の村。川に沿った村。 ・即事:その場のことを詠じた詩。目の前の景色や様子。即席。
※釣罷歸來不繋船:釣りをやめて家に帰ってきたが、船は繋(つな)ぎとめないままで。 ・釣:〔てう;diao4●〕釣ること。 ・罷:〔ひ(はい);ba4●〕やめる。中止する。 ・歸來:(自宅など本来の居場所に)かえってくる。 ・繋:繋(つな)ぎとめる。つなぐ。
※江村月落正堪眠:川辺の村には、月が没して(暗闇が一段と増して)ちょうど眠るのに充分相応(ふさわ)しくなった。 ・月落:月が西空に沈む。夜空が一層暗くなり、夜も更けたさまを謂う。唐・張繼の『楓橋夜泊』に「月落烏啼霜滿天,江楓漁火對愁眠。姑蘇城外寒山寺,夜半鐘聲到客船。」とある。 ・正:ちょうど。 ・堪眠:眠るのに充分である。 ・堪:〔かん;kan1○〕ものにこらえられる。…にたえる。…できる。…に充分である。…に好適である。この義での用例に岑參の『玉關寄長安李主簿』「東去長安萬里餘,故人何惜一行書。玉關西望堪腸斷,況復明朝是歳除。」や、白居易の『杏園花落時招錢員外同醉』「花園欲去去應遲,正是風吹狼藉時。近西數樹猶堪醉,半落春風半在枝。」や柳宗元の『柳州城西北隅種柑樹』「手種黄柑二百株,春來新葉遍城隅。方同楚客憐皇樹,不學荊州利木奴。幾歳開花聞噴雪,何人摘實見垂珠。若教坐待成林日,滋味還堪養老夫。」等がある。
※縱然一夜風吹去:たとえ、夜中に風が(船を)吹き飛ばしたとしても。 ・縱然:〔しょうぜん;zong4ran2●○〕たとえ…であろうとも。 ・吹去:吹き飛ばす。 ・-去:動詞の後に附いて、動作が遠ざかる、持続する感じを表す。…しさる。
※只在蘆花淺水邊:アシの花の咲いている浅瀬あたりに(流されている)程度だろう。 *後世、日本の足利義昭は『避亂泛舟江州湖上』で「落魄江湖暗結愁,孤舟一夜思悠悠。天公亦怜吾生否,月白蘆花淺水秋。」と使う。 ・只在:ただ…にあるだけ。 ・蘆花:〔ろくゎ;lu2hua1○○〕アシの花。 ・淺水:浅瀬。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「船眠邊」で、平水韻下平一先。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
○○●●●○○。(韻)
●○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2009.3.12 |
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