Huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye
玉台体


     
                     范仲淹

御街行


紛紛墜葉飄香砌。
夜寂靜, 寒聲碎。
真珠簾卷玉樓空,
天淡銀河垂地。
年年今夜,
月華如練,
長是人千里。


愁腸已斷無由醉。
酒未到, 先成涙。
殘燈明滅枕頭敧,
諳盡孤眠滋味。
都來此事,
眉間心上,
無計相迴避。






******

御街行
                 
紛紛たる墜葉(つゐえふ)  香砌(かうせい)(ひるがへ)り。
寂靜(じゃくせい)にして, 寒聲 (くだ)く。
真珠の(れん) 卷きて  玉樓 空しく,
天 淡くして 銀河  地に()る。
年年(ねんねん)の今夜,
月華は (れん)の如く,
(とこし)へに()れ  人 千里にあり。


愁腸(しうちゃう) (すで)に斷たれて ()ふに(よし)無し。
酒 未だ到らざるに, ()ず涙を成す。
殘燈 明滅して  枕頭(ちんとう) (そばだ)つ,
(あん)()くす 孤眠の滋味を。
都來 (かく)の事,
眉間( み けん) 心上より,
()ひ迴避せんとすれども (すべ) 無し。

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◎ 私感註釈

※范仲淹:宋の進士出身。989年〜1052年。字は希文。呉県(現・江蘇省蘇州)の人。

※御街行:詞牌の一。詳しくは下記の「構成について」を参照。この作品の副題は『秋日懷舊』ともする。秋の日に昔のことを懐かしく思う意。

※紛紛墜葉飄香砌:入り乱れた落ち葉が、麗しいきざはしに翻(ひるがえ)って(秋は深まり)。 ・紛紛:〔ふんぷん;fen1fen1○○〕しきりに。どしどしと。また、混じり乱れるさま。(花や雪などが)散り乱れるさま。杜甫の『貧交行』に「翻手作雲覆手雨,紛紛輕薄何須數。君不見管鮑貧時交,此道今人棄如土。」とあり、中唐・白居易の『送春』に「三月三十日,春歸日復暮。惆悵問春風,明朝應不住。送春曲江上,拳拳東西顧。但見撲水花,紛紛不知數。人生似行客,兩足無停歩。日日進前程,前程幾多路。兵刃與水火,盡可違之去。唯有老到來,人間無避處。感時良爲已,獨倚池南樹。今日送春心,心如別親故。」や、晩唐・杜牧の『C明』に「C明時節雨紛紛,路上行人欲斷魂。借問酒家何處有,牧童遙指杏花村。」とある。 ・墜葉:〔つゐえふ;zhui4ye4●●〕落ち葉。落葉。 ・飄:〔へう;piao1○〕浮かび漂(ただよ)う。ひるがえる。 ・香砌:〔かうせい;xiang1qi4○●〕花びらの散り敷いたきざはし。=香階。また、花壇。ここは、前者の意。南唐後主・李Uの『菩薩蠻』に「花明月黯籠輕霧,今宵好向カ邊去。剗襪歩
香階,手提金縷鞋。   畫堂南畔見,一晌偎人顫。奴爲出來難,ヘ君恣意憐。」とあり、同・李Uの『虞美人』に「春花秋月何時了,往事知多少。小樓昨夜又東風,故國不堪回首 月明中。   雕欄玉砌應猶在,只是朱顏改,問君能有幾多愁。恰似一江春水 向東流。 」とある。

※夜寂静,寒声砕:夜が静かに(更けてゆき、)静寂と寒気の中で、様々で些細な物音が響いてくる。 ・寂静:〔ji4jing4●●〕静寂である。 ・寒声砕:夜更けの静寂と寒気の中で、様々で些細な物音が響いてくるさまを謂う。李Uの『謝新恩』に「冉冉秋光留不住,滿階紅葉暮。又是過重陽,臺榭登臨處,茱萸香墮。   紫菊氣,飄庭戸,晩煙籠細雨。嗈嗈新雁咽
寒聲,愁恨年年長相似。」とあり、後世、毛沢東は冬の情景を『憶秦娥』婁山關で、「西風烈,長空雁叫霜晨月。霜晨月,馬蹄聲碎,喇叭聲咽。   雄關漫道眞如鐵,而今邁歩從頭越。從頭越,蒼山如海,殘陽如血。」と詠う。

※真珠簾巻玉楼空:誰もいない立派な建物で、真珠のカーテンを巻き上げて(窓の外を眺めれば)。 ・玉楼:玉(ぎょく=宝石)のように立派な建物。女性の住む建物を指す。

※天淡銀河垂地:(夜)空が澄みきって、銀河が地平線に沈み込んでいる。 ・天淡:空が白む。空が薄ぼんやりと明るくなってくる。空が暁けてくる。また、空が澄んでいる。牛希濟の『生査子』に「春山煙欲收,
天澹(=天淡)稀星小。殘月臉邊明,別涙臨清曉。   語已多,情未了,迴首猶重道。記得緑羅裙,處處憐芳草。」とある。 ・垂地:(銀河が)地に垂れているように地平線に沈んでいるさまの表現。唐・孟浩然の『宿建コ江』に「移舟泊煙渚,日暮客愁新。野曠天低樹,江清月近人。」とある。

※年年今夜:毎年のこの(秋の)夜。 ・年年:毎年。

※月華如練:月の光は、練り絹のようで(変わることがない)。 ・月華:月の光。 ・練:ねる。ここでは練り絹のことをいう。

※長是人千里:(しかしながら、心に思うあの愛しい)人は、(わたしから離れて)とこしえに遠いところのものとなった。 ・長是:とこしえに。永遠に。常に。 ・人:ここでは、心で思う、愛しい人を指す。 ・千里:遥か離れたところを謂う。

※愁腸已断無由酔:うれえ悲しむ心は、すでに極みとなって、(悲しみを酒で紛らわそうとするものの)酔う方法が無い(=酔えない)のだ。 ・愁腸:うれえ悲しむ心。唐・柳宗元に『與浩初上人同看山寄京華親故』「海畔尖山似劍鋩,秋來處處割愁腸。若爲化得身千億,散向峰頭望故ク。」とあり、范仲淹の『蘇幕遮』に「碧雲天,黄葉地,秋色連波,波上寒煙翠。山映斜陽天接水,芳草無情,更在斜陽外。   黯ク魂,追旅思,夜夜除非,好夢留人睡。明月樓高休獨倚,酒入
愁腸,化作相思涙。」とある。 ・已:とっくに。すでに。 ・断:(腸が)たちきられる。断腸。「」。 ・無由:する方法がない。する由がない。よし無し。

※酒未到,先成涙:(というのは、)酒が来ないうちに、涙があふれ出てくるからだ。(だから、酒が飲めないのだ)。 ・先成涙:さきに涙が流れる。

※残灯明滅枕頭欹:(時間が経って、灯火(ともしび)の油も減って)夜も更けて灯火(ともしび))消えかかった灯火(ともしび)は、炎が明るくなったり暗くなったりしているが、(まだ寝付けないで)枕をそばだてて。(夜遅くなっても、なかなか寝付けないで、枕を斜めにしてみたりして、寝るのに苦労しているさま。) ・残灯:油が無くなり、消えかかった灯火(ともしび)。油が泣くなり、火がすたれて消えかかった灯火(ともしび)。「灯火(ともしび)の油が減る」という表現で、時間が経ったことを表す。夕刻に準備した灯火(ともしび)の油も夜も更けるまで使い続けたので、油を使い果たしたため。中唐・元稹の『聞白樂天左降江州司馬』に「
殘燈無焔影幢幢,此夕聞君謫九江。垂死病中驚坐起,暗風吹雨入寒窗。」とある。 ・明滅:(消えかかっている灯火(ともしび)なので)ゆらゆらと、明るくなったり暗くなったりする。前出・元稹の『聞白樂天左降江州司馬』では「幢幢」。 ・枕頭:まくら。「-頭」は、名詞の接尾字として用いて、名詞形を表す。特に対応する日本語は無い。 ・欹:〔き;qi1○〕そばだてる。傾く。そばだつ。

※諳尽孤眠滋味:(このような)独り寝のあじわい(≒辛さ)は、嘗め尽くした。 ・諳尽:〔あんじん;an1jin4◎●〕嘗め尽くす。知り尽くす。 ・諳:〔あん;an1◎〕知り尽くす。充分に心得ている。また、そらんじる。暗記する。ここは、前者の意。 ・孤眠:独り寝。 ・滋味:あじわい。李Uの『烏夜啼』に「無言獨上西樓,月如鈎。寂寞梧桐深院鎖C秋。   剪不斷,理還亂,是離愁。別是一般滋味在心頭。」とある。

※都来此事:言ってみれば、これらの(悲しい)ことは。 ・都来:〔du1lai2○○〕言ってみれば。言うなれば。≒“算来”;“提起来”、“説起来”。明・湯顯祖の『牡丹亭・写真』》に「春歸恁寒悄,
都來幾日意懶心喬?」とある。

※眉間心上:(外見上では)眉間(みけん)の(表情)から、(内面的には)心の中から。 ・眉間:みけん。額の下の眉と眉の間。 ・心上:心中(に)。

※無計相回避:(これらの悲しみを)回避する方法が無い。 ・無計-:…する方法がない。処置する方法が無い。 ・回避:回避する。



                  ***********




◎ 構成について:

 御街行(『孤雁兒』ともいう)七十八字 (双調)  前後各四仄韻の一韻到底。韻式は「AAAA AAAA」。韻脚は「砌碎地里 醉涙味避」で、詞韻第三部去声

   
●○○●。(韻)
   、○●。(韻)
   ○○●○○,
   ○○●。(韻)
   ●,●,●○○●。(韻)
   

   ●○○●。(韻)
   、○●。(韻)
   ○○●○○,
   ○○●。(韻)
   ●,●,●○○●。(韻)
 
2012.6.18
     6.19完
     7.21補
     7.23

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