for the antreplenurs
新規参入の道 ー起業家の皆さんへー
 日本の新聞市場は、一見、飽和状態だ。しかし、そのクオリティーの低さと価格の高さ、経営者の無能ぶりは断トツで、競合相手は弱い。消費者を無視した紙面作りは限界に来ており、アイデア次第では新規参入者が成功を収めることは難しくない。“護送船団方式”で腐り切った新聞業界を変えるためにも、外部からの“新しい血”が是非とも、必要だ。


お人好しな日本の消費者

 日本の新聞は明らかに割高だ。例えば米国のワシントンポストは1部25セント(30円弱)で、月極め料金も日曜版も含めて10ドル60セント(約1200円)でしかない。ニューヨークタイムズも4週間の宅配料金が14ドル40セント(2000年1月現在、マンハッタン)。勿論、年中無休だ。日刊新聞のくせに業界全体がカルテルを組んで一斉休刊日を設けている日本の新聞社とは、読者に対する姿勢が180度異なる。内外価格差がこれほど大きい消費材も珍しいが、新聞社(とその系列下に収まったテレビ、活動の場を奪われるのを恐れる知識人、記者クラブを通してメディアと癒着した官僚)が巧妙に隠しているため、読者にはあまり知られていない。電気やガスなど公共料金が米国より2、3割高いだけで記事にするくせに、同じ公共の役割を担う新聞の価格が3、4倍なのに記事化しないとは、何たることか。『日本のコメは高い』と騒ぐ前に、『日本の新聞は異常高』とトップで報じるのが公企業のあるべき姿なのは言うまでもない。週刊誌やNHK、そして普段は規制緩和を偉そうに論じる学者どもまでがグルになっているからタチが悪い。

 大本営発表まがいの情報に年5万円もの大金を投じる“お人好し”な消費者にも責任はある。日本の1人あたり発行部数は主要ないわゆる『先進国』のなかで圧倒的にトップ(98年調査で0.57紙。米国0.20、仏0.14)なので、可処分所得に占める新聞支出額の比率は、単純計算でも米国の10倍程度にはなる。その割に、それだけ社会問題に精通していたり教養が高かったりする人が多いかといえば、そうでないことは日本人自身が自覚しているはずだ。いつまでも“お人好し”であることを望む人は少ない。このギャップに、大きなビジネスチャンスが眠っているはずである。

 現状の消費者搾取の際たるものが、『マーケティングの欠如』だ。日経新聞は、どの面がどれだけ、どんな層から読まれているか、といった簡単な調査さえも実施していない。私は最初にこのことを編集局長に質問して答えを聞いた時、本当に驚いた。何も、読者ニーズに全部合わせるべきだと言っている訳では全くない。ニーズも知らずに、『書いたんだから読め』といわんばかりに割高な定価で押し付ける姿勢に高慢さを感じ、そんな状態でも平気で経営が成り立ってしまうという“ぬるま湯”な現状に驚き、失望したのである。

 ぬるま湯の原因は、再販規制と宅配制度、記者クラブ制度といった規制を背景として、戦後、事実上の新規参入者がいなかったことに尽きる。つまり、今求められているのは、通信料金市場における、NTTに対する「東電・ソフトバンク連合」のような存在だ。いくら愚かな読者でも、割安で高質な選択肢を提示されれば、さすがに搾取されていることに気付き始める。

 再販も記者クラブもない米国では、1982年に新規参入した全国紙「USA TODAY」が読者に選択肢を与えた。読者が一日何分を新聞に費やせるかから調査を始め、読者層のターゲットをベビーブーマーに絞るなど、徹底したマーケティングをやった。日本の新聞の紙面は、馬鹿の1つ覚えのように社会面、政治面、経済面、生活家庭面…と決まっていて差別化できないでいるが、USA TODAYは、ニュース、ライフ、マネー、スポーツの4つに集約、エロ・グロも排した。結果的に、大前研一氏が「新聞としてのクオリティは極めて高い。文章はうまいし、写真・図表・グラフなどを多用しているため非常に分かりやすい紙面になっている」(SAPIO 98/11/11)と絶賛するほど高質なものとなり、読者にも受け入れられている。


「紙の時代」の終焉

 それでは“護送船団”状態の日本では可能性はないのかといえば、今はそんなことは全くない。日本の新聞市場を“ロックイン”してきた再販も宅配も、規制撤廃で、早々に崩れる兆しはある。しかし、もはや情報革命が、それらを「どうでもよいこと」にし始めている。

 紙の時代は終わった。紙は「主」から「従」へと地位を落とす。インターネット技術を核としたデジタル情報化時代には、情報はデジタル状態のままパソコンに蓄積されたほうが後の保管や検索にも都合が良い。新しい新聞社は、グラフや写真を多用した分かり易い「WEB新聞」を主体とし、必要な情報のみプリントアウトして読む、つまり紙は補完の役割となるだろう。現実的には、新・新聞社は拡材として新規加入者に高精度プリンターを貸与すると良い。すべての情報がプリントアウトされている現状より、読みたいところだけプリントアウトされているほうが便利でゴミも出ない。

 カスタマイズ機能によって、例えば「スポーツ欄のみ」や「ベンチャー情報のみ」を自動的にプリントアウトされる仕組みにすることも簡単である。コストは、宅配のための販売会社や印刷工場を維持するよりも、ケタ違いに安く済むのは計算するまでもない。かつて日本の新聞の腐敗を憂えた本多勝一氏はジャーナリズムを追求した日刊新聞の創刊準備を進めていたが、主に販売店網など流通の問題で実現に至っていない、と著書で述べている。しかし、時代は「流通」を激変させ、ダイレクトで消費者に情報を送れるようになった。インターネット人口が孫正義氏の予言通り、2003年に8000万人になるとしたら、既存の紙新聞などを読んでいる人はバカにされる日も遠くない。

 予想される障害としては、排他的な記者クラブ制度くらいだが、これは法的根拠が何もないので、合法的に攻めれば何も問題はない。むしろ、クラブ改革のための良い機会になるだろう。また手っ取り早い方法としては、経営不振にあえぐ毎日新聞あたりを買収する手もある。

 記者や編集者を集めるのは至極、簡単だ。戦後五十年以上も変化がない旧態依然とした現状に不満を持つ現役記者は、腐るほどいる。志半ばで辞めていったOBも多い。募集をかければ、優秀な記者が簡単に集まるだろう。特に、新規参入企業のブランド力が高ければ、なおさら簡単だ。

 玉石混合のネットの世界では、ブランドと権威がモノを言う。ソニー殿、ソフトバンク殿、そして外国メディア殿、是非とも参入を検討してくれませんか!

 →ホームへ