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バッドサンタ / Bad Santa

Terry Zwigoff

2003 USA/D 98 Min. 劇映画

出演者

Billy Bob Thornton
(Willie - 飲んだくれの金庫破り、泥棒サンタ)

Tony Cox
(Marcus - 泥棒)

Brett Kelly
(肥満児)

Cloris Leachman
(肥満児の祖母)

Lauren Graham
(Sue - バーテン)

Lauren Tom (Lois)

Bernie Mac (Gin)

John Ritter
(Bob Chipeska - 警備責任者)

見た時期:2004年11月

ストーリーの説明あり

結婚している間はバッド・ガール路線だったアンジェリーナ・ジョリーは、離婚後半ばいい娘路線に変わりましたが、その後も路線変更無しでバッドマン路線を歩み続けている前亭の主演です。バッドマン路線もここまで行くと確信犯、天晴れと認めて呆れてあげないと申し訳ないぐらいです。

クリスマスと言えばキリスト教のお祭りということになっていて、バッド・サンタもサンタクロースの話です。アメリカで宗教を直接扱う作品にはけっこう神経が使われていて、アメリカ人の多数派、キリスト教の人が楽しめるような趣向になっていることが多いです。映画制作に携わる人材の中にはユダヤ系の人も多いのですが、ユダヤ人の災いを描く時は時代をずっと遡った歴史上の出来事などになっていたりします。現代の話でユダヤ教を扱う場合は小さ目の作品で、ユーモアや風刺になっていることが多いです(バッド・サンタマトリックスのような特殊効果に大金をかけた作品ではないという意味では、小さ目の作品であり、それでもアメリカではヒットしたようです)。日本人は戦後の50年宗教と直接向き合う必要がほとんど無く、もっぱら経済中心で生きていましたので、他の国で宗教が重要問題だというのはあまり身近な感覚として分かりません。しかしバッド・サンタでは、ポリティカリー・インコレクトなエピソードが続出し、のっけからユダヤ人発言が出て来ます。

主人公のウィリーはユダヤ教の家に生まれたので、クリスマスを祝ったことが無いのです。国中が楽しそうにプレゼントを買ったり、家族が久しぶりに集まったりするあのクリスマスを経験できなかったのです。ですから、クリスマスに対する感情はかなり屈折しています。

私はキリスト教でもないのに子供の時は親がクリスマスをやってくれたので、楽しい思い出がいくつかあります。子供であるというのは今にして思うと楽しい仕事でした。こちらから何も期待していなかったのに、ある日予告無しにプレゼントが出て来るし、その日の夕食にはケーキやアイスクリームが出て来たのです。子供だから12月24日が何の日かなどは理解していません。カレンダーの数字も普通の色のままです。おもちゃなどをもらって年末を過ごし、1月1日になると、またおいしい物が出て来ました。日本人なので宗教色はゼロでしたが、家族が集まって・・・ということで、楽しかったです。

そういうのをウィリーは味わっていなかった・・・。

欧州でクリスマスというのは、人によっては拷問のようなもの。ウィリーが羨ましがるような事が全然起きない人もいます。例えば小説の方のブリジット・ジョーンズの日記(第1巻)をご覧下さい。やれプレゼントだ、クリスマス・カードだとノイローゼ+ヒステリーに近い騒ぎです。ドイツの事情もやや似ています。

ウィリーを羨ましがるキリスト教徒がいるかも知れません・・・。

アメリカにはポルノでもないのに年齢制限がつきそうな、スクリーンで言っては行けない言葉続出、やっては行けない行為続出という作品が時たまあります。わざわざそういうシーンを連続させて、入場制限に持ち込む監督もいます。この作品などはその典型。お金を出したドイツではわりとあっけらかんと公開されましたが、もし年齢制限の情報が入ったらお知らせします。ドイツ語の場合翻訳で丸くするという手があるので、「台詞が悪い」と言って制限を受けそうな場合は予防策があるわけです 画面に写るシーンに問題が出る場合はカットという手もあり、ドイツでは劇場用の作品にはさみが入ることは多いです。そうやってどうにか劇場公開にこぎつけるわけです。それでよく映画雑誌の投書欄にオリジナル版が見たいとクレームが来ています(以前はカットされたシーンがあるかどうかが検索できるサイトもありました)。とにかく私はこれをドイツの普通の映画館で見ましたし、上映時間も午後8時などと、入場制限があるとは言い難い時間帯でした。本当にヤバイ作品は特殊な映画館、映画祭、あるいは夜遅くに上映されます。

後記: ドイツはノールウエイの11歳に次2番目に緩い12歳に落ち着いたようです。英語の分かる人の多い国では18歳などという国もあります。カナダではフラン語地区が13歳、それ以外の地区が18歳。日本は12歳ですが PG という但し書きが付いています。PG って何だろう。

ドイツがなぜこんなつまらない作品にお金を払ったのかは???です。コーエン兄弟の名前があるからなのかも知れませんが、スターもおらず、監督の腕の冴えは見えなかったか、カットされた部分に隠れていたのか、翻訳の段階でがらっとイメージを変えてしまったか・・・?

タブーに挑戦している作品ですが、《果敢に挑戦》との賛辞は出ません。主演のムサイ男の欲求不満を満たすだけの目的で作られたのか、あるいは宗教戦争を起こしたくて作ったのかとかんぐってしまいますが、そのどちらにしても結果は湿った花火のようです。宗教戦争はメル・ギブソンの方が大きく斬り込んでいます

タブー挑戦には努力の跡が見えます。アル中男がサンタクロースだ、サンタクロースは泥棒だ、サンタクロースが子供を憎んでいる、自分はクリスマスは祝ったことが無くひがんでいる、子供相手のサンタクロースの仕事中に酒を飲む、サンタクロースの仕事中に小便をする、サンタクロースの仕事中に店にいた女性とアナル・セックスをする、小人が出てくるが The station agent と扱いが全然違う、太った子供が出て来るが尊厳を持って扱われること無くひどい目に遭う等など、とにかくウォルト・ディズニー支持者からは徹底的に嫌われるようにできています。まるでお客さんを映画館から蹴散らすのが目的で作られたような作品です。

3人組の泥棒の話で、アル中男、アフリカ系小人、その彼女の3人で毎年クリスマス・シーズンに大金をごっそりやるのです。クリスマスが近づくとショッピング・センターにサンタクロースとして雇われ、店の内情を探っておいて、町が休暇に入ったところで売上金をごっそり取ってトンズラという趣向。これまで全米のあちらこちらで成功しています。

ごっそり入った金はしかしアルコールに消えてしまうらしく、毎年暮れが近くなるとまた一仕事。こういうひどい男に興味を持つ人間がこの世に2人。大のサンタ・ファンだという女性とはめでたくセックス。彼を本物のサンタだと決め付けてどこまでもついてくる肥満児には住む家まで提供されるのです。嫌われることに慣れていたサンタは珍しく好かれ、新しい状況に戸惑いながらも、徐々に仲良くなって行きます。最初追い払うのに一生懸命だった肥満児も、食事を作ってくれたり、一緒に話したりしているうちに打ち解けて行きます。ある日その子が近所の子供にいじめられてあざを作って帰って来たので、アル中サンタもなぜかやる気になって、少年のトレーニングを始めます。それ自体はあまりうまく行きませんが、少年はそれを機に発想の転換。いじめっ子に抵抗を試みます。とは言ってもすぐには上手く行かない。見かねてバッド・サンタがいじめっ子を蹴散らします。

そんなこんなでこれまでかたくなだったバッド・サンタは人生を普通の目で見られるようになり、自殺を決定。「自分の人生はろくな物ではなかった」と悟ってしまったのです。遺書を残して車の排気ガスで自殺をしている最中にまた子供がやって来たので中断。仕方なく遺書を子供に手渡して、また生き始めます。

そして今年の仕事を始めたところ長年の仲間に裏切られ、殺される寸前。ところが犯行をばらした遺書がちゃんと言われた通り警察に届いていたので、警官が張り込んでいて、相棒カップルは御用。サンタは少年にプレゼントを届けるために車で逃亡して家に向かいます。家のまん前で警察に8発撃ち込まれバタン。九死に一生を得て改心。警官が大勢束になって武器を所持していないサンタを子供の目の前で撃ったということで、どうやら司法取引か何かが成立した様子。ハチャメチャ版のクリスマス・キャロルといったところです。

主演には大物俳優が予定されていましたが、ジャック・ニコルソンは恋愛適齢期とぶつかり断念。ビル・マーレーはロスト・イン・トランスレーションのために降り、ビリー・ボブ・ソーントンに決定。2人は本当にこの役に興味を示していたそうですが、実際には出演の障害になった作品で大きな賞ノミネートされたりしており、出ないで得をした形です。ソーントンはこれに出演して《やっぱりあいつはそういう男か》と思われたかも知れません。しかし彼は人の評判をいちいち気にして生きている人ではないらしく、私も全然彼のことは心配していません。

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