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Kevin Macdonald

2009 USA/UK/F 127 Min. 劇映画

出演者

Ben Affleck
(Stephen Collins - 上院議員)

Robin Wright
(Anne Collins - スティーヴンの妻)

Maria Thayer
(Sonia Baker - コリンズ議員の事務所の職員)

Jeff Daniels
(George Fergus - コリンズの知り合いの議員)

Russell Crowe
(Cal McAffrey - ワシントン・グローブのベテラン記者、コリンズ議員の友人)

Rachel McAdams
(Della Frye - ワシントン・グローブの若手ブロガー記者)

Helen Mirren
(Cameron Lynne - ワシントン・グローブの編集長)

Harry Lennix
(Donald Bell - カルが親しくしている刑事)

Michael Berresse
(Robert Bingham - ヒットマン)

Jason Bateman
(Dominic Foy - ポイント・コープ社宣伝担当)

David Harbour
(ポイント・コープ社員)

Tuck Milligan
(ポイント・コープ社重役)

Viola Davis
(Judith Franklin - 検死医)

見た時期:2009年11月

ストーリーの説明あり

ネタバレに近い部分があります。見る予定の人は退散して下さい。 目次へ。映画のリストへ。

★ 英国のテレビ・ドラマの映画化

元の番組を見ていないのでそちら抜きの話になります。英国のテレビ・ドラマは力作かと思いますが、たまに目にした物は枠の時間に合わせるため間延びしていたりします。俳優の力量は十分見えるのですが、盛り上げ方はハリウッドの方が長けているのかとも思います。時々英国のラジオ・ドラマを聞きますが、そちらでも似たような感想を持っています。問題作も扱い、並々ならぬ力量を感じるのですが、ポイントを定めた盛り上げ方でなく、長い時間深刻さをキープしたまま進むため、視聴者には間延びしたような印象を与えます。

消されたヘッドラインの元ネタは英国です。劇映画化に際しては英米、オーストラリアのスターを配置し、舞台はアメリカにしてあります。なので焦点はいくらかずれます。アメリカ政界には大きく分けて少なくとも2派あります。対立する軸は海外への影響力を大々的に拡大するか、あまり大々的にせず、国内や近隣に目を向けるか。概ねその線に沿って議員の意見が分かれます。その辺がいくらか英国と事情が違いますので、簡単にあちらのストーリーをこちらに持って来て成立するのかは分かりません。

劇映画化が決まった時ラッセル・クロウの役はブラッド・ピット、ベン・アフレックの役はエドワード・ノートンで予定していたそうです。ストーリーもジャーナリストのスタンスを掘り下げた英国版と比べると焦点がずれているそうで、この2人を主演にしていたら違った作品になっていたと思われます。骨子が私の見た劇映画版のままでエドワード・ノートンが主演ですと、ベン・アフレックで上手に隠しておけた秘密が早くばれたり、意外性が減ったりするかも知れないと思いました。

劇映画の方はそれほど厳しい深刻さは無く、スターの顔が見られる典型的なハリウッド映画です。触れられているテーマは言葉だけを見ると重大ですが、雰囲気は良く見る政治、犯罪スリラーです。ただ、元ネタの英国版が放映されたのは2003年半ば。ということは準備をしたのは2001年の大事件イラク戦争の中心部分の戦闘の時期の間にはまっていたと思われます。ですからテレビ版公開の時はそれなりに気合が入っていたのではないかと思います。

ブラッド・ピットは脚本家の交代、途中で起きた映画関係者の大規模ストなどの理由もあり、手を引いています。ノートンも企画の延期が響いてスケジュールの調整がつかず断念。元ネタを見ていないので、ピット、ノートン組が合っていたのかクロウ、アフレック組が合っていたのかは分かりません。ただ、劇映画版のキャスティングは2007年頃から具体化しており、映画はその後作られたので、2003年からはかなり時間が経っており、テーマの持つタイムリーさは殺がれています。

★ ストーリー − 観客だけが知っている

冒頭に2つの犯罪が起きます。1つはホームレスの男がヒットマンに撃ち殺され、目撃したピザの配達員も撃たれて意識不明になる事件。警察では麻薬中毒男のいざこざとして扱われます。実はこの男はこそ泥で、ワシントンDCの金持ちそうな人物からアタッシュケースなどをかっぱらい、後で持ち主に買い取らせることを商売にしていました。

もう1つはベン・アフレック演じる上院議員スティーヴン・コリンズの事務所で働くソニアが地下鉄の構内で転落し、轢死。当初は自殺として扱われますが、自殺するにしては直前陽気だったため、後に関係者の間では殺されたかも知れないという話になります。

★ その後のストーリー

ホームレスが殺された事件は取りあえず麻薬関係のいざこざとして処理されます。ワシントン・グローブ社のベテラン記者カル・マカフリーはホームレス の事件を追い始めます。警察が現場検証をしている所へ取材に行き、知り合いの刑事に情報を貰い、現場付近のトンネルのあたりに若い女性がいるのを目撃。そこから仕事を始めます。

同じ社の女性記者でブロガーのデラはソニアの轢死事件を追います。スティーヴンは既婚者で、ソニアと不倫関係にあったため、メディアのバッシングが始まったところ。

デラはカルとスティーヴンが学生時代からの友人だと知って、カルに情報をよこせと言ったりして、2人はあまり仲が良くありません。2人のジャーナリストとしての姿勢に世代の差があることも1つの理由。両方を担当しているリン編集長は何とか2人の間のバランスを保ちます。

スティーヴンは最近ポイント・コープ社に関わる軍事予算不正疑惑を追っており、委員会の審問が開かれる直前に自分の事務所の職員ソニアの死の報告が入ります。直前の様子から自殺は考えにくいというのがスティーヴンの見解。ポイント・コープ社は以前は正規軍の兵士が行っていた仕事を民営化した際、怪しげな取引をして仕事の委託を一手に引き受けた疑いが持たれていました。ソフィー殺害の可能性も視野に入って来ます。

この話と麻薬中毒のこそ泥の話は、こそ泥が盗んだアタッシュケースで繋がります。ソニアがカフェである男と話している最中にこそ泥が鞄を盗み、そのとばっちりでこそ泥が殺されたようなのです。こそ泥は中に入っていた写真を抜き取っていました。抜き取った写真をその後所持していたこそ泥仲間の女がカルに写真を渡します(このあたり描き方が雑で、少し飛躍します。しかしその女というのが最初カルが出向いた現場近くにいた女)。

最初に死体になったこそ泥の持っていた携帯の番号を死体置き場で掠め取ったり、ソニアの家族関係がこじつけっぽかったり、いくらか強引でずさんなシーンもあるのですが、何とか結びついた2つの事件を合わせると、ソニアとスティーヴンの不倫に不自然さがあり、ソニアは様子を探るためにスティーヴンの所に送られたスパイだということが判明します。専門用語で言えばハニートラップ。スティーヴンは知り合いの議員からソニアを紹介されて職員に採用していますが、彼女には多額の負債があり、ポイント・コープ社から資金援助を受けています。つまり、ポイント・コープ社に取って都合の悪い仕事をしている議員スティーヴンの所に色仕掛けも計算に入れて女性を配置してあったということです。

★ 狂って行く予定

もしソニアが死ななければ、スティーヴンがポイント・コープ社調査委員会で強く追及を始め、適当な時期にソニアとの不倫をネタにスティーヴンを脅し、追求の手を緩めさせるか、言う事を聞かなければ失脚させるという流れが準備されていたのでしょう。ところがソニアは死んでしまった。

スティーヴン自身が殺人ではないかと疑っていた事件ですが、駅の防犯カメラを見ても死角に入っていて、彼女が誰かに押されて死んだなどという証明はできません。謎は彼女が死んだため発生します。

最初いくらか対立もし、別な事件を割り当てられたこともあり、別々に調査をしていたカルとデラですが、デラが生き残ったピザ配達の目撃者に会いに病院に行ったところで、ピザ配達人がスナイパーに射殺され、警護についていた警官も負傷します。かろうじて生き残ったデラはショック状態。遅くともこれを機に協力体制に入るカルとデラ。

デラはピザ配達人の病室に向かう途中1人の男とすれ違っています。地下鉄の防犯ビデオを見直したデラはそこにその男が映っているのを発見。スナイパーは目撃者を消してしまった・・・。

さらに分かったのはソフィーの妊娠。それを機にスパイ稼業から足を洗いたくなったのがそもそもの番狂わせのきっかけになった様子。そしてソフィーを消す必要を感じている者が浮かびます。そしてスナイパーの素性が明らかになると、事件は意外な方向に。その上カルとスティーヴンの妻はかつてスティーヴンとカルの間で難しい選択をしたことがありました。

という風に最初表に表われていたのとは違う事情が浮かび、ショーダウンに向かいます。

★ ベン・アフレックという人物

意外と大人物なのではと思えるこのごろです。まだ若いのにいきなり友達と一緒に脚本でオスカーを取って登場。先に大きな賞を取ってから活躍が始まるという普段と逆の展開でした。

★ アフレックのの経歴

芸能界には子供の頃入っており、成人するまでに数本に出演しています。18歳で入ったデイモンに比べこの世界では先輩ですが、年齢的にはデイモンの方が2歳お兄さんです。ご存知のように1997年出演したグッドウィル・ハンティング 旅立ちでオスカー受賞。25歳でした。それまでに出演した作品で私が名前を知っているものはありません。

マット・デイモンとは古くからのからの仲良しだそうで、受賞も共同執筆だったため一緒。その後のデイモンの大出世を見ていて多くの人がデイモンに才能があり、アフレックは友人について来ただけといった印象を持ったかも知れません。

私は2000年にマネー・ゲームを見るまで2人にさほど関心が無く、一応有名人として名前を知っていただけです。オスカーは1997年に製作された作品に与えられたようなので、受賞は1998年だったのでしょう。デイモンの作品は結構見ていますが、1番古いのがオスカー受賞直前のレインメーカーです。この時彼は主演でした。その後もずっと彼を主演にした大きな作品が続いています。シリーズになったものもあります。

それに比べるとベン・アフレックの方はいくらか地味に思えます。数はマット・デイモンに引けを取らないぐらい揃っていますが、出演していても主演でなく、出演時間が非常に短いものもあれば、他の大物スターを引き立てるための作品も結構多いです。ベン・アフレックという人をわざわざメインに立てて作った作品と思えるもので私が見たのはハリウッドランドぐらいです。

彼はちょい役やカメオ出演も嫌がらないようで、その他大勢として出ても出番ではしっかり存在を主張しています。その良い例がマネー・ゲームスモーキン・エース 暗殺者がいっぱいなどです。また、マット・デイモンの出ている作品に自分も出るということもあるようです。

有名大学にも行き、次々と大きな主演映画を作って行く親友を見ながら、ベン・アフレックは何を考えたのでしょうか。2人が喧嘩をしたという話は聞いたことがありません。ただ1度、アフレックがジェニファー・ロペスと付き合い結婚の話が出た時にはデイモンのみならず友人知人が総動員で反対しています。

どれほどその意見に沿ったのか、あるいは単に2人の間で話がつぶれたのか、あるいは断腸の思いで別れたのか、当時のゴシップを追っていなかったのでさっぱり分かりませんが、その後2人はそれぞれパートナーを見つけ、それなりに新しい人と上手く行っているようです。私はひそかにアフレックとしてはおもしろい人選だ、ロペスとしては渋い趣味だと思い、うまく行けばいいと祈っていました。ロペスの人選は3度ともおもしろいと思え、パフ・ダディーの時も破談になって気の毒だと思っていました。ま、ジョージ・クルーにーなどと一緒になるよりは良い選択に思えました。

ま、出た映画の事ではあまり話題にならず、関係のないゴシップで新聞に書かれることの方が多いアフレックでしたが、なぜかあまり気にかけている様子も無く、いつの間にか時が経って行きました。デイモンがどんどん名を上げる中、アフレックは映画を撮る構想を練っていたようです。

ハリウッドランドを見て間もなくアフレックが監督をし、弟が主演の作品を見ましたが、非常に手堅い作り。伊達に年を取ったのではない、完成度の高い作品ができました。それでちょっと調べてみたら何と、彼は1993年にすでにちょっとふざけたタイトルの作品を監督していました。2作目が私も見た Gone Baby Gone。弟のケーシーもそれまでぱっとしない役で色々な作品に出ていましたが、アフレックがマット・デイモンの七光りで適当な作品に出ており、弟がその七光りで端役をもらっているような印象でした。そう考えると Gone Baby Gone はぶっ飛びます。弟も非常に手堅い演技をするきちんとした俳優でした。彼にも最近運が向き始め、オスカーの候補にも上がりました。兄弟の仲が悪いという話も聞いたことがなく、アフレックという人は長期の友情に向いた人なのかも知れません。

どうやら思ったような人生になりつつあるらしく、その後監督作品がさらに増えています。Gone Baby Goneハリウッドランドを見た感想ですが、クリント・イーストウッド風の手堅さが感じられます。とまあ最近彼の株がどんどん上昇しているのですが、そんな折見たのが消されたヘッドラインでした。

見ようによってはアフレックのための作品ではなく、ラッセル・クロウを引き立てるための作品だったのかも知れません。クロウはスターに祭り上げられたことを嫌がり、用の無い時はオーストラリアに帰ってしまったり、追いかけて来たアメリカ人大スターを追い返したり、人に乱暴を働いたりと、荒れに荒れた生活を送っていました。しかしスターとして周囲が決めてしまった人なので、彼にはかなりのお金がかかっていたのでしょう。何とかいい役をオファーして連れ戻そうとした人もいました。最近暫く聞かないと思っていましたが、原節子のような完全引退はしないようです。なので消されたヘッドラインはクロウを中心にした作品と取っても差し支えないでしょう。しかしアフレックの役どころは決して端役ではありません。アフレックがいないと車の片輪が無い自動車のようなものです。そしてアフレックに対して世間が持っている印象を上手に生かしてあります。

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