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2010 D/F/UK 97 Min. 劇映画
出演者
Мила Йовович/Milla Jovovich
(Alice - 元アンブレラ・コーポレーション(以下《傘組織》と略す)の入り口をガードする傭兵、人体実験に使われ超能力を得る、現在は逃亡・追跡中)
Ali Larter
(Claire Redfield - 3作目で避難中だった生存者)
Wentworth Miller
(Chris Redfield - クレアの兄)
Shawn Roberts
(Albert Wesker - 傘組織の大ボス)
Spencer Locke
(K-Mart - 3作目で避難中だった生存者)
Sienna Guillory
(Jill Valentine - 第2作で傘組織で停職中だった傭兵)
Kim Coates
(Bennett - 刑務所に立てこもっていた生存者、元プロデューサー)
Norman Yeung
(Kim Yong - 刑務所に立てこもっていた生存者、元ベネットの職業訓練生)
Sergio Peris-Mencheta
(Angel Ortiz - 刑務所に立てこもっていた生存者、技術屋)
Boris Kodjoe
(Luther West - 刑務所に立てこもっていた生存者、かつてのバスケット・ボールのスター)
Kacey Barnfield
(Crystal - 刑務所に立てこもっていた生存者)
Fulvio Cecere
(Wendell - 刑務所に立てこもっていた生存者、クリスの監視役)
Ray Olubowale (斧を振り回す大男)
見た時期:2011年3月
これほど悪いタイミングで見た映画はありません。半月前1000年に1度という大災害が日本を襲い、地震は文字通り全国を襲い、津波は太平洋側の半分を襲い、原子炉の事故は長期的には全世界を襲った災厄。特に津波は恐ろしい光景でした。目にはっきり見える津波、目に全く見えない原子炉の放射能、そして僅かな時間見え、直後に津波に飲み込まれて分からなくなってしまった地震の被害。
長い間日本は地震対策に知恵を出し、できる限りの事をして来ました。今回海外ではそれほど大きく言われていませんが、マグニチュード9の地震を生き延びた建物は多く、破壊の多くが津波が原因でした。地震対策自体には成果も見られました。大きく揺れたのに倒壊しなかったビルが注目されていないのは、津波の被害が想像の範囲を越えていたからでしょう。
津波は壊滅的なエネルギーを発し、伝統的な家屋、鉄筋でない新しい建物を根こそぎ押し流してしまいました。堤防もあっという間に決壊ではなく、上を飛び越されてしまいました。その破壊力が凄まじく、多くの建物が地震を生き延びたという喜ぶべき事実も次の災厄に上書きされてしまいました。
津波は永遠に続くものではありません。大きな犠牲を要求しますが、ある程度の時間が経てば静かになります。しかし今回は深刻な置き土産をして行きました。電気系統が津波で流され機能しなくなったため、原子炉の冷却が不能になり、放射能が外に出てしまいました。これから長い間日本はこの問題と静かに戦うことになります。
この現実を知った人がバイオハザードIV アフターライフを見たらどう思うでしょう。非常に嫌な気持ちになります。震災が無ければバイオハザードの4作目というだけで、「また作品のスタイルが変わった」とか、「ああ、日本が冒頭の舞台になっているんだ」とのんきな事を言っていればいいです。
しかし現実の地震、津波を体験した人、中継を見た人がバイオハザードIV アフターライフを見ると、2010年に日本の出来事をあらかじめ予想していたような錯覚に陥ります。企画は2008年にスタートしているので、地震の事など知る由も無かったはずです。万一この記事を直接被災した人や、関係者、震災に心を痛めている人が読んでいるなら、この先を読むのは考え直してください。
このシリーズも4作目に入り、どうも結末の様子を見ると5作目もできそうです。
まず冒頭に出て来る駐車場の瓦礫の山が行けません。あまり神経質になるのもどうかと思いますが、つい1日、2日前まで、東北の瓦礫の山を何度も見た後ですと、ついそちらの方に考えが行ってしまいます。
3作目から5年後。どういうわけか東京の渋谷に傘組織の根拠地ができていて、、シェルブールの雨傘のようなシーンから始まります。この作品は元から描写面では色々な映画をパクる作戦を取っており、ストーリーの方は我が道を行く手法を取っています。4作目は日本にもバイオハザードが発生し、一般の人はゾンビになっているという設定です。
冒頭のアクション・シーンは渋谷で、クローンとして複数のアリスが登場し、傘組織本部を襲撃します。1人、2人、アリスがやられても、次から次から出て来るので、彼女を絶滅できず、本部は破壊されます。ボスのウェスカーは部下を見捨てて飛行機でトンズラ。最後っ屁のように部下がまだいる本部を爆破。都心はめちゃめちゃ。(襲撃シーンを見ていて何となくヨボビッチ自身が主演のウルトラヴァイオレットを思い出してしまいました。)
アリスは部下(自分のクローン)を戦わせ、自分はウェスカーの飛行機に忍び込み、ウェスカーと対決。ここでウェスカーに彼女の超能力を消してしまう薬を注射されてしまいます。そのまま飛行機は富士山に激突。決着はつかず、アリスは助かり、ウェスカーはまたトンズラ。
富士山衝突の半年後。アリスの次の目的地はアラスカ。彼女はそこにアルカディアという土地があり、そこだけは感染されておらず、人間が以前のように生きて行けると考えています。ラジオ・アルカディアが「逃げる先がある」と放送していました。前作の最後、アリスは生き残った人を先にアルカディアに向かわせ、自分はその後を追うつもりでした。で、たどり着いて見ると、人の姿は殆ど無く、唯一出会ったのは先に逃げたクレア。ところが変な機械を身につけていて、アリスの事は思い出せない様子。
クレアの身を拘束し2人はアメリカ西海岸へ向かいます。目指すはロサンジェルス。ある刑務所の屋上に「助けてくれ」の文字と生存者の姿(このシーンが東北で SOS や HELP の文字を上空のヘリコプターに見えるように書いて救いを求めていた実際の被災者とダブり、複雑な気持ちでした。平時なら屋上に文字と言えばせいぜい考えるのは28日後・・・のショーダウンのパクリだとか、避難して助けを求める時誰でも思いつく手段だ程度のことですが、今回ばかりはそんなゆったりとした状況ではありません)。このごく僅かの生存者以外で動く者は全てゾンビ。
ここでまたため息が出てしまうのが、ロサンジェルス上空から見た景色。気仙沼、仙台を思わせる状態でもあり、原発の建物の火災後を思い出さずにはいられません。よくもまあここまで似たものだと感心するべきなのか、今は日本人は敏感になっているから、何でもそういう風に見えてしまうのだと考えるべきなのか。他の人に聞いてみないと判断ができませんが、今こんな時期にこの作品を日本人に見ろと勧める気にはなりません。
生存者に助けられながら刑務所の建物の屋上への胴体着陸に成功し、2人は数人の生存者と挨拶を交わします。ここの生存者は「アルカディアは船の名前で、その船から『ここに来れば助かる』式の放送があり、船はロサンジェルスの近くにいる」との意見。アリスの飛行機はまだ使えますが、定員がパイロットも含め約2名。数人とは言え、5人を上回る生存者を運ぶことはできません。
そこへクレアの兄だと名乗る囚人が口をはさみます。彼は囚われの身で、「囚人と間違えられて拘束されている」と主張。演じているのは全身刺青だらけだったプリズン・ブレイクの弟。本人曰く特殊部隊の男で、ここから抜け出して船にたどり着く方法を提案します。アリスの判断で彼を自由の身にし、彼の作戦に乗ることに決定。
取り敢えずは敷地内でこれまでこもっていた場所と違う所へ行き、武器を取って出ようという話になりますが、ここで行く手を水にさえぎられます。潜水をして別な部屋に入り、武器を取っていざ出陣。色々難関があるのはコンピューター・ゲームのためか。
皆が陸路から船を目指したのは、元プロデューサーの超エゴイストがアリスの飛行機を奪って1人船に向かったため。この男確かに船にたどり着いたようです。
アリスたちも首尾よく船に乗り込んでは見たものの、制御室らしき場所にも大きな部屋にも人の姿がありません。そこで発見したのは傘のマーク。ここは傘本舗の倉庫だったのです。生存者を助けるための船ではなく、生存者を捕獲して、人体実験に使うための船でした。それはアラスカも同じ事。せっかく苦労して遠路たどり着いたら、傘組織に捕まってしまうという趣向になっていました。ちょうどそれに気づいた時に現われた元プロデューサーと大ボスのウェスカー。この時ウェスカーが求めていたのはアリスの DNA。彼自身肉体改造をしていたのですが、上手く行っておらず、自分をコントロールし切れない状態になっていました。そこへアリスの健全な DNA を混ぜて、より良い DNA にしようという企みでした。
ここから期待通りの対決があり、ウェスカーはまたトンズラ。対決シーンはマトリックスをパクっています。しかし今度ばかりは乗った飛行機が爆発して、昇天。自分が仕掛けたはずの爆弾がなぜか自分の飛行機に置いてありました。
なので彼の再登場はプリクウェルにしないと無理。次の事を考えて、死んだと思われたルーサーも助かるようになっています。続編が作られるのはほぼ確実のようで、1番最後は謎の軍ヘリコプターが大量に近づいて来るシーン。
★ 監督復帰、されど
今回で4作目で、1番最初に監督をしたポール・W・S・アンダーソンがまた監督を務めています。しかし1作目に比べ、全編図式的で、ミラ・ヨボビッチの良い面が第1作のようには出ていません。ウェントワース・ミラーは大した演技はしていませんが、プリズン・ブレイクのようなエキセントリックさが無い点だけはプリズン・ブレイクより高い評価。
上にも書いたように、内容がこんなだったら、今の時期には見ないだろうという印象の作品。もう見てしまったので仕方ありませんが、2008年に現在の日本を予想していたかのようなシーンがあちらこちらに見られます。正直なところ気色悪いです。
ヨボビッチはさすがモデル出身だけあって、体重は完全にコントロールしています。私の趣味から言うとあと1割か2割ほど太っていた方が健康そうでいいです。黒い髪は彼女にはあまり似合いません。アウトフィットは第1作のままが良かったと思います。
コンピューター・ゲームと並行して作られいている作品らしく、ゲームを意識しての演出にはなっているようです。しかしそれでも第1作には謎、ストーリーなどが揃っていて、地下の研究所などという魅力的な設定もあり、楽しかったです。その後の続編は何かの図式にとらわれたような作りで、しかもヨボビッチの美しさも十分生かされておらず、現在までのところ私の評価は第1作が1位、他は力及ばずです。
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