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リミットレス /
Limitless /
Sin límites /
Sem Limites /
Ohne Limit /
Sans limites /
Sin Lïmites

Neil Burger

2011 USA 105 Min. 劇映画

出演者

Bradley Cooper
(Eddie Morra - 小説家)

Abbie Cornish
(Lindy - エディーの恋人)

Anna Friel
(Melissa - エディーの前妻、ヴァーノンの姉)

Johnny Whitworth
(Vernon - メリッサの弟、薬の売人)

Robert De Niro
(Carl Van Loon - 金融投資家)

Richard Bekins
(Hank Atwood - 大手会社の持ち主)

Patricia Kalember
(ハンクの妻)

Andrew Howard
(Gennady - ロシア・マフィア、エディーの金を調達する)

Tomas Arana
(エディーを尾行する男)

Caroline Maria Winberg
(Maria Winberg - エディーと一夜を共にしたらしき女性)

Ned Eisenberg
(Morris Brandt - エディーの弁護士)

Robert John Burke (Pierce)

Darren Goldstein
(Kevin Doyle)

T.V. Carpio (Valerie)

Cindy Katz
(Marla Sutton)

Brian Anthony Wilson
(Detective - 探偵)

Rebecca Dayan
(Rebecca Dayan)

Tom Bloom (Dunham)

Tom Teti
(Tailor - 洗濯屋)

Chris McMullin
(Cop - 刑事)

Piper Brown
(スケートをする少女)

Simon MacLean
(スケートをする父親)

Martha Ann Talman
(Van Loon のアシスタント)

Eddie J. Fernandez
(Gennady の子分)

Ray Siegle
(Gennady の子分)

Mary Ellen Driscoll
(エディーの叔母)

Cindy Engle (探偵)

見た時期:2011年10月

短くまとめれば、アホな男のドラッグ体験。ドアホとまで言いませんが、名誉無きアホの称号は獲得。ドアホの類に分類されるレクイエム・フォー・ドリームルールズ・オブ・アトラクションに迫る作品です。

原作はアラン・グリンの小説。幻影師アイゼンハイムのニール・バーガーが監督。

主演はシャイア・ラブーフで計画されましたが、企画会社変更と並行して主演もブラッドリー・クーパーに変更。クーパーは役に合っています。知名度が低い分ストーリーが鮮明になり、良かったと思います。

★ あらすじ

主人公エディーがペントハウスから今にも飛び降り自殺をしようとする冒頭シーン。外から電気のこぎりを使って彼のアパートに押し入ろうとしている者がいます。彼の回想が始まります。ここでチラッと思い出すのが 99 francs99 francs のオクターヴもここに挙げていいほどのアホでした。

まだ何の事件も起きていなかった頃。一応出版社と話がついて執筆中の×一(バツイチ)青年作家エディー・モーラ。新しい恋人リンディはなかなか結婚に合意してくれません。

マイケル・ダグラスがワンダー・ボーイズで演じた作家と反対で、現在エディーは筆が進みません。そんなある日町で偶然出会ったのが元義理の弟ヴァーノン。前妻メリッサの弟。筆が進まないと話すと、いい解決法があるとばかりに新薬 NZT-48 を勧められます。ヴァーノンは製薬会社のアドバイザーで、この薬は来年認可されることになっているとのこと。この義弟、ちっとも製薬会社の社員に見えません。

1粒飲んでみるとあっという間に脳が活性化して、一般人は20%程度しか使わない脳が100%稼動。あっという間に何でもできるようになってしまいます(脳に関しての20%、100%というのは与太話で、人間の脳は本来100%稼動しているそうです。ただ同時に100%ではなく、その時その時はどこか数箇所だけ。それで20%などという数字が出るようです)。あっという間に本を書き終え、出版社に届けます。編集長の評価も上々。他の事もあっという間に片付き、新しい事はあっという間に理解でき、恐ろしく効率が上がります。

エディーは続きが経験したくなり、ヴァーノンを訪ねます。彼は誰かに襲われたようで散々な様子。新薬はどうやら違法ドラッグらしいと見当がつきます。エディーはヴァーノンの使い走りで洗濯物を取りに行き、戻ってみるとヴァーノンが殺されているのを発見。家捜しし、ドラッグと金と顧客メモを発見。一応警察に通報します。メリッサとは警察の電話で少し話しますが、弟が死んで、エディーが警察に通報したのに、メリッサはエディーに会いたがりません。

その後エディーは入手したドラッグを取りながらマネー・トレーディングをやり始め大成功。元手はロシア・マフィアのゲナディーから借りますが、あっという間に大金に化けます。元手をあっという間に200倍に増やしたエディーは業界で評判になり、投資家の大物カールに目をかけられます。カールは大型合併をもくろんでいて、エディーにサポートを依頼。今やエディーは戻って来た恋人、大金、業界の評判、大会社の依頼を手にします。

そこへ降って湧いたような事件発生。前夜一緒だったと思われる女性の死体発見。その夜の記憶が抜け落ちているエディー。薬の副作用ではないかと疑い、ヴァーノンから薬を買ったと思われる客に電話。その結果判明したのは死亡率50%ということ。幸運にもまだ生きている50%は重病で入院中。しかもエディーは正体不明の男にずっと跡をつけられています。

久しぶりに会った元妻メリッサは生活が荒れている様子。彼女もヴァーノンの薬を飲んでキャリア・ウーマンになっており、止めてからは集中力が10分しか続かない。「薬を急に止めると死ぬからゆっくり減らすように」とエディーに忠告をして去ります。

薬の正しい量をつかみ切れないエディーは体調不良で、リンディーの事務所で倒れます。尾行がついたりしていたため用心して、エディーは薬を自宅でなくリンディーのアパートに隠していました。それをリンディーに取りに行ってもらいますが、リンディーが事務所へ戻る途中で尾行がつき、襲われます。携帯でエディーと連絡中だったため、エディーから薬を1粒取るように勧められます。彼女は一瞬の内にスーパーガールになり、機転を利かせてその場を何とか乗り切ります。しかし尾行の男は一般の通行人をさっと殺してしまいます。この経験に呆れてリンディーはエディーとの関係を終えてしまいます。

「貸した金を返せ」と言って来たゲナディーと揉め、エディーの薬の事がゲナディーにばれてしまいます。「金はいくらでも手に入るので銀行に行けばすぐ返せる」とエディーは言いますが、ゲナディーは薬の方に興味を持ちます。他の薬の使用者がなぜ思いつかなかったのか分かりませんが、エディーはその頃持っている金を使ってグレード・アップした薬の開発に乗り出します。

カールがエディーと進めていた会社合併の話はいよいよ調印にこぎつけますが、当日相手側のアトウッドが調印式に現われません。代わりに来たのはアトウッドの夫人。そしてエディーをつけまわしていた男はアトウッド側の人間、病に倒れたはずのアトウッドは実は薬が切れたために健康状態を害していたと判明。エディーが薬を持っているだろうとあたりをつけて尾行を続けていました。エディーがまだ持っていた残りの薬は犯した可能性のある女性殺人事件のために雇った弁護士に盗まれてしまいます。同じ弁護士をアトウッドも雇っていました。

ここで冒頭のシーンに繋がります。外から電気のこぎりを持って襲って来るのはゲナディー。薬をよこせというわけです。ぎりぎりで自殺を止め、ゲナディーと対決し、ゲナディーは何とか討ち取ります。しかしあと2人手下がいます。ゲナディーは液体にした薬を注射器で体内に入れていたので、彼の血には薬が混ざっています。なのでエディーはゲナディーの血をバンパイヤのようになめます(この作品最高のブラック・ジョーク)。急に元気付いたエディーは残りの2人も仕留めます。

1年後エディーは作家としても成功しており、上院議員になろうとしているところ。その彼をカールが脅しに来ます。エディーの薬の事に最初から気づいており、現在エディーが薬を作らせている3つの会社を閉鎖に追い込んでいます。取引内容は、大統領を目指すエディーにカールのやりたい政治をやらせること。交換条件に薬を提供するというわけです。

しかしエディーは一足先に研究を終えており、カールの提供する薬は必要なくなっていました。エディーはカールに「自分はクリーンだ」と言っていますが、それが本当なのか、エディーの新薬は副作用が抑えられているのか、そこははっきりしません。

★ まとめ方

っと、まあ、ドラッグ・メルヘンのような話です。血をなめるブラック・ジョークの他に、雇ったボディー・ガードの手が4本送られて来たり、話は残酷ですが、全体のトーンはコメディーのタッチ。

この作品といくらか共通点があるもう1つの作品としてはヤン・クーネンの 99 francs も挙げられます。こちらはさらにコメディー色が強いです。

★ 集中力

ドイツで恐いのはコカイン。集中力を高めるために使う人が時々います。ヘロイン、モルヒネなどは医者を除けばやくざが使う物で、一般の人の近くにはありませんが、コカインはシッケリアと呼ばれるインテリ層の間に広がっているそうです。前の首相の頃、大分前ですが、ある重要な政府の建物のトイレを潜入ジャーナリストが検査したら、かなりの頻度でコカインが検出されたという噂が出たことがあります。使っていたのが政治家なのか役人なのかは不明。1度ぱっとラジオなどで報道され、その後そのテーマには触れなくなっています。

ドイツは失業していない人は8時間労働以上になることが多く、地位が高くなればなるほど仕事の量、時間が増え、責任が重くなります。その上やたらパーティーが開かれ、発泡酒が開けられます。睡眠時間は短くなり、翌日朝早くから事務所へ。そんな生活をどうやって支えるのだろうと思っていたら、一部の人はコカインに手を出したらしいのです。この話は首相が変わってから消えてしまいましたが、コカインは昔から金持ちのドラッグとされていて、しかも本当は中毒性が無いそうです。そういう甘い言葉に乗って始めてしまう人が後を絶ちません。体が中毒になることは無いらしいのですが、精神的な弱さで続けて行く人が多いと聞いています。頭がはっきりし、睡眠不足でも元気はつらつなのだそうです。

若者の間でかなり浸透してしまったのがパーティー・ドラッグと呼ばれる錠剤。こちらは Sphinx に出て来るような物です。ラブ・パレードなどで流通したらしいので、パレードがベルリンから西ドイツに引越し、さらに中止となったのは良かったです。これも眠くなるようなドラッグではなく、目がやたら冴える種類らしいです。

★ こういうテーマはどう扱ったらいいのか

リミットレスは寓話かと思うぐらい柔らかく、優しく表現してあります。その上主人公は何となく感じの良い青年。こんな風だとドラッグの恐ろしさよりファッショナブルさが前に出て、人を疑うことも無く素直に育った人がスーっと取り込まれてしまうのではないかと心配になります。

レクイエム・フォー・ドリームは目のきれいな俳優が演じていて、カメラも美的に撮影していましたが、注意深く見ていると人生の奈落をのぞいたようなシーンもあります。ルールズ・オブ・アトラクションはどことなくコメディー風にしてあり、私はあまり好きになれませんでした。あんなドラッグの山を見て笑う気にならない、若者が取り込まれて行く姿も見ていて気持ちのいいものではないという感想でした。

99 francs はアンチ・ドラッグ・キャンペーンではなく、広告業界のでたらめさを描く作品だったのですが、ドラッグでメタメタにのびている主人公が出て来ます。少なくとも「君、何やってるの(バッカじゃない)」という疑問は浮かびます。リミットレスはドラッグを取った後の一時的な利点が強調され過ぎていて、そこに観客が惹かれないかとちょっと心配になりました。

大分前某有名米国大統領の夫人が「ジャスト・セイ・ノー」という麻薬撲滅キャンペーンをやりました。当時私は全く効果の期待できないキャンペーンだと腹を立てたことを覚えています。しかしそれからかなりの年数が経ち、彼女の言う事は正しいという結論に達しました。ああいう物を勧められたら「ノー」と言うしかないという意味では正しいのです。しかしそういう物を勧められた時にノーと言えるだけの教育が無ければ効果はゼロ。彼女は第一歩を始めたわけで、その後に麻薬を取るとどういう事になるかを伝える必要があったのですが、如何せん、大統領というのは任期が決められた仕事。その奥方も大統領が退陣擦れは一緒にさようなら。

ドイツにパーティー・ドラッグがどんどん入って来たり、国を動かす職業についている人たちのトイレからコカイン反応が出たのはそのずっと後のことです。「ジャスト・セイ・ノー」だけでは足りなかったわけです。映画人は創作力に溢れた人たち。たまにはキャンペーン用の映画を作ったらどうかと思います。

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