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USA /UK 2012 124 Min. 劇映画
出演者
Guy Pearce
(Peter Weyland - ウェイランド・コーポレーションのオーナー)
Charlize Theron
(Meredith Vickers - 調査隊の責任者、ウェイランドの娘)
Michael Fassbender
(David - ロボット)
Idris Elba
(Janek - 船長)
Noomi Rapace
(Elizabeth Shaw - 考古学者)
Lucy Hutchinson
(エリザベス、子供時代)
Patrick Wilson
(エリザベスの父親)
Giannina Facio
(エリザベスの母親)
Logan Marshall-Green
(Charlie Holloway - 考古学者)
Sean Harris
(Fifield - 地質学者)
Rafe Spall
(Millburn - 生物学者)
Kate Dickie
(Ford - 科学者)
Emun Elliott
(Chance - 機関士)
Benedict Wong
(Ravel - 機関士)
Branwell Donaghey (傭兵)
Vladimir Furdik
(Jackson - 安全担当の傭兵)
C.C. Smiff (傭兵)
Shane Steyn (傭兵)
Daniel James
(自殺をするエンジニア)
Ian Whyte
(最後のエンジニア)
John Lebar
(幽霊のエンジニア)
Anil Biltoo
(語学講師)
James Embree (機関士)
Florian Robin (機関士)
Matthew Burgess (機関士)
Eugene O'Hare (機関士)
Richard Thomson
(考古学者の助手)
Philip McGinley
(考古学者の助手)
Jenny Rainsford
(考古学者の助手)
Rhona Croker
(考古学者の助手)
見た時期:2013年3月
ここ暫く映画祭の話題ばかり続いたので、違う話を書こうと思い、珍しくアニメのクリエーターを扱い始めたのですが、大きくなり過ぎて頓挫。最初は1本書くつもりだったのですが、個々の作品にまで手を出してしまったのが行けなかったです。これは後日数本に分け出します。
間もなくファンタなので練習をしようというわけで3本まとめて借りて来た DVD の方から始めます。まずはリドリー・スコットの最新 SF から。
ちょっと前に弟のトニー・スコットが自殺してしまい、兄弟で大きな仕事をして欲しいと願っていた私の望みは絶たれました。2人とも映像に長けている上、大きなテーマも扱え、アクション、スリルなどを満載でき、主人公が魅力的に見える作品をいくつも作っていたので、1度一緒に何か作って欲しいと思っていました。兄弟が別な関わり方をして一緒に作った作品はあるようなのですが、共同監督は無いようです。
キャリアを見ると兄ちゃんが進出した世界に弟を呼び寄せたのか、弟が兄ちゃんを頼って後に続いたのか、リドリーが出た世界にトニーがついて来たら彼もいい作品を作れたという展開になっていました。だからと言って弟が兄ちゃんの真似をしたわけではなく、それぞれ個性のある作品を作っていました。2人は共同で経営している会社も持っており、喧嘩をしたという話は聞いたことがありませんでした。
トニーの自殺現場の目撃者の話によると、塀を越えて一直線に死に向かって飛び込んで行ったそうで、止めようはなかったようです。理由が未だに判然としませんが、有能な監督を失ったことは確かです。
★ プロメテウスとは
たまたま私には小学校の頃からおなじみの名前ですが、普通の日本人は「言葉を聞いたことがある」程度の記憶しかないのが普通。私が知っているのもこの話を扱った先生がいたからで、全くの偶然。
欧米の文学や映画ではギリシャやローマの神話の登場神がバンバン引用され、一般の人でもそれがどういう意味を持っているか知っているのですが、欧州文化圏でなければお手上げ。ま、天照大神、海幸彦、山幸彦と言っても欧米人がピンと来ないのと同じです。
プロメテウスは《前もって考える》といったような意味で、一神教のキリスト教では簡単に《神》とだけ言われていますが、多神教のギリシャ神話ではプロメテウスが人間を作ったと考えられています。
後発のキリスト教にも似たような考え方が見られますが、ギリシャ神話にも、作っては見たものの、人間が発展し過ぎて傲慢になると大洪水を起こしてリセットしようという考え方が見受けられます。自然災害はいつでもどこでも起き得る、その度に気を取り直して最初からやり直そうと考える日本人とはメンタリティーが全然違い、こういった天災を神の与える罰と解釈する人が欧州文化圏にいます。定期的に大洪水に襲われる北ドイツやオランダの人は賛成しかねるでしょうが。
大きな所から見ると映画プロメテウスは結論をここ(リセット論)に持ち込もうとした形跡が見られます。近視眼的に見ると1つの場所に住んだ後、次の場所を求めて先発隊を送り、そこの住民を一掃した後自分たちが乗り込んで行って占領するという現代に見られる戦術(食い尽くしたら次の畑に移るイナゴ先発隊論)を象徴しているようにも見えます。
そしてプロメテウスが知られているもう1つの理由は火。1度人間が手にした火を取り上げた神がいて、それをまた与えたのがプロメテウス。私に言わせると、人間は神にいいように振り回されていますが、火というのは大切な物。生活をとても豊かにしてくれる半面、使い様によっては破壊にも繋がります。映画プロメテウスでは火は火炎放射器という形で出て来るだけで、重点は人類の起源の方に置かれています。続編が作れるような終わり方をしているので、その後火もテーマに取り上げられるのかも知れません。
★ できるまで、できてから
プロメテウスの制作は大揉めと言うほどではありませんが多少紆余曲折を経ています。元々はエイリアンの続編として考えられ、あのエイリアンに至る前の話になるのかとも考えられました。
ジェームズ・キャメロン監督で企画が始まり、少し揉めてキャメロンは降板。代わりに元々エイリアンを始めたスコットが参加。ここでも少し揉めて、ストーリーを変更し、終わりの方でチラッとエイリアンと結びつくようにするにとどめ、全体は独立した話になりました。
元祖エイリアンを作った監督なので、画像はエイリアンに近く、あのシリーズに親しんだ人ならシリーズの一環と思いながら見てもイメージはスムーズに繋がります。もしこれからエイリアンを初めて見るならプロメテウスを《エイリアン 0》として最初に見てもいいかも知れません。
もう1つ揉めたのは年齢制限。少年から見ていいことにするか、青年からにするかで意見が割れ、スコットはそれ2つのバージョンを撮ったようです。エクストラを見ると多少年長者向けのシーンがありますが、本編からはカットされています。
2013年のアカデミー賞には視覚効果の部門でノミネートされました。画像に凝るスコットとしては当然の部門でしょう。
奇怪なのは私が見たバージョン以外にかなり違うバージョンがあるらしいこと。インターネットで調べると多くの記事が私の見たバージョンと内容が一致しているので、そちらの方向で書きます。
★ キャスト
宇宙船のクルーとしてハーモニーを要求される作品ですが、サンシャイン 2057のような国際協調のわざとらしさが無く、バランスが取れています。キャストの中で唯一損をしているのがノーミ・ラパス。彼女はスウェーデンのオリジナル版ミレニアム・シリーズでは上手い使われ方をしていて、一躍名を上げています。その功績を買われてか英語圏に進出し、世界的なスターと共演を始めていました。プロメテウスでは主演と言っていいほどで、オスカー女優シャーリーズ・セロンより重要です。
ところがこの役に彼女が全く合わなかったのか、彼女がみっともなく見えるような演出をされたのか、本人がエキセントリックな役しかできない無能な役者だったのか、事情は分からないのですが、1人だけ負の方向に浮いてしまっています。たまには女性嫌いの監督に当たってしまって損をする女優もいますが、スコットは女性が嫌いというわけではありません。
例えばスコットのおかげでシゴニー・ウィーバーはスマッシュ・ヒットを出し、以来大スターです。この作品中のセロンの扱いも良く、彼女の顔が美しく映るように工夫していますし、バレーで鍛えた体が魅力的に見えるような衣装を与えています。鬼軍曹のような冷たい女の役ですが、役に合った魅力を振りまいています。ブレード・ランナーでロボットを演じたショーン・ヤングも後にキャリアはずっこけましたが、ブレード・ランナー撮影時は彼女の香るような美しさを捉えています。
ミレニアム・シリーズのラパスは映画の役でなく本人の方のドミノ・ハーヴェイ(映画化はトニー・スコット、ハーヴェイの仕事現場に同行して取材)を思わせるような、この世の幻想を全部取り去り、現実の厳しさを知ったような役を十分こなしていました。プロメテウスのエリザベスの役は、その正反対で、信仰を持ち、隙だらけの甘い考えの女の子。それが厳しい状況に瀕して信仰を失いかけ、大切な人を失い、嘆き悲しむ役です。そういう風に甘っちょろい伏線を張っておいて、ショーダウンのところでずたずたの心を1つにまとめて直して一大決心をするという役です。ところがその切り替わりが上手く表現できておらず、運命に振り回されるだけに見えてしまいます。その点ウィーバーは役をラパスよりずっと良く解釈して演じていたと思います。
★ 目先に見える物語と壮大な物語
2つのストーリーが宇宙船プロメテウスの役目と一緒に進行します。
☆ 地球側から見たストーリー
大金持ちのウェイランド・コーポレーションの年老いたオーナーが人類の起源をたどり、永遠の命を求めて宇宙船プロメテウスを作らせ LV-223 という星に送ります。
そのきっかけを作ったのがショーとホロウェイという若い考古学者。 2089年スコットランドの山奥で 35 000 年前の古代人が残した絵を発見。そこに描かれていた星座が、他のいくつかの古代人の絵にも残されており、その星に人類の起源の謎が潜んでいるのではないかという方向に研究が進んでいました。
ロケットやクルーの費用を負担してくれるスポンサーが現われたということで、発見者2人もウェイランドのロケットに乗り組んでいます。ショーは考古学博士ということになっているのですが、およそそれらしく見えません。ぎりぎり医学の実験ラボの従業員といった感じ。学術の分野も違う感じですし、彼女はあまり学者風に見えません。
考古学者というのは図書館や研究室で古い歴史書や古文書をたくさん読む仕事と、物理や化学の手法で発見した物の年代を検査する CSI のラボのような仕事の両方を修めていなければならず、発掘のために世界を飛び回り山や砂漠にすぐ飛んで行ける身軽さも必要。無論一部の言語学者や古代史学者のように、自分では発掘に行かず、見つかった資料を貰って初めて研究が始まる分野もありますが、考古学者と名乗る人は発掘に出かけて行くことが多いです。ここでは地球を飛び出して宇宙に飛んで行きます。その役にラパスは全然合っていません。
ここで話に出る「人類の起源の秘密が・・・」という話は与太話ではなく、映画の冒頭はまだ人類の《じ》の字も見えない荒涼とした場所。植物の《し》の字も見えず、岩と水だけ。空には宇宙船の影が。滝のそばで人間と似た形の生物がなにやら不思議な物を服用します。その後宇宙船は去って行きます。
良く考えると変なシーンで、誰も見ている人もいないのに、このエイリアン男、変な下着を身につけていて、卑猥に見えます。ギリシャ彫刻でも全裸なのだから、ここは全裸にして、上映すると検査に引っかかりそうな所はもろに見えない角度から撮影すればよかったのにと思いました。
この景色はアイスランドで撮ったらしいです。このシーンを見るために DVD でなく、劇場で見たかったと思わせるような、これぞリドリー・スコットというシーンです。
ここでこの異星人、人と似た形の生物の命は終わりになってしまうのですが、彼の DNA がこの世に散らばって行きます。《これが人類の始まり》という乗りでこの後話が続きます。ン千年経って宇宙船プロメテウスが出発するのが2090年代、冷凍で運ばれ、17人の クルーが解凍されて目を覚ますのが2093年という風になっています。ダーウィンと揉めそうなシーンです。キリスト教とも対立する考え方。ラパス演じるショー博士はキリスト教。
ロボットのデビッドがクルーを解凍する時期が来るまでロケットの管理をします。退屈しのぎに多くの印欧語族の古代語を勉強します。私もこの方面の言語の一部を齧っていたことがあります。その時はまさか自分が宇宙語を勉強しているとは知りませんでした(笑)。ロボットなのにデビッドがお粥を食べジュースを飲むところはご愛嬌。
北ドイツの博物館で、再建された古いドイツ語の文章を朗読した録音を聞いたことがあるのですが、普段手書きの文章を目で見るだけなので、この方面に興味のある人はこういうシーンがあると大喜びです。メル・ギブソンがアラム語、ラテン語のみで映画を作った時も大喜びした人がいたと思われます。
さて、オスプレイの宇宙船版のようなロケットが目的の星 LV-223 に到着。クルーは2年4ヶ月18日ぶりに目を覚まします。この星の空気は一酸化炭素が多過ぎて呼吸に適していません。
到着の頃、仕事の依頼主に当たるウェイランドが2091年6月22日に録画したビデオが流され、クルー全員になぜここへ派遣されたのかが説明されます(ええっ、君たち目的も知らずに契約したの?)。学問的な部分は2人の考古学者ショーとホロウェイが説明します。
「暫く待て」と船長が止めるのに、どうしても行くと言って聞かないクルーが早速探検に出ます。安全担当の傭兵が武器を持って出ようとすると、「これは研究だから」と言って止めるショー。まだ相手に会っておらず、好戦的か友好的か分からないのに勝手に大丈夫と決めるなど、彼女はとことん楽天的。このクルー、宇宙船のクルーにしては規律が守られず、そのために危険な出来事が続きます。「止めろ」と言われてもやってしまったり、持ち場を離れていたり。見ているといらつくことがあります。これが近年の主要国の政府でまとまりの無い行動を取る大臣や議員を象徴しているのだとしたら、良い描写だと思います。脚本家がそこまで考えて書いたのかは不明。
一行は洞窟に入ったように思っていますが、実は巨大な物体の中に入って行きます。クロワッサンを長くしたような形をした物の中に入ると、そこの空気は呼吸しても大丈夫なのでヘルメットをはずします。間もなく発見されるのが人類の起源と思われる LV-223 星人。
デビッドが奥で部屋を発見。そこから宇宙人のホログラムが駆けて来て、皆倒れます。一行はその場所で死体を発見。頭がありません。人類と良く似た体型で、死後2000年ぐらい。2000年前ここで何か事件があったのだろうという推測が成立。
その後も皆勝手な行動に走り、地質学者と生物学者が隊を離れます。残りの人たちはヘルメットをかぶった宇宙人の頭をと、たくさんの細長い容器を発見。デビッドが1つこっそり宇宙船に持ち帰ります。ショーンは発見した頭部を持ち帰ります。折り悪く砂嵐がやって来て、そんな中無理に発見物を船内に持ち込もうとしたため、危うくクルーは命を落としかけます。
先に出発した2人の科学者が船に戻っておらず、嵐で助けに行けないので、次の日まで待てと船長が2人に連絡。
一段落してラボではショーが戦利品の頭の分析を始めます。ヘルメットの下は人間のような顔。頭を再生させます。しかしやり過ぎて頭は爆発してしまいます。この人たちは「危険かも知れない」と考えないのだろうかと腹が立ちますが、もしスコットが学者の犯す間違いを指摘するつもりだったのなら成功です。変な細菌を開発して、どうしても実験したくなってしまいつい・・・とか、危ない武器を開発してしまい、つい使ってみたくなるのと同じメンタリティーです。
デビッドは洞窟で発見した長い容器を船内の冷凍庫に隠していましたが、今度は相手不明の誰かと連絡を取り合っています。そこへ通りかかったミッションの主任ヴィッカーズと言い争いになりますが、何をしていたのかはっきり言いません。その後こっそり冷凍庫に隠してあった容器の中身を取り出し、ホロウェイの飲み物に混ぜます。それでホロウェイは病気になります。
洞窟に取り残された2人の学者は、船長から近くに生物がいると連絡を受けます。しかし間もなく生物の痕跡が消え、どう考えていいのか分からず困惑。
ショーはホログラムが残された理由、生物の頭がラボで爆発した理由などを考えながら、伝染病が起きたのではないかと疑い始めます。
ショーの検査の結果宇宙人の DNA は人類と一致。その話をしながらホロウェイとルンルンな感じになり、2人は関係を持ちます。ショーはたまたま不妊症なので、子供を作るのは無理。ところが10時間後には妊娠した上、既に4ヶ月。愕然とするショー。解凍されてからまだ2日ほどしか経っておらず、妊娠したとすれば4ヶ月前の冬眠中。計算が合わない・・・。
船長とヴィッカーズも言い合いをしながら、関係を持とうという話になり、船長は持ち場を離れます。ここにスティーヴン・スティルズのギャグが登場。この間に洞窟に取り残されていた学者2人が蛇のような生物に襲われ死にます。
船内ではデビッドに変な物を飲まされたホロウェイが少しずつ病気になって行きます。2人の学者が死んだことを知らないクルーは次の朝2人を探しに行きます。同行したデビッドは勝手に歩き回り、本船との連絡も切ってしまいます。洞窟の秘密をさらに嗅ぎ回るデビッド。ホログラフやその辺の物を見てこれはロケットだと気付くデビッド。操縦の仕方を観察します。地球や他の惑星の姿を見て、感情の無いはずのデビッドも感激の面持ち。そして生存して眠っているいるエイリアンを発見。
前回と同じ場所に来ると前と様子が違っていて、学者の死体を発見。加えてホロウェイの病状がどんどん悪化して行きます。一行は脱出し始めます。
本船に戻ったのはいいのですが、ホロウェイを巡ってクルーは喧嘩を始めます。ホロウェイ自身は自分の病気を自覚して別れを告げようとしますが、ショーが頑として連れ帰ると言って聞きません。ヴィッガーズは「感染した者を船には乗せない」と言って火炎放射器でホロウェイを焼き殺します。ホロウェイは自分の状況が分かっているので、ヴィッガーズに「殺してくれ」と言いました。
この騒ぎで気を失ったショーが目を覚ますとベッドの上。このあたりの演技のお粗末さが目立ちます。ショーが妊娠していると当たりをつけて世話をするデビッド。検査の結果妊娠していました。ショーはホロウェイの状況を考慮して成長の早いエイリアンの子供を宿したと考え、中絶を試みます。
シャーリーズ・セロンやアン・ハザウェイ、ナタリー・ポートマンのマネージャーが役を蹴ったのはこのシーンのせいだろうかという部分がここです。1つには妊娠中絶というテーマが論争を呼ぶ可能性があります。
セロンはショー役をオファーされたそうですが、時間の都合がつかないということで蹴っています。後で時間が空いたので考え直し、ヴィッカーズの役で手打ち。この判断は正しかったと思います。
もう1つにはこのシーンの衣装が卑猥な印象を与えること。変な下着を着せないで、完全に裸体にして映倫に引っかからないような角度から撮影するなり、邪魔になる機械を前に置いたりして撮影した方が良かったと思います。
セロンもこの卑猥な印象の衣装を着て出るシーンがあるのですが、さらっと受け流し、すぐガウンを着てしまいます。
ショーは自動手術機に入り、帝王切開を強行します。
このシーンで一般の人がびっくりするのは、腹をまずヨーチンで消毒し、その後自動メスでばっさり左右に切るところ。お腹からエイリアンの子供を取り出すまではまあ SF だからそんなものだろうという感じですが、その後彼女お腹を縫い合わせません。代わりにホッチキスのような物で留めます。経験の無い人が見るとぶっ飛びますが、実はこれは現在既に使われている技術。私もこういうやり方の手術を受けたことがあります。
傷の面積が広く、てっきり手術が終わったら縫うものと思っていたのですが、麻酔が覚め、数日後包帯を取ってみたら至る所にホッチキスの針が刺さっていました。好奇心から担当医師に聞いてみたら、皮膚を損傷した場合傷をいちいち手で縫っていたら、比較的小さい傷でも3時間ぐらいは軽くかかってしまうそうです。この科の普通の患者は全身の面積の4割とか、6割の傷を負っているので、縫うだけで1日以上かかりかねません。その時間数だけ患者の体には麻酔も含めて負担がかかるわけで、そんな悠長な事はしていられません。
で、最近はホッチキスと言うか、壁にポスターを貼る時に使うようなタッカーで体に針で打ち付けるのだそうです。良く考えて見ると金属なので高熱で消毒ができますし、こういう患者は傷の性質上元々強い痛み止めを取っているので、そこに針がちょっと刺さったぐらいでは痛くも痒くも無い。その上数分で終わってしまうので、患者はすぐ休養ができるわけです。なるほど発想の転換だと当時びっくりしたのですが、それを知っていたので私はフムフムと思って見ていました。
ただ、その後あんな大きな傷を負ったのにショーがバンバン歩いたり走ったりするので、そちらの方にはびっくりしました。手術後彼女が取った錠剤がこれまた現実的で、私が医師から貰った錠剤とそっくりでした。同じ大きさの錠剤でも処方箋の必要な濃度の高い物から、薬局で直接買える濃度の低い物まであります。形状はどれも全く同じ。この薬痛みを止めるだけではなく、炎症を防ぐ作用もあるので、こういうシーンにぴったりではありますが、取り過ぎると肝臓を傷めます。ショーはいくらなんでも取り過ぎだろうと思いました。私は一定期間に一定量以上は取っては行けないとしっかり注意を受けました。
本船の近くにはエイリアンに襲われ死んだはずの地質学者が倒れていて、まだ元気なクルーと戦いになります。ゾンビになってしまっています。健康人から犠牲者続出。実はここの空気には酸素があまり多くないはずなのですが、火炎放射器が機能するという不思議。
手術後船内をふらついていたショーが迷い込んだ部屋にはデビッドと数人のスタッフに囲まれたウェイランドの姿が。余命いくばくも無いウェイランドは自分を作った者の姿見たさに自ら船に乗り込んでいました。デビッドから生存しているエイリアン発見の報告を受け、ウェイランドは会いに行くつもりでした。自分たちを創造した者なら自分を救ってもくれるだろう、つまり寿命を延ばしてくれるだろうという楽観主義。
ショーは「自分は間違っていた、ホロウェイが死んだのですぐこの星を去らなければ行けない」と主張。このあたりもラパスの演技不足が目立ちます。彼女が身勝手な主張をしているように見えてしまいます。このシーンは彼女が信仰を失うかという瀬戸際なのですが。
☆ LV-223 星人側の計画
後半の後ろ半分で、エイリアン側の立場が明らかになります。それを理解するのは船長とショー。船長の推測によるとこの星はウェイランドが言うような地球の人類の起源の生物の居場所ではなく、そのエイリアンたちが建設した軍事基地に過ぎない、エイリアンたちが居住する場所は他にあるはずだと言うのです。そしてこの星で生物兵器の実験に失敗し、派遣されて来ていたエイリアンが死んだのだろう、残されていた黒い液体がその兵器ではないかと言います。ショーの「伝染病が起きたのではないか」という疑いと一致。
「俺はただ宇宙船を操縦するだけだ」と言って船長はあまりショーに協力的ではありませんが、「このエイリアンや兵器を家(地球)に持って帰ることだけはしない」と言う点でショーと話が一致します。
ここで驚くのはセット。まるで普通の家の台所のようです。
別な場所ではウェイランドと娘ヴィッガーズがご対面。あまり仲の良くない父娘。自然に年を取ることに逆らう親父さん。「王は統治し、年が来ると死ぬ、それが自然だ」という娘。どうも父親の支配欲に悩まされている様子。老人は宇宙服を着てエイリアンに会いに出かけます。
デビッドはウェイランドの寿命を考慮し、自分用のプログラムを作るウェイランドがいなくなったら自分は自由になると考えています。どことなくブレード・ランナーのロボットを思わせる発言。
ショー、ウェイランド、デビッド、看護人は生存しているエイリアンの元に向かいます。そこはエイリアンの宇宙船。ショーは船長に現場の画像を送ります。
前に来た時に覚えた通りデビッドはこの宇宙船を操縦できるようになっています。2000年ぶりに目を覚ますエイリアン。そして重大な話が始まります。この宇宙船は元々地球の生物を排除するために地球に送られることになっていて、排除後地球を宇宙人の住処にするのが計画でした。排除に使われるのが例の変な液体。
老人はデビッドを通訳として宇宙人と話をしようとします。ショーが自分の質問をしようとしますが、老人が遮り自分の質問を優先します。 宇宙人はどちらにも答えず老人を殺し、デビッドを壊してしまいます。 このシーンはギリシャの神々と発展し過ぎて傲慢になった人類の関係を表わしているつもりなのでしょう。船でこれを見ていたヴィッカーズはプロメテウスに帰還命令を出します。しかし船長は別な事を考えています。
最後まで生存していたエイリアンは自分のロケットで地球へ向かおうとします。ショーはエイリアンのロケットから徒歩でプロメテウスに向かい(君、手術したばかりだぞ!)、外から船長にエイリアンの目的を話します。
「ここでエイリアンをやっつけなければ戻っても地球は無い」というショーの話を聞いて船長は神風特攻隊と化します。ヴィッガーズと残った2人の機関士に、脱出ロケットで外に出るか、突撃して一緒に死ぬかという選択肢を与えます。男たちは自爆に参加、ヴィカースは脱出に成功。
男たちはエイリアンの宇宙船に体当たりして破壊に成功。両方のロケットは地上に落下。地上に無事残ったのは女性2人だけ。しかしヴィッカースは逃げる方向を間違えて宇宙船の下敷き。最後に残ったのはショー1人。
本船の残骸に戻ると、彼女が生んだ蛸に似たエイリアンの赤ん坊とロケットごと墜落して生き残った人間型エイリアンがいます。頭だけまだ機能しているデビッドからショーに連絡が入って逃げるように言われます。ショーはエイリアン同士を戦わせ、自分は脱出。
デビッドの頭はショーと一緒にエイリアンの洞窟へ行きます。デビッドが操縦法を知っているので、何とかエイリアンのロケットを動かせるでしょう。プロメテウス内では人間型エイリアンが負けて死に、後にシゴニー・ウィーヴァーが対決するタイプのエイリアンが誕生。
この後片方はスコットの作ったエイリアンに繋がります。もう一方でラパスが主演として残るならデビッドとショーの後日談が作れるわけですが、あの演技を見せた後、ガラッと変わって強く思慮深い女性を演じられるかが鍵。スコットは自分が作ったエイリアンをあっさり他の監督に渡しているので、今回もここまで自分で作り、その後を他の監督に任せるのかも知れません。
★ 感想
突っ込み所満載の緩い脚本で、あのスコット監督が信仰を前面に出したので、パロディーかと思いました。ま、そういう風に描かれた主人公なので仕方ありません。脚本を書いたのはスコットではありません。
良く考えるとザ・コアと比較するに値するパロディー風の SF なのですが、あのように居直ってコメディーにはせず、スコット・ファン向けに一応シリアス・ドラマ仕立てです。しかし見終わってよく考えてみると、エイリアン・シリーズには見られない奇想天外な辻褄の合わない展開の連続です。どうせならザ・コアの乗りで、皆さん楽しく和気藹々で作った方が良かったかなと思います。
私たちが楽しく勉強していた印欧祖語が登場するので大喜び。ただ、私たちはエイリアンの移住計画など前提にしておらず、あくまでも地球内だけで発生し、発展した言語と考えています。DVD を返す時間が迫っていたので、ゆっくり発音を聞くことができず、スコットが全くの思いつきの言語をしゃべらせたのか、メル・ギブソンのようにちゃんと成立している言語を使ったのかは確かめられませんでした。私は書かれた物を見る癖がついているため、音声で1度聞いただけでは判断がつきませんでした。でも、ここは楽しいシーンでした。ただ、地球には印欧語以外にも古い言語、死語がいくつかあるので、スコットの乗りで行くと、エイリアンが何種族も地球に到達したのかと突っ込んでみたくなります。
白黒で、光が何度も点滅するシーンが多いため非常に見にくく、気分が悪くなってしまいました。それでも撮影に関係するを貰っています。もう少し固定した明るさのシーンを増やしてもらいたかったです。
スコット監督がどの程度日本を意識して作ったのかは不明ですが、エイリアンの移住計画や、船長の自爆攻撃など日本の状況を取り入れたのかなと思わせる部分があります。
エイリアンたちが色々な星に先発隊を送り、そこで DNA を撒き散らし、何十億年後かに自分たちと似た生物が生じ、自分たちを探しにロケットでやって来るほど技術が発展するなら、そこは自分たちの生存に適していると判断するわけですが、気の遠くなるような長さで実行する計画。そうなると死後2000年の死体など、ほんのわずかな時間ということになります。
これまでタイムマシンで未来や過去に行くといった時間を使った SF が多く書かれ、映画が作られていますが、プロメテウスはこれまでのやや幼稚な発想から一段抜き出たように思います。なので、詰めの甘い脚本になったのは残念です。
デビッドとショーは一緒にエイリアンの本拠地に向かって旅立ちますが、ショーの目的は「なぜエイリアンたちはこんな事をするのか」をエイリアンたちに聞きに行くこと。なんと能天気なんだろうと思いました。そりゃ、数を増やすことと、領地を増やすことに決まっているではありませんか。この呆れるほどの楽天主義はこれまでの日本を意識したのかとかんぐったりしました。エイリアンを止めに行くなら話は分かりますが、それにしては人数が少な過ぎる。それでも地球へ戻るのではなく、エイリアンを追って行く方針だけは賛成。
そしてショーに蛸型のエイリアンを産ませたのはデビッド。今後仲良くやって行けるんだろうか。・・・とまあいくつか疑問を残したまま終わります。ということはやっぱり続編を作る気なんだ。
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