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2000年7月5日(水)JOE HISAISHI PIANO STORIES 2000 Pf Solo & Quintet in いずみホール

久石 譲(ピアノ)、後藤勇一郎(バイオリン)、近藤浩志(チェロ)、野田祐介(クラリネット)、神谷百子(マリンバ)

コンサート編
 開演まで

手荷物を入り口のロッカーに預けることになる。もちろんコンサート中にガサガサと音がならないようにするためである。このようなコンサートでは当たり前なのだろうが、なにせ初めてのコンサートなので、こんなことまでするのかあ、と少々驚き気味になる。そして、すごいコンサートが待ちうけているんだなあ、という期待感で胸がいっぱいになった。オフ会のメンバーは閉演後、入り口近くで待ち合わせることになった。そしていよいよホールの中へ・・・。オレンジ系の薄暗い明かりの中、ステージの上にはすでに大屋根がフルに開いたピアノが置かれている。コンサートグランドピアノだ。これはコンサートやレコーディングで使われる最高級のピアノで、奥行きが普通のピアノの1.5倍ぐらいあり、弦が長いのが特徴。価格も通常は1000万円を超える代物だ。(こんなピアノで思いっきり演奏してみたいなあと心の中でつぶやく)

直前にMINOさんから、青猫さんの隣の席と聞かされていた僕は、自分の席に着くと、隣の人に青猫さんですか?と声をかけた。頭を縦に振って、そうですと一言。掲示板で名前は知っていたけれど、もちろんこのときが初対面。少々緊張気味になるが、青猫さんから、過去のコンサートの話を聴かせてもらったり、パンフレットなどを見させてもらったりととても親切にしていただいたので、あっという間に開演時間に・・・。(青猫さんありがとうございました。)
 
 コンサート開演・第一部

いよいよコンサート開演の時間になった。薄暗い明かりがさらに暗くなり、それとともにホール内の話し声なども静かに・・・。そして完全に真っ暗になると、さらに静かになり、まるでホールの中に誰一人いないというぐらい静かに。シーン・・・。(中学のとき、全校集会で舞台の上の先生が、あまりのうるささに怒鳴った後でも、ここまでは静かにならなかったなあ。初めての体験だった。)このとき、みんな久石さんの登場を待ちうけているんだなあと、ファンとしての一体感を感じた。そしてそのような一時が過ぎると、スポットライトとともに久石さんが、少し早歩き気味で登場。初めて生で見る久石さんに感動した。一礼とともに拍手が・・・。そしてピアノの椅子に腰掛けられた。鍵盤に手をかざすが、少しためらって手をもむしぐさを・・・。その後演奏が始まった。

Friendsだ。CDでしか聴いたことの無かった久石さんの演奏だが、いま同じ場所を共有して、久石さんの生演奏を聴いている、という感動が体の中を走った。そして800人がその演奏に集中している。なんだか感動で涙が出そうになった。自由でのびのびとした演奏、ミスタッチが1回も無い。感動とともにクオリティーの高さを感じた。
2曲目ははつ恋。久石さんらしい力強いメロディー。それとともに久石さんらしい演奏の仕方が体感できた。少し背中を丸めた姿勢。ピアノの先生からしたら正しい姿勢でないのかもしれないが、はっきり言って貫禄のある姿だ。(僕もピアノ演奏に集中するとつい背中が曲がって前かがみになってしまう←これは貫禄ではない)
3曲目はThe Wind of Life。この曲は、僕自身、このコンサートの次の日、偶然にもこの曲を演奏することになっていたので、じっくりと目に焼き付けておこうと思った。演奏が始まるとテンポの速さに驚いた。CDに比べとてもテンポが速い。そしてサビの部分はCDと違うことが話題になっていたので、注意して聴いていた。一聴して違いに気づく。始めのA♭で続くところが途中からA♭7に変わるのだ。なんともいひょうを突かれた感じの演奏だった。この編曲だとサビの部分がよりゴージャスに聞こえるのだ。

3曲のピアノソロが終わり、ピアノの横の台に置いてあるコップの水を一口。そうですピアノの演奏は意外と疲れるのです。その後、久石さんがマイクを手に・・・。「こんばんは、久石譲です。」と話が始まる。テレビで何度か声は聞いた事があったが、あらためて思い出した。ステージの中を独特の少し高めの声が響く。話された内容を書きます。(思い出しながらなのであしからず)
「僕たちは約1ヶ月間、このメンバーでコンサートをしてきました。今日がその最後の演奏になります。春のツアーということで、皆さんにさわやかな曲を・・・、というコンセプトで進めてきました。今聴いてもらったのは、いずれもピアノソロですが、これからはピアノ対〜というデュオを聴いてもらいます。今回のコンサートはリハーサルというものをやってません。だから毎回ぶっつけ本番なんですよ。始めの頃はそれでもみんなそれぞれ僕の演奏に合わせてくれたりしていたけれど、最近はそれぞれのパートが自由気ままに弾いています。(会場から笑)気の遠くなるような「ため」があったり、今度はこちらが合わせるのが大変です。(会場から笑)それでは最初のチェロとのデュオ、ラ・ピオッジャという曲を聴いてください。」
こんな内容だった。

そして4曲目のla pioggiaの演奏がはじめる。ピアノの高音の演奏の後。出だしのチェロがとてもゆっくりと始まった。そしてデュオに・・・。透き通ったチェロの音・・・。美しいの一言だ。続いてクラリネットとのデュオによる風のとおり道た。PIANO STORIESに収録されているThe Wind Forestからのメロディーも加わっっている。4度の和音なども登場し神秘的な演奏。やっぱり生のクラリネットの音色はDTM音源と違って、とてもふくよかだ。そして次の演奏ためステージの上にマリンバが用意された。大きい。木琴よりも一回りも二回りも大きい楽器だ。マリンバの独奏から始まった。片手に二本ずつバチを持ち、計4本を別々に動かして音を出す。それはまるで鍵盤で弾くのとほぼ同等の表現力だ。和音、アルぺジオ、メロディーとSummerを奏であげる。すごいの一言。続いてはDrifting in the City。My Lost Cityに収録されている8分におよぶ大曲で、とても感動的な旋律の曲だ。バイオリンとのデュオによる演奏が始まった。メインのモチーフが繰り返されるが、何度聴いても、とにかくドラマチックである。バイオリンとピアノのふたりだけなのに、CDと変わらない厚みのある演奏。編曲の巧妙さが良く分かる。中盤のピアノの即興的な部分はなんとも迫力があった。
そしてこの4曲が終わった後、久石さんが再びマイクを手に話し始め、アシタカとサンの紹介があった。そして第一部最後の曲、アシタカとサンのピアノソロが始まった。穏やかで暖かいメロディーが生演奏でよみがえる。そう言う感覚だった。そしてコンサートは第一部が終了し休憩を挟んで第二部へ・・・。
 
 コンサート第二部

第二部はいよいよ5パート全てを使った演奏が入ってくる。会場が再び暗くなり794BDHの演奏がはじまる。タタタタタタタタという走り抜けるようなリズムに合わせ各パートがそれぞれの旋律を奏で、一つの音楽になる。リハーサル無しにしては、あまりにもそろって心地よい。さすがはプロだ。この演奏が終わると、新アルバム「Shoot The Violist」についてのクイズと、ミニマルミュージックについての説明があった。詳しくはショーさんのページで・・・(笑)はぼ同じです。その話で覚えているのが「リズミック」という言葉。「リズミカル」とどう違うのだろうか?(難) 最後に久石さんは「答えは、Shoot The Violistに載っています。だから答えを知りたい人はコンサート後Shoot The Violistを買ってください。」(会場から笑)と、笑いを誘う場面も。

そしてその後に、MKWAJULE MOREとミニマルを語る上で、なくてはならない曲が演奏されたのは言うまでもない。MKWAJUはまさにミニマルの真髄。ストレートなズレが生み出す音楽である。(楽譜一枚でこの曲を演奏しろといわれたら、隣の人に必ずつられてしまうなあ、と心でつぶやく)プロはすごい。まるで意志を持った動物のように身勝手に演奏されていく。が、しかしそのズレが一つの音楽としてまとめあがっているのである。LE MOREもひたすら同じモチーフを繰り返す音楽。現代ありふれている音楽感とは全く違う、未知の音楽を体感している気分になった。

これらの曲の演奏が終わると、先ほどのクイズの答についての話があった。それはビオラという楽器の持つ意味についての話だった。(会話内容はショーさんのページ(東京公演とほぼ同じ))思い出すと「ビオラは目立たないが、オーケストラを構成する上でなくてはならない非常に大切な存在です。弦楽四重奏のパートは第1、第2バイオリン、ビオラ、チェロです。時にはビオラはバイオリンの一つ下を受け持ったり、チェロのひとつ上を演奏したり、よりその音楽に厚みを持たせ、際立たせるという効果があります。」と本物のビオラを用いての説明があった。今回のアルバムのタイトルは、普段目立たないビオラに着目しようと言う趣旨だったのだ。その後2001年1月公開のBROTHERについての説明があった。

そして今回のツアーで初公開のBROTHERの演奏が始まった。コンサート前のオフ会で、神戸公演に行った方から、今までとはちょっと違う路線をいっている音楽だと聞いていたが、それほど違和感はなく、むしろ今までの北野映画の路線上にある音楽だった。かっこいいメロディーだ。続いてTwo of Us。チェロのうっとりするメロディーが始まる。主旋律はさることながら、それに合わせた副旋律、メインモチーフに続く第2のモチーフともども、とにかく傑作だ。ピアノを弾くと良く分かるのだが、この曲、コードを踏まえたシンプルな構成のメロディーなのだが、(作曲をやっているものとして)こんな美しい旋律もあったのかと、はっきり言って驚かされる。

いよいよ最後の2曲となった。と、その前に久石さんがはじめて映画監督に挑む「Quartet(カルテット)」についてと今後の活動予定について話がある。(これも東京公演と重なります。(笑)) フランス映画、Quartet、千と千尋の神隠しと今年から来年にかけてはいつもの年よりも増して大忙しのようだ。と言うことで、次回のコンサートは早くて来年(2001年)の秋、もしかしたら来年は出来ないかもしれないという話の内容だった。今回僕は初めてコンサートに行ったのだが、次回からも絶対行きたいと思っていた矢先の発表だったので、少々残念。それでも来年は久石さんの新たな作品がたくさん待ち構えている、と思うと期待で胸が膨らむ。
そしていよいよ久石さんが「最後の2曲、5拍子と言う変わったリズムのLes Aventuriers、そしてKids Returnをお聴き下さい。」と、最後の演奏が始まる。

Les Aventuriersは紹介の通り5拍子の曲だ。音楽は大半が4拍子か3拍子に分けられるのだが、この曲は人間の生理に合わない5拍子の面白い曲である。久石さん本人も演奏は難しいとのこと。疾走感漂うリズムで突っ切っていく。5拍子で有名なミッションインポシブルに似たフレーズも。続いてのKids Returnもピアノのタタタタというバッキングがベースの躍動感のある音楽だ。リズムとともに壮大さを感じるメロディーを全員で演奏されていく。そして演奏が終わった。会場にはこの時点でちらほらスタンディングオベーションも。全員がステージの外へ・・・。拍手が鳴り続く。すごい音だ・・・。

しばらくして久石さんが再び登場。アンコールがあることは分かりきっているのだが、感動してしまう。そして久石さんがピアノに座られると、拍手が小さくなっていった。HANA-BIのピアノソロである。CDよりもテンポにより変化があった。表現豊かな演奏だ。最後のサビの繰り返しは、ベースは一気に落ち、メロディーは上がっていくというドラマチックな演奏。ピアノ一台でオーケストラの演奏が再現された感じを受けた。この演奏が終わった後、さらに多くの人がスタンディングオベーションに。僕も思わず立ち上がった。何度かメンバーが出ては戻り、出ては戻りを繰り返した。拍手は鳴り止まない。また一人また一人と立ちあがる人が・・・。すると久石さんが「座ってください」と一言。会場から笑いが起こる。メンバー全員が登場し、メンバー紹介が始まる。
そして本当の最後の曲MADNESSが勢い良く始まった。説明は無用だろう。(笑)全曲解説で何度解説したか・・・。(笑)裏拍を極端に強調した始めの部分のリズムは独特で、ピアノの強打は生はやっぱり迫力万点だ!これでもリハーサル無しなのかと、思うぐらいいろいろな場面のタイミングがぴったりだ。すごい!「ジャン!」と曲が終わると。みんな待ち構えたように一斉にスタンディングオベージョンが始まった・・・。さすがファイナル大阪と言う感じだった。こうしてコンサートは幕を閉じた。


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Written by HeeFoo at 2000.8.17 最終改訂2002.6.10
 
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