+通り雨+

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 2

 あ、と言ったのはどちらが先だったのか。
 彼女は驚いたような顔を一瞬して、それから人のよさそうな笑みを浮かべた。
 あ、の先を続けることはお互い難しかった。

 CDショップの視聴コーナー、なんて場所で再会したりしたから。タイミングも、悪くて。
 友人推薦の、今流行ってるっていう、グループ名英語の、英語タイトルの曲、たぶん正しい発音で言えやしない。そんな曲がヘッドホンから流れてくる。
「いい曲ですよね」
 彼女は細い白い指で、CDを一枚軽く摘んで、そんな風に言った。
 これから、この曲を聴く度にこの子のことを思うんだろうな。と俺は思った。
 思い出の一曲になるんだ、いい曲でよかった。ろくにメロディーも聞かず、そう評価した。

 彼女はまたセーラー服だった。
 正確な名前までは思い出せないが、この近くの高校のものだろう。同じ制服をよく見掛ける。
 大きな紺色のリボンが可愛い。
 着ている彼女も、変な色に染めてない自然な色のロングで、でも手入れはきちんと行き届いていて、枝毛なんて一本もなさそうな髪とかが似合っていて可愛い。

 女子高校生はまた、あの黒目がちの意志の強そうな瞳で、俺を見て来た。
 なんで?
 とつい、口に出しそうになった。
 なんで俺たち、キスしたんだっけ?

「あの」

 俺はふやけた笑顔で聞き返した。
 はい、なんでしょう?

「私と、ホテル、行きませんか?」

 耳が変になったんだと思った。
 でなきゃ、頭のほうがおかしくなったんだと。
 なんで? とつい口に出しそうになった。
 なんで俺たち、ホテル行くんだっけ?

「…………いいよ」
 冷静に答えている自分もまた、理解しがたかった。

 

 

 

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