+通り雨+

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 6

「あの時、雨さえ降らなかったらな」

 と葉月は言った。
 そうしたら、陽の部屋で雨宿りなんて展開にはならなかっただろうし。そうしたら……
 でも、通り雨は確かに偶然だったかもしれないが、そこから先は葉月の意志だった。
「だから、しょうがないね」
 と言って、葉月は微笑んだ。

 

 結局、ファミレスのスパゲッティーは俺がおごることとなった。
 女の涙は高いんだよ、とかなんとか葉月は言っていた。肝に銘じる。
 それからのことを彼女は一言も語らなかった。俺も聞かなかった。

 あの時のキスから、彼女がどんな答えを得たのか。
 何を選んだのか。
 子供を産んだのかどうか、俺は知らない。

 ただあの高校球児が、甲子園に行って、メジャーで活躍している。とは聞いていない。

「あ、貴也さんだ」

 と。そのうち、街中で、葉月が声を掛けてくるのを俺は心のどこかで待っている。
 もちろん幸せそうな顔をして。
 俺たちがあの時、キスをしたより高い確率で。
 その再会は訪れるだろうから。
 そんな偶然を、待っている。

 

 

 

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