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 本筋その/おまけその3a・3b

 

 
 
 おまけその3b  町田さんが朝帰りした理由。

 リズミカルな、電子音で目が覚めた。
 これは確か、先生の好きな時代劇のオープニングテーマだったような。
 ナオはできるかぎり手を伸ばして、布団からはみ出さないようにして携帯電話を取った。

 通話ボタンを押す。

「……もしもし。あ」 
 出てすぐに後悔した。これって先生の電話だ。
 電波は向こうの沈黙まで運んでくる。

『あー。朝早くすみません、日高と言いますけど、安藤そこにいますか?』

 あくまでも声からは、あんまり動揺は見えないけど。
 日高っていうのは代休でやってきた臨時の保健室の先生の名前だったような。

『もしもーし?』
「はい。あの、先生は……あ」
 先生?という怪訝そうな声が、遠のいていく携帯電話から聞こえたてきた、気がした。

「もしもし、安藤ですが」
 いつのまに起きたのか。先生が朝仕様の低い声で応じる。
「あ、なんだ。お前か」
 そして、聞き慣れない話し方をする。
 ぼんやりと見ていたら、急に手が伸びてきてくしゃくしゃと頭をかき回された。
 そのまま携帯を道連れにして、先生は洗面所のほうへ消えていった。

 ベッドの上にぽつんと取り残されて、ナオは砂嵐状態になっていたテレビの電源を消した。
 続けて、床に散乱していたビデオテープを取り上げて、ケースの中にしまう。
 この部屋に来るといつも片付けばかりしている気がするのは気のしすぎじゃないと思う。

「どこまで見た?」
 と、隣に座り込んできた先生は、やっぱり昨日の服をしわくちゃにしていたり。
 堪えきれないあくびをして、一緒にビデオを片し始める。
「とりあえず初代の最後までは。さすがに、Zは力尽きて見えませんでしたけど」
 昨日の帰り道、思いついたようにレンタルショップに寄って、10本ほどまとめ借りをした。
 ちょっと前にした約束を、思い出したらしかった。

「失敗したなぁ」
「何をですか」
「色々。最大の敵はガンダムだったなぁ」
 そんなに精一杯ため息を疲れると、ちょっと気の毒に思う。
「でも、面白かったです。ブライト艦長かっこよかったし」
「……町田って、割と渋好みだよね」
「そうですか?でも、先生の寝顔も可愛かったです」

 にっこり笑ったら、先生がまた、すんごく失敗したなぁ。と言った。
 先生は前日もほとんど寝てないせいなのか、10本目を過ぎないあたりで寝息を立て始めた。
 そもそも先生の部屋の居場所はベッドの上にしかないので、最初から寝転がっていたのが幸いして。
 よく眠れたみたいでよかったです。

 もう朝の5時を回っている。
 両親の目が覚める前に家にたどり着く必要があった。
 玄関先に腰掛けて、ブーツを履く。

「タクシー代、出そうか?」
「大丈夫。もう電車動いてるし、ちゃんと帰れます」
「親御さんにはちゃんと説明できそう?」
「大丈夫。ガンダムの感想延々と言える自信ありますから」
 さすが、と先生が笑った。
 そんな先生の首に飛びついて、ナオは触れるだけのキスをした。

「ハッピーメリークリスマス」

 

 

 

 

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