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イクシーの書庫・過去ログ(2002年3月〜4月)

<オススメ度>の解説
 ※あくまで○にの主観に基づいたものです。
☆☆☆☆☆:絶対のお勧め品。必読!!☆☆:お金と時間に余裕があれば
☆☆☆☆:読んで損はありません:読むのはお金と時間のムダです
☆☆☆:まあまあの水準作:問題外(怒)


占星術殺人事件 (ミステリ)
(島田 荘司 / 講談社文庫 1996)

ここのところ、読書傾向が本格ミステリ付いています。たまにはいいよね。
で、島田さんの初期の作品。クイーンばりに“読者への挑戦”が2回も出てきます。
こちらも一応、ミステリファンの端くれですから、挑戦に応じてみました。
結果・・・メイントリックの死体の謎は、自力で解きました。そして、必然的に導き出される真犯人の名前もわかりました。まあ、あれだけあからさまにヒントが出てればね。
でも、それ以外の謎はわかりませんでした。
戦前の昭和11年に起こった連続殺人・死体遺棄事件の謎を、43年後に解くお話です。
ある意味、大胆にして荒唐無稽なトリックを、リアリティの衣でくるむことに成功していると言えます。

オススメ度:☆☆☆

2002.3.1


山猫の夏 (冒険)
(船戸 与一 / 講談社文庫 1996)

いわゆる“南米三部作”の1冊目。
う〜ん、長いです。でも面白いです。うわ、うわ、うわわ〜と言ってる間に、さくさく読めちゃいます。
舞台はブラジル東北部の小さな町。町を牛耳る二組の顔役が、長年、抗争を繰り広げてます。
そこに現れた、“山猫”と名乗る謎の日本人。語り手の“おれ”(最後まで名前は出てこない日本人青年)は、“山猫”に雇われ、危険極まりない冒険に巻き込まれていきます。
ノリは黒澤映画です。「用心棒」とか「椿三十郎」みたいな。
期待させて期待させて、期待させまくって、その通りにストーリーが進むという快感。筆力のない作家がこれをやると、目も当てられない凡作になる危険が多いのですが、この作品にそんな心配は無用です。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.3.2


鼠と竜のゲーム (SF)
(コードウェイナー・スミス / ハヤカワ文庫SF 1995)

以前から名前だけは知っていて、気になっていた作家コードウェイナー・スミス。
そして、謎めいた“人類補完機構”というシリーズ名。
読んでみたんですが・・・むう、なんとも形容できない味わい。
秩序だった背景説明がないんですよ。いくつもの作品を読み進んでいくうちに、彼の宇宙の全体像が浮かび上がってくるという感じでしょうか。でも説明不足。だけどその代わりにいろいろと想像できる楽しみがあるっていうか。もう少し読んでみないと評価は下せません。
※長編
「ノーストリリア」読破後、評価がアップしました。
タイトルにもなっている短編、「鼠と竜のゲーム」に登場するレイディ・メイは、SF史上もっともチャーミングな猫と言えるかも知れません。

<収録作品>「スキャナーに生きがいはない」、「星の海に魂の帆をかけた女」、「鼠と竜のゲーム」、「燃える脳」、「スズダル中佐の犯罪と栄光」、「黄金の船が――おお! おお! おお!」、「ママ・ヒットンのかわゆいキットンたち」、「アルファ・ラルファ大通り」

オススメ度:☆☆☆

2002.3.4


長い家の殺人 (ミステリ)
(歌野 晶午 / 講談社文庫 1996)

これも、“新本格”にジャンル分けされるミステリ。この作者のデビュー作です。
殺人事件の舞台になる山荘は、奇妙な作りになっていて、一方の翼がまっすぐに長く延び、そこに15の部屋が1列に並んでいます。つまりタイトルになっている“長い家”。
そこで演出される密室とアリバイ・トリック。
読後感は、クイーンの「神の灯」に似ています。

オススメ度:☆☆☆

2002.3.5


水車館の殺人 (ミステリ)
(綾辻 行人 / 講談社文庫 1996)

“館”シリーズの2作目。というか、“十角館”に続く綾辻さんの第2作なんですね。
演出・構成に凝ってます。
“水車館”と呼ばれる屋敷で1年前に起こった殺人&人間消失事件。そして、ちょうど1年後、同じような状況で再び事件が・・・。
過去と現在の24時間を同時進行で書き進めて行くわけですが・・・これって“閉ざされた山荘”テーマじゃないですか! キャー!!(←好きらしい)
一応、解説しておくと、“閉ざされた山荘”テーマというのは、天変地異などで交通が遮断された場所で(つまり警察やマスコミが踏みこんで来られない)事件が起こるというもの。
同じ綾辻さんの
「霧越邸殺人事件」やクイーンの「シャム双生児の謎」が挙げられますね。(実は、すぐにはこれくらいしか思いつかなかったりする)
現在の描写と過去の描写のし方にカギがあるな、と思ったら、やっぱりでした。でも人間消失のトリックには「やられたあ!」(←嬉しいらしい)。

オススメ度:☆☆☆

2002.3.6


地獄の奇術師 (ミステリ)
(二階堂 黎人 / 講談社文庫 1996)

“新本格”の作品が続いています。これは二階堂さんのデビュー作。
昔の本格ミステリファンにはたまらない趣向が、いろいろと凝らされています。
いきなり怪人が登場し、凄惨な殺戮シーンが展開される、怪奇趣味とサスペンスあふれる導入部。
この辺は、ほんと江戸川乱歩してます。乱歩にも「地獄の道化師」という長編がありますが、この「地獄の奇術師」というタイトルは、乱歩作品へのオマージュでしょう。
また、ヴァン・ダインを彷彿とさせる、ペダンティックな注釈の数々。ミステリファンならにやりとさせられる薀蓄が傾けられています。
なんとなく、プロットがクイーンの「ギリシア棺の謎」やヴァン・ダインの「グリーン家殺人事件」を思い起こさせます。
巻末に付された島田荘司さんの「二階堂黎人論」も、ユニークな論点で語られていて、必読です。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.3.9


太陽系の楯 (SF)
(H・G・エーヴェルス&ウィリアム・フォルツ / ハヤカワ文庫SF 2002)

ペリー・ローダン・シリーズの最新巻です(278巻)。
今回、謎の存在サイノスが、初めて人類に援助と共闘を求めてきます。
サイノスをメンバーに加えた特別コマンドが、“大群”の中枢星系に侵入を果たすのですが・・・。
あわやというところで、
次回へ。

<収録作品と作者>「太陽系の楯」(H・G・エーヴェルス)、「大巨星」(ウィリアム・フォルツ)

オススメ度:☆☆☆

2002.3.9


ネメシス(上・下) (SF)
(アイザック・アシモフ / ハヤカワ文庫SF 1997)

「ネメシス」というタイトル、天文ファンならピンと来ますよね。
一時期、唱えられた仮説で、太陽に伴星があって、それが彗星の軌道を狂わせて彗星が地球に衝突して恐竜が絶滅した・・・というやつ。その伴星の名が「ネメシス」です。
本書のネメシスは、太陽系から2光年のところに位置する赤色矮星で、塵の雲に隠れてたのでそれまで見つかっていなかったという設定(もちろん、現時点で判明している太陽系に最も近い恒星はアルファ・ケンタウリです。距離4.3光年)。
しかも、この「ネメシス」、太陽系に向かって一直線に飛んでくる。
太陽系(地球)に何かが衝突するという設定は腐るほどあって、彗星(「悪魔のハンマー」ニーヴン&パーネル)、小惑星(「シヴァ神降臨」ベンフォード&ロツラー)、ブラックホール(「さよならジュピター」小松左京)とかいろいろですが、今回の主要テーマはその災厄を描くことではありません。(なんたって衝突するのは5000年後だし)
「ネメシス」星系に植民した人々がそこの惑星で直面する謎と、地球に残った人々が超光速航法を再発見して「ネメシス」に行くというふたつのストーリーがテンポよく語られます。
面白いのは、植民者側のヒロインの名がマルレイネで、地球側の主人公の名がクライル。このふたり、実は小さい頃生き別れた父娘なんですけど。
まさかアシモフ先生がマリアトをプレイしてたわけはないですから、偶然なんでしょうけど。
特に女性キャラが立ってるし、ストーリーは練りこまれてるし、夢のあるエンディングも吉。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.3.12


ザ・マミー(上・下) (ホラー)
(アン・ライス / 徳間文庫 1997)

マミーというのは、DQに出てくる例の魔物ですね。ミイラ男(とは限らないか)のことです。
このお話では、20世紀初頭にエジプトの墓所で発見されたラムセス王のミイラが、ロンドンでよみがえります。なんでも、不老不死の霊薬を飲んで眠りについていただけで、太陽光線を浴びるとよみがえるんだとか。
よみがえったラムセスは、あっという間に容姿端麗な男となり、考古学者の娘と恋に落ちます。
しかし、話はそれだけでは終わらず、生身の人間として再び訪れたエジプトで、ラムセスはかつて愛した女性のミイラを発見し、ついつい霊薬をふりかけてしまいます。そして・・・。
霊薬だからという理由だけであっさりミイラがよみがえったり、すぐに英語をマスターしちゃったり、車の運転までしてしまうという具合に、リアリティはあまりありません。
でも、作者もそれは承知の上でしょう。大人の童話として読むのがよろしいかと。
結末がなんとなく中途半端なのは・・・続編狙い??

オススメ度:☆☆☆

2002.3.14


恐怖の総和(上・下) (ポリティカル・フィクション)
(トム・クランシー / 文春文庫 1993)

CIA副長官ジャック・ライアン(ハリソン・フォードがハマリ役ですね♪)が活躍するクランシーの6作目の作品。
中等問題を解決する画期的な条約が、ライアンの発案で締結されたその時、偶然にも核を手にしたテロリストが恐ろしい陰謀をアメリカに対して企みます。同時に、ライアンも彼を敵視する閣僚に陰険な罠を仕掛けられ、窮地に陥っていきます。
これでもかこれでもかという錯綜した複雑なプロットを、見事にまとめあげていき、前半のじりじりする場面から一転、後半の燃える展開に一気にもっていく筆力は、さすがです。
上下巻合わせて1500ページ以上の大冊ですし、コクがあるので読むのは大変ですが、それだけの価値はあります。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.3.22


謎の竹内文書 (オカルト)
(佐治 芳彦 / 徳間文庫 1996)

いわゆる「古史古伝」と呼ばれる、異端の歴史書。それらの中で代表格と言えるのが、タイトルの「竹内文書」です。
内容はぶっ飛んでいて、キリストが日本で死んだとか、神武天皇の前に数億年に渡って日本に世界を統べる王朝があったとか、アダムとイブは日本から送り出された兄妹だったとか・・・。もうムチャクチャ。
しかもこの著者、完全にビリーバーの視点から書いてるものですから、荒唐無稽な内容を更に肯定的に紹介していて、読む方はシラけるばかり。ちょっとねえ・・・。トンデモ本的な面白さにも欠けるし・・・。
後半になると、なんとか論旨もある程度納得がいくものになるんですけど。
同じ著者の「謎の東日流外三郡誌」の方が面白かったです。つまり「竹内文書」より「東日流外三郡誌」の方が、偽書として出来がいい(リアリティがある)わけですな。

オススメ度:☆

2002.3.23


龍安寺石庭の謎 (ミステリ)
(明石 散人 / 講談社文庫 1996)

えっと、ジャンルで言えば、歴史推理ものとなるのでしょうか。
有名な龍安寺の“石庭”(修学旅行の時に見たけど、特に印象なかったんですよね(^^;)に秘められたメッセージを読み解き、更にその背後に隠された“応仁の乱”にからむ謎を解明するというお話です。
ただ、書き方がちょっとねえ・・・。
「あらかじめ自分で答えを持ちながら、いかにも解いたと思わせる手法を、私は好みません」と作者が書いています。考えながら書いてるのでしょうかね。それにしても、やたらと文献からの引用が多いし、なんとなく作者が「俺はこんなによく知ってるんだぞ〜、おまえら知らねえだろ、へへ〜んだ」と言ってるように思えて仕方がないのですが。
(要するに、好みが合わないのだ、と思う・・・)

オススメ度:☆☆

2002.3.25


ゴーラの一番長い日 (ヒロイック・ファンタジー)
(栗本 薫 / ハヤカワ文庫JA 1997)

グイン・サーガの第55巻です。
(世間様から30巻以上遅れを取ってるんですけど・・・汗)
前巻に引き続いての、ゴーラ戦乱編。もう、戦闘シーンのオンパレードで、燃える展開の嵐です〜!!
戦うイシュトヴァーンが、かっこいいよぉ!
わくわく。続きはいつ読めるんでしょうか。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.3.27


NIGHT HEAD 3 (ホラー)
(飯田 譲治 / 角川文庫 1997)

超能力者・霧原兄弟が活躍するサイキック小説の第3弾。
前回、予知能力者・神谷司が世界滅亡のヴィジョンの中に見た、ふたりの兄弟。
かれらは、人類滅亡のカギを握る、製薬会社の研究員・倉橋加奈子と出会います。
彼女が研究していたのはウイルス・・・。
研究を止めさせようとする霧原兄弟を、魔の手が襲います。
ということで、運命に翻弄される兄弟は、まだまだ安住の地を見つけられそうにありません。
話はちょうど半分、折り返し点ですね。

オススメ度:☆☆☆

2002.3.28


NIGHT HEAD 4 (ホラー)
(飯田 譲治 / 角川文庫 1997)

前巻に引き続き、霧原兄弟が活躍します。
今回、自分たちが閉じ込められて育った研究所に異変が起こったことを察知したふたりは、心ならずもつらい思い出が残るその場所に舞い戻ります。
研究所を破壊したのは、謎の超能力者集団・アークコーポレーション。
これまでの苦難の道のりの中で成長した兄・直人のサイキック・パワーが炸裂する!!
・・・今になってみると、TV版も見てみたかった気が。

オススメ度:☆☆☆

2002.3.29


神話の果て (冒険)
(船戸 与一 / 講談社文庫 1996)

いわゆる“南米3部作”と呼ばれる作品の第2作目です。
第1作の
「山猫の夏」の舞台がブラジル北東部だったのに対して、今回はペルーのアンデスが舞台。このアンデス山中に潜むゲリラの頭領を暗殺するために潜入する日本人工作員が主人公。
ん〜、「山猫の夏」と比べると、キャラの性格がぶっ飛んでない分、おとなしいというか、まともな謀略・冒険小説になってるというか・・・。登場人物がみんな●●されちゃうところがすごいと言えばすぎんですけど。でも「山猫の夏」の方が面白かった。
それにしても、オチがあのレズニックのSF小説と同じとは・・・。

オススメ度:☆☆☆

2002.3.31


グリーン・マイル1 ふたりの少女の死 (ホラー)
(スティーヴン・キング / 新潮文庫 1997)

あのモダンホラーの大御所キングが、分冊形式で長編を出版しました。薄手のペーパーバックで、月に1冊、6ヶ月で完結というもの(なんか、どこかのHPの週刊連載みたいだなっと)。
で、読者は1冊読み終わって、次の1ヶ月をわくわく、じりじりしながら待つという次第。
日本でも、本国に倣って月1で刊行されたわけですが、読む方はその通りにするとは限らない(笑)。
お話は、ある刑務所の死刑囚監房が舞台。「グリーン・マイル」というタイトルは、電気椅子へ通じる通路のこと。廊下が緑色に塗られてるんですね。
まず1冊目は、登場人物の顔見せというか、淡々とした展開。

オススメ度:☆☆(←単品で評価してもしょうがないとは思うんですが)

2002.4.1


グリーン・マイル2 死刑囚と鼠 (ホラー)
(スティーヴン・キング / 新潮文庫 1997)

てなわけで、2冊続けて読んでしまいます。薄いから(150ページほど)1日で2冊読めちゃう。
今回は、死刑囚の監房に出没する謎の鼠が主人公(?)。ある死刑囚になついた(いや、死刑囚の方がなついたのか)鼠を軸に、お話が展開します。
そして、あわやというところで
次回へ。このあたり、まさに「お約束」の展開ですね。
気になりつつも、諸事情により、次巻を読むのは少し間をおいてから。

オススメ度:☆☆☆(←そろそろ面白くなってきた)

2002.4.1


銀河英雄伝説3 雌伏篇 (SF)
(田中 芳樹 / 徳間文庫 1997)

銀英伝、第3巻です。
本巻では、イゼルローン要塞奪回にラインハルトが繰り出す奇策と、それに対応するヤンの奮闘が語られます。その前に、ヤンは官僚の陰険な罠にはめられて苦労するわけですが。
それにしても、作者は誰により感情移入して書いているんでしょうかね。
案外、オーベルシュタインあたりだったりして。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.4.2


ティモシー・アーチャーの転生 (SF)
(フィリップ・K・ディック / 創元SF文庫 1997)

ディックの「ヴァリス」と「聖なる侵入」を読んだのは、学生時代でした(しかも今や幻となったサンリオSF文庫版♪)。
で、この「ティモシー・アーチャーの転生」は、当時のサンリオ版で買い損なっていたもの。十数年ぶりに、東京創元社さんが再刊してくれました〜。
でも・・・。
前2作を読んだ時もよくわからなかったんですが、今回もやっぱりわからない(汗)。
いくらでも深読みしようと思えば深読みできるのですが・・・。
まあ、単純に言ってしまえば、「死んだはずのティモシー・アーチャーが転生するお話」なんですけど(おい)。
神学的なお話は苦手です(と言いながら、ディック作品はほとんど全部読んでいる。どうしても気になる作家なんですよね)。

オススメ度:☆☆

2002.4.4


天と地の戦い (ファンタジー)
(デヴィッド・エディングズ / ハヤカワ文庫FT 1997)

“聖騎士”スパーホークが活躍する『タムール記』、ついに最終巻です。
相変わらず多彩なキャラが入り混じり、物語を大団円へと導いていきます。
・・・けど。
ちとキャラが多すぎて、やたらと場面が入れ替わるため、冗漫な感じになってしまったことは否めないです。『ベルガリアード物語』の方がまとまってて面白かったよ・・・。
だけど、シリーズとしてのトータルは面白いですから、お勧めですよ。

オススメ度:☆☆☆

2002.4.7


グリーン・マイル3 コーフィの手 (ホラー)
(スティーヴン・キング / 新潮文庫 1997)

月1出版連続長編、『グリーン・マイル』の3冊目。
前巻のラストで起こった大騒動のさなか、ひとつの奇跡がもたらされます。
それを現出したのが、タイトルにある“コーフィの手”。コーフィというのは、第1巻で少女ふたりを殺害した(ことになっている)死刑囚の名前です。
う〜ん、ストーリーも中盤というところですが、ずっとこのペースで行くのかなあ・・・。
ちょっとたるいです。ていうか、もともとキングは、肌が合わない作家さんのひとり。
(だったら読むな、という話もあるんですが。一応チェックはしないとね)

オススメ度:☆☆(ん〜?? という感じ)

2002.4.9


内海の漁師 (SF)
(アーシュラ・K・ル・グィン / ハヤカワ文庫SF 1997)

元祖“SFの女王”(なぜ元祖かというと、その後、女流SF作家が次々と現われているため。マキャフリイとかブラッドリーとかビジョルドとか)、久々のSF短編集です。
ただ、どの作品も物語性より「思弁小説としてのSF」の側面が強調されているため、ちょっととっつき難いです。
冒頭、作者自身による作品解説がなされているのですが、やっぱ難しい。
ちなみにタイトルにある「内海の漁師」とは、浦島太郎のことらしいです。

<収録作品>「ゴルゴン人との第一接近遭遇」、「ニュートンの眠り」、「北壁登攀」、「物事を変えた石」、「ケラスチョン」、「ショービーズ・ストーリイ」、「踊ってガナムへ」、「もうひとつの物語――もしくは、内海の漁師」

オススメ度:☆☆

2002.4.10


図鑑の博物誌 (ノンフィクション)
(荒俣 宏 / 集英社文庫 1994)

当代きってのディレッタント、荒俣さんがその趣味をいかんなく発揮した作品。
子供の頃、動物図鑑や昆虫図鑑をながめては、小さな胸をときめかせていた思い出は、誰にでもあると思います。
荒俣さんは、その憧憬の地平線を思いきり広げ、古今東西の博物図鑑やその作者たちを、それを取り巻く歴史とともに案内してくれます。
豊富に載ってる図版を見ているだけで、時間が経つのを忘れてしまいます。
地図や図鑑をながめるのが好きな方にはお勧めの一冊です。
そういえば、荒俣さんには「アクアリストの楽園」という名著もありましたな。

オススメ度:☆☆☆

2002.4.12


分裂惑星ボーン・ワイルド (SF)
(H・G・フランシス&エルンスト・ヴルチェク / ハヤカワ文庫SF 2002)

ペリー・ローダン・シリーズの最新刊(279巻です。早っ!!)。
前半のお話は、なんとなくありがちでマンネリ風味でしたけど、後半では太陽系が大変なことに・・・。これからどうなるのか、待て
次巻!といったところで。
んでもって、買ったこの本、いわゆる乱丁本ですな。カラー口絵が上下逆についてました(笑)。
本屋さんに言えば交換してくれるんでしょうけど、いいや。珍しいし。

<収録作品と作者>「分裂惑星ボーン・ワイルド」(H・G・フランシス)、「ハイパー嵐のなかの地球」(エルンスト・ヴルチェク)

オススメ度:☆☆☆

2002.4.13


アイスバウンド (冒険)
(ディーン・クーンツ / 文春文庫 1997)

この作品、クーンツにしては異色です。ホラーではないし、スーパーナチュラルな要素もない。
イドの怪物もエイリアンも、遺伝子操作された化け物も邪教集団も出ては来ません。
グリーンランドの氷床から氷山を切り出して南に曳航し、灌漑用水に使おうという計画のために、北極に送り込まれた国際調査隊。しかし、海底地震に襲われ、氷床から切り離された氷山に取り残された調査隊は、12時間後に爆発するようセットされた50発の爆弾とともに北極海を漂流し始めます。唯一の救いの綱は、同じ海域で諜報作業に従事していたロシアの潜水艦でした。
“アリステア・マクリーンに捧げた”というクーンツの言葉通り、まさにイギリス伝統の海洋冒険小説のノリ。怒涛の展開です。(とか言いつつ、マクリーンは「女王陛下のユリシーズ号」しか読んでなかったりする・・・(^^;)
迫り来るタイムリミット、吹き荒れるブリザード、そして調査隊の中に殺人鬼が潜んでいるという情報・・・。登場人物それぞれがトラウマを負っており、それが展開に微妙にからんでくるのもクーンツらしい職人芸。
「お約束」な展開も多いですが、それは逆に、予想した通りにストーリーが進むという快感につながります。クーンツだから、絶対にアンハッピーなエンディングにはならないという安心感もありますし(笑)。
今のところ、クーンツはこういう傾向の作品はこれしか書いていないそうです。残念。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.4.15


天狼星3 蝶の墓 (ミステリ)
(栗本 薫 / 講談社文庫 1996)

名探偵・伊集院大介が怪盗・シリウスと対決する“天狼星”シリーズの第3作にして完結篇。
(でも実際には完結ではないらしい。さらに
続編出てますし)
ていうか、1作目と2作目を読んだのがかなり昔だったので、ストーリーなんてほとんど忘れ去っていました(汗)。
でも、忘れててもまったく問題なし。純粋に単発の作品としても十分楽しめます。
語り手が15歳の中学3年生の少年。舞台は北海道の辺鄙な温泉町。そして物語後半の舞台になるのは巡回サーカス。
というわけで、ノスタルジーにあふれた、とっても甘酸っぱい、切ないような青春小説としての味わいもたっぷりです。もちろん、戦前の“怪人二十面相対明智小五郎”を彷彿とさせる耽美猟奇探偵小説にも仕上がっています。
しかし、“男の子”を描かせると、なんでこんなに上手いかねえ、この人は。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.4.18


THE UNSOLVED (ホラー)
(飛鳥 昭雄 / 角川ホラー文庫 1997)

タイトルの意味は「未解決」ですね。作者の飛鳥昭雄さんは、“サイエンス・エンターテイナー”という肩書きを持ち、マンガやトンデモ本をいろいろと書いてるお方(“あすかあきお”と平仮名表記も多いですね)。
で、この作品。キャトルミューティレーションやらUFOやらカルト教団やら影の世界政府やら、様々なオカルトネタをぶち込んで、闇鍋みたいにごった煮にしたホラー小説(一応は、ホラーなんでしょうね。怖くないけど)。
でも、どれもどこかで見たようなネタばかりで、オリジナリティはありません。オチがプ●●マだし。
荒唐無稽でリアリティに欠ける内容以前に、文法的に間違った日本語や、状況にそぐわない形容詞がやたらと使ってあって、はっきり言って読むとストレスが溜まる文章です。読んでて楽しくない。
読みながら、文法のミスや事実誤認にツッコミを入れる、というのが最上の楽しみ方でしょう。

オススメ度:☆

2002.4.20


グリーン・マイル4 ドラクロアの悲惨な死 (ホラー)
(スティーヴン・キング / 新潮文庫 1997)

キングの連作長編、“グリーン・マイル”の第4巻。
物語は中盤から後半へ入り、死刑囚ドラクロアが、タイトル通り悲惨な死を遂げます。どんなに悲惨かというと、とてもここには書けない(笑)。ネタバレになりますしね。でも、そういう悲惨な状況を描いても、どこかユーモアが漂うのはさすがキングと言うべきでしょうか。
内容については以上ですが、ひとつだけ触れておきたいことが。
本書の巻末に付された“解説”なるもの(書いているのは著名な学者ですが)、これは噴飯ものです。中で、キングの諸作品のネタばらしを大々的にやってます。やるなら冒頭でひとこと断ってくれよ〜、という感じ。未読の人が読んだら、ブン殴りたくなるぞ。「ペット・セマタリー」のラストシーンとか露骨にバラしてるし。
読む方は、お気をつけください。

オススメ度:☆☆☆

2002.4.20


銀河英雄伝説4 策謀篇 (SF)
(田中 芳樹 / 徳間文庫 1997)

おなじみ“銀英伝”の4巻目。
今回は、「策謀篇」というタイトル通り、フェザーンの陰謀と、それに乗って逆手に取るラインハルト、それを予期しながらもなかなか動けぬヤン、といった図式で物語は
前作に比べ、やや淡々と進行します。
特に前半は、帝国の歴史を概観して語られるパートが多く、歴史書を読んでいるような気分になります。
ともあれ、策謀は始まったばかり。どう展開し、どう終息するのか、楽しみです。

オススメ度:☆☆☆

2002.4.21


稀書自慢 紙の極楽 (ノンフィクション)
(荒俣 宏 / 中公文庫 1997)

う〜ん、これはすごい。
「書物は読むためばかりでなく、見るためにも造られる」という冒頭の文言の通り、荒俣さんが集めた稀書の数々が、豊富な図版とともに紹介されています。
同じ「愛書家」とはいえ、たかが文庫本数千冊の蔵書しかない自分とは違いすぎますが、10代の頃、買い集めた文庫本を部屋中に敷き詰めて、そのカラフルなカバーを楽しんで眺めていたことを思い出しました。
また、他の作品にはない熱意のこもった語り口が、微笑ましいです。
本好きなら、絶対に読むべきです(文庫本にしてはちと高いけど)。

オススメ度:☆☆☆☆☆

2002.4.23


アド・バード (SF)
(椎名 誠 / 集英社文庫 1997)

椎名 誠さんは、けっこう名の知れた作家さんですが、これまでノーマークでした(というか眼中になかった(^^;)。
なのにこの作品を目をとめた理由は、日本SF大賞の受賞作と聞いたからです。
たしかに、それだけのことはありました。
「広告」が支配する、妖しい未来世界。オールディスの「地球の長い午後」を思い出させる(そう思ったら解説にも書いてありました)どこか黄昏れた世界を旅する主人公たち。ちなみにタイトルの「アド・バード」のアドはアドバーティズメント(広告)の略だったのですな。
どこか哀愁をそそる、叙情あふれた描写は、どこか宮沢賢治の作品を彷彿とさせます。
予想以上の出来でした。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.4.27


火星転移(上・下) (SF)
(グレッグ・ベア / ハヤカワ文庫SF 1997)

SFの中には、どうやら“火星”テーマというジャンルがあるらしいです。ブラッドベリの「火星年代記」からクラークの「火星の砂」(未読です(^^;)、フォワードの「火星の虹」、K・S・ロビンスンの火星3部作(これまた未読)などなど。そして、この「火星転移」も、そのジャンルの中核をなすといえる佳作であります。
物語は、前半はえらく地味です。火星の過激な学生運動に始まり(語り手である主人公キャシーアもその学生のひとり)、あえなくそれが失敗に終わった後、実家に帰ったキャシーアは政治家を志し、地球に交渉に赴いたりもします。その間に、科学者チャールズとの恋もあり、青春SFといった風味も。
このまま政治小説で終わるのかと思っていたら、物語は後半に至ってがぜん、怒涛の展開になります。あらゆる事象を説明できる大統一理論がチャールズたちのグループによって発見され、それが軍事目的に使用されることを恐れた地球側が、陰謀をしかけてきます。戦いと陰謀の行く末は・・・。
といったところで、驚天動地のラストが待っています。SF好きなら必読。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.4.29


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