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イクシーの書庫・過去ログ(2002年9月〜10月)

<オススメ度>の解説
 ※あくまで○にの主観に基づいたものです。
☆☆☆☆☆:絶対のお勧め品。必読!!☆☆:お金と時間に余裕があれば
☆☆☆☆:読んで損はありません:読むのはお金と時間のムダです
☆☆☆:まあまあの水準作:問題外(怒)


絞首台の謎 (ミステリ)
(ディクスン・カー / 創元推理文庫 1997)

これも、「人類狩り」と同じ復刊フェアにて入手可能になったものです。バンザイ!
不可能犯罪の巨匠カーの、初期の作品です。探偵役はフェル博士ではなく、パリ警察のアンリ・バンコラン。
喉を掻き切られた運転手の死体が、ロンドンを暴走する車の中から発見されます。そして、その主人の謎めいた失踪。17世紀イギリスの絞刑吏の名を語る不気味な脅迫。そして10年前の殺人事件が影を落とす・・・と、カー得意の怪奇趣味が横溢し、どこか江戸川乱歩や横溝正史の通俗猟奇探偵小説を思わせます。(実際には乱歩や正史がカーの影響を受けてるわけですが)
道具立ても凝っていて、こういうのが好きな人(当然、自分もですが)には堪らないでしょう。

オススメ度:☆☆☆

2002.9.2


銀河英雄伝説7 怒濤篇 (SF)
(田中 芳樹 / 徳間文庫 1997)

「銀英伝」も第7巻。いよいよ佳境に入って来ましたな。
前巻で同盟の首都ハイネセンを脱出し、独立愚連隊(←イメージぴったりです)となったヤン艦隊が、銀河政治の表面に現われ、事態は風雲急を告げていきます。
ただ、今回は繋ぎの巻という感じですかね。
次巻では、ついにラインハルトとヤンの直接対決ふたたび! 楽しみです〜。

オススメ度:☆☆☆

2002.9.4


蜘蛛と蝿 (ミステリ)
(F・W・クロフツ / 創元推理文庫 1997)

クロフツは好きです。クイーンと同じで、中学1年の時に「クロイドン発12時30分」を読んで以来、好きです(ちなみに「Yの悲劇」の次に読んだ本格ミステリが同書)。
ただ、作風が地味なせいか、あまり本屋に置かれてないですね(「ポンスン事件」が未入手。どこかで売ってないかなあ)。
本作では、高利貸しの老人が変死します。どうやらこの老人、裏で強請り稼業をやっていたようで、警察は、強請られていた者の中に犯人がいるとにらんで捜査を進めます。で、推理作家の青年が逮捕されるわけですが、青年の姉と恋人は、彼の無実を信じ、ロンドン警視庁のフレンチ警部に助けをあおぎます。出馬したフレンチが捜査を始めると・・・。
前半は、人間関係の機微もよく描かれていて、いつものクロフツだな、と思えるのですが、中盤以降は、あれれという感じ。フレンチの推理もいまひとつ切れがないし、結末も予定調和的だし。
ん〜、あんまりいい出来ではないですね。

オススメ度:☆☆

2002.9.5


子供たちは森に消えた (ノンフィクション)
(ロバート・カレン / ハヤカワ文庫NF 1997)

アンドレイ・チカチーロという名前をご存知ですか?
ご存知ない方、あなたは健全な生活を送っておられます。
知ってるよ!という方、あなたは○にの同類です(汗笑)。
チカチーロというのは、現代猟奇犯罪史の中ではかなり名の知れた男です。
1980年代、ロシア(当時はソ連)で、少年少女から成人女性まで、50人以上を惨殺した殺人鬼です。しかも10年以上にわたって捕まらずに。
これは、その恐るべき犯罪を、捜査陣の側から描いたノンフィクションです。読んで初めて知ったのですが、この事件は、ロシアの犯罪捜査史上初めて、精神科医による犯人のプロファイリングが行われた、画期的なものだったのですね。
当時の政治状況や社会状況もきめこまかく描かれ、迫真性のあるドキュメンタリーに仕上がっています。読んで気分のいい内容じゃないですけど。

オススメ度:☆

2002.9.6


肉体泥棒の罠(上・下) (ホラー)
(アン・ライス / 扶桑社ミステリー 1996)

吸血鬼レスタトを主人公とする“ヴァンパイア・クロニクルズ”の第4作です。
今回、レスタトは自分という存在に悩んでいます。砂漠に行って日光を浴び自殺しようとまでします(もっとも生命力の強い彼は日焼けしただけで終わってしまうのですが)。
そんなレスタトに近付く謎の男。その男は不思議な超能力を持っており、肉体を交換しないかとレスタトに持ちかけます。
人間の旧友デイヴィッドや仲間のルイに反対されたにもかかわらず、レスタトはその誘いに乗ってしまいます。その結果は、まあタイトル通りで。
後半は、盗まれた吸血鬼としての肉体を取り戻す冒険が繰り広げられるわけですが、その前に再び人間の身体を持ったレスタトが、食事をしたり排泄をしたりという人間自然の営みを「なんと汚らわしく面倒なことだ!」と嘆くのが笑えます。
描き方は相変わらず耽美的で丹念で、読み応えがあります。

オススメ度:☆☆

2002.9.11


大泥棒グッキー (SF)
(クラーク・ダールトン&ウィリアム・フォルツ / ハヤカワ文庫SF 2002)

ペリー・ローダン・シリーズの最新刊にして・・・ええと・・・283巻。
250巻から続いてきた“大群”サイクルもそろそろクライマックスに近付いてきたようです。
サイノスの正体もだんだん明らかになってきたし(というか、今まで気をもたせ過ぎです)。
しかし、今回のサイクルは、なんとなく場当たり的な展開が目立つ気がします(でもここまで付き合ってきたんだから、行けるところまで読み続ける所存)。
プロット作家(←リレー形式の小説で、物語のおおまかな流れを決める人のこと)のシェールが、このころ体調崩してたからかなあ。

<収録作品と作者>「大泥棒グッキー」(クラーク・ダールトン)、「ハイパー空間の惑星」(ウィリアム・フォルツ)

オススメ度:☆☆☆

2002.9.12


地下室の亡霊 (ホラー)
(バリ・ウッド / 扶桑社ミステリー 1997)

宿屋の2階の亡霊ではありません(笑)。
主人公を含む8人(いずれも40代)は、幼なじみで、ニューイングランドの上流階級に属しています。
かれらの中のひとりマイラの家には、じめじめした古い地下室があり、その雰囲気を嫌ったマイラは大改装を施します。ところが、改装した後も、そこへ下りると寒気がしたり、気配を感じたり・・・。
占い盤(ウィージャ盤というやつですな。日本で言えばコックリさん)で尋ねてみると、17世紀に魔女の疑いをかけられて処刑された女性の霊がいる、という結果が出ます。
半信半疑のまま、かれらは古い魔術書に出ている除霊の儀式を行ったのですが、その後マイラの身辺には奇妙な出来事が続きます。折り合いの良くなかった隣人がミツバチの群れに刺されて死んでしまったり・・・。
一応、ジャンルの上ではホラーに分類されるのでしょうが、タイトルから想像されるようなおどろおどろしい雰囲気はありません。どちらかというと、毒のある辛口のホームドラマという感じ。テンポもよく、読み始めたら話に引き込まれて、途中で本を置けなくなります。アイロニカルで、いろいろと考えさせられる結末も秀逸。
ホラーだ何だという前に、これは抜群に面白い小説だと言えるでしょう。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.9.13


悪魔メムノック(上・下) (ホラー)
(アン・ライス / 扶桑社ミステリー 1997)

「肉体泥棒の罠」に続く“ヴァンパイア・クロニクルズ”の第5作にして、とりあえず完結編。
なぜ‘とりあえず’かというと、最近、番外編が立て続けに翻訳刊行されているから(「パンドラ、真紅の夢」「美青年アルマンの遍歴」)。
今回、主人公のレスタトは、なんと悪魔(というか堕天使)に連れられて、ダンテの「神曲」もかくやという天国〜地獄めぐりをすることになります。神様ですらあっさり出て来ちゃうし。
ただ、キリスト教の神学をベースにして、神と悪魔、天国と地獄、魂の意味といった教義問答的な場面が多いので、キリスト教にうとい自分にはちょっと退屈でした。ちゃんとした知識を基盤としてじっくり読みこめば面白さも増したんでしょうけれど。

補足ですが、いいタイミングというか、2作目と3作目を原作とした映画「クイーン・オブ・ヴァンパイア」(でしたっけ?)が公開されるらしいですね。(原作のタイトルは「ヴァンパイア・レスタト」「呪われし者の女王」。いずれも扶桑社ミステリー)
美男美女が織り成すちょっと神秘的な耽美派ロマンスがお好きな方は、まとめて読んでみるのもいいかも。

オススメ度:☆☆

2002.9.16


ミレニアム2 地獄の灰 (ホラー)
(ルイス・ガネット / 徳間文庫 1997)

「X−ファイル」に続く2匹目のドジョウを狙ったTVシリーズ「ミレニアム」のノヴェライゼーション本の2冊目。
1巻目がとほほな出来だったので、作者が変わった今回もあまり期待はしていなかったのですが・・・。
やっぱり期待しなくてよかった(笑)。
サンフランシスコの公園から、大量の灰に混じって人間の片耳が発見されます。灰は、人間を高熱で焼却したものでした。
犯罪捜査組織<ミレニアム>に属する主人公フランクは、自身の超能力を使って犯人を突き止めるべく捜査を始めます。
そして浮かび上がるカルト教団の影・・・。
ありがちなアイディアをありがちなストーリーに仕上げていますな。
というか、世紀末をテーマにした小説は、やっぱり世紀末のうちに読まないと、なんとなく間が抜けてしまいます(自業自得(^^;)。

オススメ度:☆

2002.9.18


魔王の国の戦士 (ヒロイック・ファンタジー)
(栗本 薫 / ハヤカワ文庫JA 1997)

グイン・サーガ外伝の12巻目。引き続きグインが、行方不明のシルヴィア姫を求めて冒険を繰り広げます。
ついにグインはキタイの中心都市、怪異の都ホータンに足を踏み入れ、そこに渦巻く謎と陰謀に挑んでいきます。生き生きとしたキャラやストーリーの面白さは相変わらず。
なんか、正編と読み合わせると、だんだんとこれから先の物語が進んでいく方向が明らかになってきて、興味がいや増しますね〜。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.9.18


沈黙のあと (ダーク・ファンタジー)
(ジョナサン・キャロル / 創元推理文庫 1997)

キャロルは不思議な作家です。決して好きな作家ではないのに、作品が出ると読まずにはいられないという・・・。
キャロルは独自の作風を持った作家です。「※※みたいな作家だよ」という表現が不可能な、他にはない作品世界を築いています。
平和でのどかで幸せな日常生活に、かすかに響いてくる不気味なきしみ・・・。そして、主人公らは突然足元にぽっかり口を開けた奈落を覗き込むことになります。
この「沈黙のあと」は、キャロルにしてはシンプルなプロットです。しかし、それだけに、結末に仕掛けられた恐るべき罠には愕然。
これからキャロルを読んでみようかな、という方には、この作品か、「我らが影の声」から入られるのがよろしいかと思います。

オススメ度:☆☆☆

2002.9.21


閉じ箱 (ホラー)
(竹本 健治 / 角川ホラー文庫 1997)

初めて読んだ竹本 健治さんの作品は、デビュー長編「匣の中の失楽」でした(もう十何年も昔のこと)。何重もの入れ子構造を持った複雑玄妙なプロットに翻弄され、“騙される快感”に酔いしれたものでした。
竹本さん自身が寡作だということもあり、その後はあまり読んでいなかったのですが、今回、初めてまとめられた短編集ということで、久しぶりに彼の作品世界に触れることができました。
ホラー文庫からの発刊ではありますが、決してホラーだけではありません。ミステリあり、幻想風味ありと、いろいろな味の作品が読めます。でも、ほとんどの場合、読者は結末で悪夢のような世界に叩きこまれます。かといって、そこで感じるのは不快感ではなく、“陰陰滅滅たる快感”とでもいうべきものです。
特に、後半に収録された『佐伯千尋』シリーズは必読。

<収録作品>「氷雨降る林には」、「陥穽」、「けむりは血の色」、「美樹、自らを捜したまえ」、「緑の誘ない」、「夜は訪れぬうちに闇」、「月の下の鏡のような犯罪」、「閉じ箱」、「恐怖」、「七色の犯罪のための絵本」、「赤い塔の上で」、「黒の集会」、「銀の風が吹きぬけるとき」、「白の凝視」、「ラピスラズリ」、「緑の沼の底には」、「紫は冬の先ぶれ」、「実験」、「闇に用いる力学」、「跫音」、「仮面たち、踊れ」

オススメ度:☆☆☆

2002.9.25


ホワイトハウスに棲む幽霊 (オカルト)
(マイケル・ノーマン&ベス・スコット / 集英社文庫 1997)

副題は「オールアメリカンお化けマップ」。タイトルにもなっている、ホワイトハウスに今も出没するというリンカーンの幽霊のエピソードをはじめ、アメリカ全土(ハワイ・アラスカも含む)から集められた心霊・怪奇現象38話が収録されています。
著者のスタンスはセンセーショナルなものではなく、事実を事実として淡々と語る筆致のため、この種の本としては驚くほど説得力があります。しかも、単なる恐ろしい話だけではなく、思わずほろりとさせられるようなエピソードも。
※「ユーディー」の某キャラを思わせるような話もあります(笑)。

オススメ度:☆☆☆

2002.9.26


ラヴ・フリーク (ホラー:アンソロジー)
(井上 雅彦:編 / 廣済堂文庫 1998)

井上 雅彦さん責任編集による、全編書き下ろし、日本人作家によるホラー・アンソロジー『異形コレクション』の第1巻。このシリーズ、今も出版社を変えて出続けています。
第1巻の今回のジャンルは、タイトルの通り“恋愛ホラー”です。ファンタジー風味のものからモンスターネタまで、芸達者19人の作品は、どれも粒揃いです。
「赤とグリーンの夜」(井上 雅彦)、「猫女」(竹河 聖)、「REMISS」(久美 沙織)、「貢ぎもの」(菊地 秀行)あたりが好き。
日本人ホラーって、まだあまり読んでいないので、このシリーズはどんどん読んでいきたいですね。

<収録作品と作者>「テレパス」(中井 紀夫)、「女切り」(加門 七海)、「逃げ水姫」(早見 裕司)、「地下のマドンナ」(朝松 健)、「ニューヨークの休日」(森 真沙子)、「怪魚が行く」(田中 文雄)、「老年」(倉阪 鬼一郎)、「赤とグリーンの夜」(井上 雅彦)、「スマイリング・ワイン」(奥田 哲也)、「猫女」(竹河 聖)、「アドレス不明」(友成 純一)、「REMISS」(久美 沙織)、「加害妄想」(高井 信)、「太陽に恋する布団たち」(岡崎 弘明)、「東京悲恋奇譚」(飯野 文彦)、「人殺しでもかまわない」(矢崎 存美)、「約束」(津原 泰水)、「砂嵐」(皆川 博子)、「貢ぎもの」(菊地 秀行)

オススメ度:☆☆☆

2002.10.1


心の昏き川(上・下) (ホラー)
(ディーン・R・クーンツ / 文春文庫 1997)

すごいです! さすがクーンツ!
・・・と、のっけから興奮してしまいましたが、とにかく面白いです、これ。
テーマは単純で「追跡」。謎の組織に追われる女と、彼女を救おうと追う男。そして、かれらを追う恐るべき秘密組織。
「追跡」といえばクーンツ得意のテーマですが(「戦慄のシャドウファイア」しかり、「ウォッチャーズ」しかり、「邪教集団トワイライトの追撃」しかり)、本作品でもその特色がいかんなく発揮されています。
なんと言っても出色なのが、ヒロインのエリー(ん?)。上巻ではまったく姿を現わさず、主人公の回想と友人たちの言葉だけでしか描写されないのですが、すごい存在感を感じさせます。そして、下巻にいたって登場すると、予想通りというか、予想以上にすっごいヒロインぶり。
また、登場人物にトラウマを背負わせるのがクーンツのいつものパターンですが、今回のトラウマは群を抜いています。それを乗り越えようとする主人公の苦悩もみどころのひとつ。
そして、敵役が持っているとんでもない価値観・思想(彼はそれを正義だと信じている)は、今の国際社会に現実に存在しているような気がして背筋が寒くなります。
ともかく、一度読み始めたら止まりません。いつも通り読後感もいいし。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.10.4


イギリス不思議な幽霊屋敷 (オカルト)
(桐生 操 / PHP文庫 1997)

これはタイトルに偽りあり、というか、西ヨーロッパ周辺の歴史上の謎だとか怪奇実話を23篇収めたものです。
どれもこれも、どこかで読んだような話で、あまり新鮮味はなし。
この著者って、読者の興味を引こうとするあまり、ドラマチックに書こうとしすぎて逆に説得力をなくしている気がします。

オススメ度:☆

2002.10.5


竜王伝説1 ―妖獣あらわる!― (ファンタジー)
(ロバート・ジョーダン / ハヤカワ文庫FT 1997)

ふう、やっとこのシリーズに取りかかれました。
○には本を買うペースが読むペースよりもはるかに早いため、5年前に買った本を今読んでいる、という状況です(^^;)
新しいファンタジー・シリーズを読み始める時、冒頭に異世界の地図が載ってたり、巻末にその世界の用語事典が載ってたりすると、「この作家、やる気だな〜」と、読む方にも気合が入ります。
これは「指輪物語」以来の伝統ですが、エディングズの「ベルガリアード物語」「マロリオン物語」しかり、フィーストの「リフトウォー・サーガ」しかり。
そして、この壮大な“時の車輪”シリーズ(“時の車輪”という大シリーズを構成する第1シリーズが『竜王伝説』)も、そんな期待を抱かせるに十分です。
のどかな田舎の村で平和な日常生活を送っていた若者たち。しかし、よそ者が村に入ってくるとともに、遠くでの戦乱の噂が流れてきます。そして、ある夜、妖怪の軍団が村を襲います。若者たちは、太古の昔から続く光と闇の戦いに、否応なく巻き込まれていきます。
この第1巻では、主要メンバー(たぶん)が顔を揃え、旅立つまでが描かれます。
この世界を構成する複雑な要素は、まだ十分に明かされませんが、とにかく今後の期待大です。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.10.6


竜王伝説2 ―魔の城砦都市― (ファンタジー)
(ロバート・ジョーダン / ハヤカワ文庫FT 1997)

「妖獣あらわる!」と同時発売された、『竜王伝説』の第2巻。
1巻で、村を襲われて(やっぱり勇者の村が冒頭に襲われるっていうのは定番なわけで)旅立ちを余儀なくされた3人の若者は、超能力を持った“異能者”モイレインと“護衛士”ランに導かれて(このふたり、なんとなく『指輪物語』のガンドルフとアラゴルンみたいです)“異能者の都”へ向かいますが、闇の魔物の追跡を受け、休む間もなく旅を急ぎます。
ところが、この主人公3人(なにやらいわくありげなんですが)、早い話がただの田舎の若者ですから、うっかり口をすべらしたり、お上りさん丸出しで厄介事に巻き込まれたり、はっきり言って足手まとい(笑)。リアルです。
ついに後半では、パーティは最大の危地に陥ります。
さて、これからどうなるんだろう。わくわく。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.10.6


迷路館の殺人 (ミステリ)
(綾辻 行人 / 講談社文庫 1997)

怪しげなお屋敷を舞台に殺人事件が起こる“館”シリーズの第3弾です。
“迷路館”と名付けられた屋敷に集められたミステリ作家たちがひょんなことから競作を行うことになり、異常な場面設定の中、連続殺人が起こっていきます。
今回も、基本モチーフは“吹雪の山荘”テーマだし、見立て殺人はある、ダイイングメッセージはある、密室殺人はある、と本格ミステリファンにはたまらない道具立ての数々。
途中で、「これはクリスティのあの作品と同じトリックじゃないのか?」と見当をつけて、それが当たったかに思えたのですが、最後に待っていた大どんでん返し。またも「やられたぁ!」と“騙される”快感に打ち震えるしかありませんでした。
これを読む時は、時間を取って、一気に読むことをお勧めします。読むのを中断して他のことをしようとすると、続きが気になって全然そっちに集中できません(笑)。

オススメ度:☆☆☆☆☆

2002.10.7


インヴェイジョン (サスペンス)
(ロビン・クック / ハヤカワ文庫NV 1997)

メディカル・サスペンスの巨匠ロビン・クックの作品ですが、これは今までのとは一味もふた味も違います。
いきなりプロローグで恒星間宇宙船が出てきた時の驚き。
ありゃりゃ、もしかしてこの作者、クライトンかニーヴンの間違いじゃないの? と思わず作者名を再確認してしまいました。
ストーリーですが、空から落ちてきた黒い小石に触った人が、インフルエンザのような症状を起こします。その症状はすぐに治るのですが、治った後、その人の人格がまったく変わってしまうという不思議な現象が続発。なんと、宇宙から来たウイルスに冒されていたのです。
そう、この作品は、クックお得意のメディカル・サスペンスであると同時に、本格的な侵略SFにもなっているのです。
それまで親しくしていた家族・恋人・友人が、まったく別の人格に変わっていく不気味さは、まさにフイニィの「盗まれた街」さながらだし、幸運にも感染しなかった人々(警官、医学部学生、ウイルス学者、コンピュータマニアの高校生・・・)が、それぞれの得意分野を生かして逃亡と謎解きに邁進する中盤のハラハラドキドキの展開。
そして、終盤にはさらに燃える展開が待っています(“お約束”という感じもしますが、いいんです、こういう展開)。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.10.9


逆説の日本史1 古代黎明編 (歴史ノンフィクション)
(井沢 元彦 / 小学館文庫 1998)

90年代より「週刊ポスト」誌にずっと連載されている(今も連載中ですよね、たしか)「逆説の日本史」の単行本版第1巻です。
連載中からちょこちょこと読んでいて、単行本化されたら買って読もうと思っていたんですが、ハードカバーが出た時には「高いな〜、そのうち買おう」と見送っていました。それがなんと文庫で出るとは、嬉しいじゃないですか。
従来の日本の歴史学の欠陥とタブーに鋭く切り込み、独自の視点で構築されていく新鮮な歴史が痛快です。歴史が嫌いな人も(実は○にも受験勉強で歴史が嫌いになったクチ)十分に楽しめると思います。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.10.10


渇きの女王 (ホラー)
(トム・ホランド / ハヤカワ文庫NV 1997)

19世紀末のロンドンを舞台にした吸血鬼小説。
舞台設定から言っても構成から言っても、明らかにB・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」へのオマージュです。
冒頭ではインドの奥地で流行る不気味な“病気”をめぐるイギリス軍人の奇怪な冒険行が描かれます。その“病気”にかかると、皆、他人の血を求めて人を襲い始めるというもの。医師のエリオットはそれに参加しますが、命からがら逃げ出して、イギリスに帰国し、開業医となります。
しかし、友人のひとりが血を抜かれて殺され、もうひとりの友人も失踪。エリオットは、劇場支配人のブラム・ストーカー(なんと、あの「ドラキュラ」の作者その人)と協力して、事件の謎を追います。そして明らかになる吸血鬼の影・・・。
ストーカーの「ドラキュラ」は各登場人物の手記や日記、手紙などから構成されて物語が進んでいきますが、この「渇きの女王」もまったく同じ構成を取っています。
同じ舞台、同じようなテーマを扱っている点ではキム・ニューマンの
「ドラキュラ紀元」とも似ていますが、あれほどの破天荒さはありません。ただ、同じようなお遊び(登場人物の共通性とか)はあって、思わずニヤリとさせられます。
吸血鬼テーマがお好きな方は、要チェックの作品です。

オススメ度:☆☆☆

2002.10.11


氷界から来た男 (SF)
(ウィリアム・フォルツ&H・G・エーヴェルス / ハヤカワ文庫SF 2002)

おなじみペリー・ローダン・シリーズの最新刊(284巻)です。
いよいよ“大群”サイクルも大詰め。次巻で決着つくんだよね、たしか。
謎の種族サイノスと大群との関係もあっさりと明らかになりましたし(っていうか、今まで気をもたせ過ぎで、読んでる方は疲れちゃったんですけど)。
また、前半ではまさかあの歴史上の人物がそういう役で登場してくるとは! フォルツさんやりますね〜。まあ言われてみれば大いにありそうな話ではあるんですが。

<収録作品と作者>「氷界から来た男」(ウィリアム・フォルツ)、「サイノスの叛乱」(H・G・エーヴェルス)

オススメ度:☆☆☆

2002.10.12


ファウンデーションへの序曲(上・下) (SF)
(アイザック・アシモフ / ハヤカワ文庫SF 1997)

アシモフの代表作『ファウンデーション・シリーズ』の第6作。
ていうか、書かれたのは6番目ですが、作中の時間軸で言うといちばん古い時代のお話です。
なんと、ファウンデーション創立の立役者である心理歴史学者ハリ・セルダンの青年時代のお話。
銀河帝国の首都惑星トランターにやってきたハリ・セルダンは、心理歴史学を応用することで人類の未来を予言できる可能性について学会発表します。それを知った皇帝はセルダンを召喚し、自分の帝国支配のために心理歴史学を使うようセルダンに要請します。しかし、セルダンはそれを断り、心理歴史学が他の権力者にも利用されることを恐れて、知り合った協力者ヒューミンの勧めでトランターの大学に身を隠します。しかし敵の手はそこにも伸び、セルダンは女性歴史学者ドースとともに、逃避行を始めます・・・
今回、舞台は惑星トランターだけで、超光速宇宙旅行もなければエイリアンも出てこない。いろいろな人と出会って謎を解きながらただひたすら逃げつづけるという内容で、間違いなくファウンデーション・シリーズの中でいちばん地味なお話です。でも、ひとりひとりのキャラが生き生きしてるし、ミステリ好きのアシモフらしいラストでの“意外な犯人”のどんでん返しもあるし、シリーズ中で、物語としてはいちばん面白い出来に仕上がっています。
『ファウンデーション・シリーズ』を未読の方は、この巻から取りかかるのも良いかも。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.10.16


合衆国崩壊(1〜4) (ポリティカル・フィクション)
(トム・クランシー / 新潮文庫 1997、1998)

クランシー渾身の大作。
いや〜、とにかく長い。4冊合わせて2275ページです。それでも5日半で読めちゃった。それだけ面白いということです。
前作
「日米開戦」のラストで起きた衝撃的な出来事のために、思いがけず合衆国大統領になってしまった主人公ジャック・ライアン。閣僚も議員もほとんどすべてを失った合衆国の再建という重責がライアンの肩にかかってきます。
しかし、アメリカが弱体化したことを千載一遇のチャンスと見る諸外国、既得権益を守ろうとする国内の政治家・官僚、そしてマスコミまでがライアンを攻撃してきます。前半の2巻は、読めば読むほどフラストレーションがたまります。クランシーはサディストか!?っていうほど、ライアンは苛められ、追い詰められ、罠にかけられます。
生物兵器による攻撃、誘拐、暗殺計画と、危機に陥っていく合衆国とライアン。
しかし、後半に至って、反撃に転じると、まさに怒涛の燃える展開。前半に感じていたフラストレーションの高さがそのままカタルシスとなって、感動・感激の嵐(でもこの感情の高ぶりはちょっとやばい気もする)。
ただ、考えてみると、これが楽しめるのはフィクションだからなんですよね。
でも、9・11をはじめ、この作品のストーリーをなぞるような出来事が現実に起きているのを見て、戦慄を禁じ得ません。
テロや戦争は、小説の中だけにとどめておいてほしいものですが・・・。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.10.22


ノーストリリア (SF)
(コードウェイナー・スミス / ハヤカワ文庫SF 1997)

一種独特の雰囲気と宇宙観を持つ“人類補完機構”シリーズ唯一の長編。
「ノーストリリア」というのは、主人公の少年ロッドの故郷の惑星「オールド・ノース・オーストラリア」の略称。ノーストリリアは人類の植民惑星のひとつで、銀河で唯一の不老長寿薬を産出する、保守的で牧歌的な惑星です。
ロッドはノーストリリアの地主の跡取りですが、恨みを抱く相手に殺されかけ、逃れるために策を弄するうちに、なんと惑星地球を買い取ってしまいます。
そして、地球に向かった彼が経験する恋と冒険と成長と自己発見の旅。
以前に読んだ、同じ“人類補完機構”シリーズの短編集
「鼠と竜のゲーム」で言及されていたテーマがいろいろと再登場して、ああそうだったのかと思わず納得。このシリーズは、全作品を読み終わって初めてその真価がわかるのかも知れませんね。(あと2冊未読がある)

オススメ度:☆☆☆☆

2002.10.24


時間旅行者は緑の海に漂う (SF)
(パトリック・オリアリー / ハヤカワ文庫SF 1997)

これは、説明するのが難しいお話です。
主人公ジョンは、心理療法士。クライアントの精神分析を行いカウンセリングするのが仕事です。
ある日、ローラという女性が彼のもとを訪れます。彼女は、エイリアンから生まれた娘で、1年以内に自分の言う事を正気の人間に信じてもらわなければならない、と主張します。
その時から、夢と現実、過去と未来が交錯する妖しげな世界での冒険に、ジョンは否応なく巻き込まれていきます・・・。
ただねえ、何と言いますか、自分とは肌が合わないんですね、このお話。
う〜ん、なんとなくすっきりしないというか。深読みすればいくらでも深読みできると思うんですが、そこまでする気が起きないというか・・・。

オススメ度:☆☆

2002.10.26


竜王伝説3 ―金の瞳の狼― (ファンタジー)
(ロバート・ジョーダン / ハヤカワ文庫FT 1998)

ファンタジー・シリーズ『竜王伝説』の第3巻。
前巻のラストで、川岸で魔物の群れに襲われ、分断されてしまった旅の一行。
3人(若者2人と吟遊詩人)は通りかかった船に乗り込んで河を下り、ふたり(若者と村娘)は対岸に渡って森をさまよい、3人(異能者と護衛士と賢女・・・このパーティだけはしっかりしてる)は逃げ散った他のメンバーを探しながら後を追う・・・。
そして、森に逃げこんだペリンとエグウェーンは、狼を友とする謎の男と出会い、一緒に旅をすることとなります。その行く手に敵の魔手が・・・。
船で逃げた3人組も行き着いた町で厄介事に巻き込まれ・・・と、三つのパーティの苦難の旅が描かれます。
今回は、つなぎの巻という感じですね。

オススメ度:☆☆☆

2002.10.27


銀河英雄伝説8 乱離篇 (SF)
(田中 芳樹 / 徳間文庫 1998)

『銀英伝』もついに第8巻。物語は大きく動きます。
というか、こうなることは前から暗示されてたし、情報として知ってもいたんですけど・・・。
やっぱり早過ぎるよ〜(号泣)
今はとにかく黙祷を・・・。
これからどうなるんだろう。

オススメ度:☆☆☆

2002.10.28


奇現象ファイル (オカルト)
(F・W・ホリデイ / ボーダーランド文庫 1997)

これも他のボーダーランド文庫の例に漏れず、70年代に大陸書房から出ていたオカルト本の復刻版です。原題は“The Dragon and the Disc”・・・つまり『竜と円盤』ですな。
ネス湖のネッシーに代表される怪獣目撃談とUFOは同じ現象を別の側面から眺めたものである、その正体は異次元からの侵入者だ、というのが本書の主張。
でも論旨はむちゃくちゃだし自分に都合のいいデータしか提示してないし、説得力ゼロです。こういう本の著者にありがちな、懐疑派の科学者をボロクソにけなす(ほとんど中傷)のも、印象悪い。まあ頭っから超常現象を否定する人も好かんけど。
解説してるオカルト・ライターの並木伸一郎さんがさらに輪をかけて荒唐無稽なこと書いてるし。これじゃ怪説だよ(笑)。

オススメ度:☆

2002.10.29


感染都市 (ミステリ)
(森村 誠一 / 幻冬舎文庫 1997)

副題は『病原体ミステリー傑作選』。これに惹かれて買いました。
森村誠一さんの作品の中から、病原体や感染症がネタとして使われているものを集めた短編集です。もともと、社会派で冷徹で人間性の暗黒面をむき出しにしてしまう森村さんの作風には、肌が合わなくて、あまり読んでいなかったのですが、こういうネタとなれば、もう読むしか!
でも、読んでみてちょっと失望しました。病原体が事件のメインになってるわけではなかったのです(そういう作品も数作ありましたが)。たまたま犯人の犯行が暴かれる小道具として、病気ネタが使われているだけで。
ネタになってる病気は、水痘・淋病・梅毒・オウム病・アレルギー・日本脳炎・ワイル病。説明を読まないでも全部どんな病気かわかってしまう自分って・・・(汗)

<収録作品>「残酷な視界」、「姦の毒」、「殺意を抽く凶虫」、「致死鳥」、「病蝕会社」、「花刑」、「感染した犯行」

オススメ度:☆☆

2002.10.30


覇王の道 (ヒロイック・ファンタジー)
(栗本 薫 / ハヤカワ文庫JA 1998)

『グイン・サーガ』の第59巻です。
前巻で、中原の未来を左右する合意に達したナリスとイシュトヴァーン。
そこからの帰途、イシュトヴァーンは<闇の司祭>こと黒魔道師のグラチウスと邂逅します。
危ういところで彼を救ったのはパロの魔道師宰相ヴァレリウス(実は『グイン・サーガ』登場キャラの中でいちばん好きなのはヴァレリウスだったりします)。
『外伝』のストーリーとも絡み合って、いよいよ中原をねらう陰謀の全貌が明らかになってきましたね。それと、あの男のはかりごともイシュトヴァーンが知るところとなりましたね。
これからの怒涛の展開が期待大ですね。

オススメ度:☆☆☆☆

2002.10.31


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