閉じ箱 (ホラー)
(竹本 健治 / 角川ホラー文庫 1997)
初めて読んだ竹本 健治さんの作品は、デビュー長編「匣の中の失楽」でした(もう十何年も昔のこと)。何重もの入れ子構造を持った複雑玄妙なプロットに翻弄され、“騙される快感”に酔いしれたものでした。
竹本さん自身が寡作だということもあり、その後はあまり読んでいなかったのですが、今回、初めてまとめられた短編集ということで、久しぶりに彼の作品世界に触れることができました。
ホラー文庫からの発刊ではありますが、決してホラーだけではありません。ミステリあり、幻想風味ありと、いろいろな味の作品が読めます。でも、ほとんどの場合、読者は結末で悪夢のような世界に叩きこまれます。かといって、そこで感じるのは不快感ではなく、“陰陰滅滅たる快感”とでもいうべきものです。
特に、後半に収録された『佐伯千尋』シリーズは必読。
<収録作品>「氷雨降る林には」、「陥穽」、「けむりは血の色」、「美樹、自らを捜したまえ」、「緑の誘ない」、「夜は訪れぬうちに闇」、「月の下の鏡のような犯罪」、「閉じ箱」、「恐怖」、「七色の犯罪のための絵本」、「赤い塔の上で」、「黒の集会」、「銀の風が吹きぬけるとき」、「白の凝視」、「ラピスラズリ」、「緑の沼の底には」、「紫は冬の先ぶれ」、「実験」、「闇に用いる力学」、「跫音」、「仮面たち、踊れ」
オススメ度:☆☆☆
2002.9.25
ラヴ・フリーク (ホラー:アンソロジー)
(井上 雅彦:編 / 廣済堂文庫 1998)
井上 雅彦さん責任編集による、全編書き下ろし、日本人作家によるホラー・アンソロジー『異形コレクション』の第1巻。このシリーズ、今も出版社を変えて出続けています。
第1巻の今回のジャンルは、タイトルの通り“恋愛ホラー”です。ファンタジー風味のものからモンスターネタまで、芸達者19人の作品は、どれも粒揃いです。
「赤とグリーンの夜」(井上 雅彦)、「猫女」(竹河 聖)、「REMISS」(久美 沙織)、「貢ぎもの」(菊地 秀行)あたりが好き。
日本人ホラーって、まだあまり読んでいないので、このシリーズはどんどん読んでいきたいですね。
<収録作品と作者>「テレパス」(中井 紀夫)、「女切り」(加門 七海)、「逃げ水姫」(早見 裕司)、「地下のマドンナ」(朝松 健)、「ニューヨークの休日」(森 真沙子)、「怪魚が行く」(田中 文雄)、「老年」(倉阪 鬼一郎)、「赤とグリーンの夜」(井上 雅彦)、「スマイリング・ワイン」(奥田 哲也)、「猫女」(竹河 聖)、「アドレス不明」(友成 純一)、「REMISS」(久美 沙織)、「加害妄想」(高井 信)、「太陽に恋する布団たち」(岡崎 弘明)、「東京悲恋奇譚」(飯野 文彦)、「人殺しでもかまわない」(矢崎 存美)、「約束」(津原 泰水)、「砂嵐」(皆川 博子)、「貢ぎもの」(菊地 秀行)
オススメ度:☆☆☆
2002.10.1